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金木犀と秋について

秋がすきだ。
「四季の中で一番すきなのは?」と聞かれると、わたしは迷うことなくいつも「秋」と答える。

夏でもなく、冬でもない。
半袖だと少し肌寒いのだけれど、長袖だとどこか重苦しく感じる。
意味もなく夜更かしをしたくなる季節。ケーキ屋さんやデパ地下、スーパーのお惣菜コーナーが一斉に胃袋に呼びかけてきて「ひょっとして一年のうちに今ぐらいは食べ過ぎても良いんじゃないの?だって美味しいものばかりだし」なんて思わせてくる季節。
危険な誘惑が盛りだくさん、そんな秋。

先日散歩をしていると金木犀を見つけた。
金木犀はいつも、視覚より嗅覚が先にその存在を認知する。ほわわっと香るなんとも言えない優しい甘さ。
あまりに金木犀の香りがすきなので、何度か金木犀の香りを模した香水を買ったのだけれど、どうも違う。
あの濃厚で五感を揺さぶる、それでいて自然な香りは人工的には作れないのだろう。

ここまで書いていったん下書きに入れていた。
書いたのは一週間ほど前。

昨日、散歩に出たら金木犀は全て散っていた。あまりに早くないですか?
まるでそこには何もなかったかのように、特徴のない緑の葉っぱが茂っているだけ。

秋の香り、金木犀。
もっと胸いっぱいに吸い込んでおけばよかった。
秋はいつも儚いのだ。

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