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005.愚者は経験に。

 作文のリハビリと称してアカウントを作ったのが4か月前、その間書き上げた記事は4本。さすがに履歴が寂しすぎるので来月からペースアップを図りたいところ。
そんなわけで趣味の投資の話。

 株式投資を始めて間もなく丸10年になる。
初めて買った株は当時話題だったアメリカの3Dプリンターの会社だった。
10年前はちょうど新聞やテレビで投資だのインデックスだの言われ始める直前で、周囲にも株をやっている人間はいなかった。
(言わなかっただけかも知れないが、公言できるほど良い目でも見られなかった)

誰かに教わることが出来ない環境で頼りにしたのはネットの若いブロガーの記事だったので、彼らの推しまくるアメリカ株に自然と意識が向いた。
株を買い始めた理由は単純で銀行預金に夢も未来も感じられなかったからだ。定期預金なら0.2%の利息、アメリカ株は歴史的に年率7%成長していると繰り返し力説されて買ってみるかと思うに至った。

 結果から言うとこの10年間の成績は「トントン」。
ギリギリ赤字にはなっていないが、為替が円安になっていなければマイナスも普通にありえる状況だった。

ただしこれは自分の戦略が状況に合っていなかっただけで、正しいルート
(安全なルート)を選べていれば10年で+50%は確実に取れている。あくまでこの記事は悪い例である。
自慢ではないが自分は投資初心者がハマりがちな失敗は大体経験している。
以下にその経験を語る。

1:バブルに乗っかる
 株式デビューは最初に喜びを、最後には苦い思い出が残った。
先述した3Dプリンター業界は当時バブル絶頂期。製造業のあり方を根底から変える新技術として持て囃されていた時期だった。株価は天井知らずに上がり続け、この上昇は永遠に続くかのように感じられた。典型的なバブル状態だった。
このバスに乗り遅れまいと購入した私の口座金額は2か月で倍ほどに増え、大変調子に乗った。危険な兆候である。
調子に乗って追加投入する資金を持っていなかったのは不幸中の幸いだった。持っていたら大火傷していたところだろう。
3か月後にバブルは弾け、株を手放した結果私は5万円のマイナスを出した。

この時得た教訓はバブルの匂いに敏感になったこと、そしてマイナスを出して取り返す可能性が低い場合に損切りできる決断力だった。5万円の授業料なら安いものだったと今では思っている。

2:我慢ができず大魚を逃す
 先述のバブル崩壊で新興企業から距離をとった私が次に目を付けたのは今をときめくアップル社。10年前ももちろん大人気だったアップルの株は購入当時で1株7万円。安い買い物ではなかったが当時すでに桁違いの金額を稼ぎ出していたアップルは安心して買うことが出来た。
あとは寝ているだけでアップルは利益を上げ続け、私は左うちわの生活を送る、はずだったのだが、待てど暮らせど思ったように株価が上がってこない。
別に損失が出ているわけでもないのだが、日いちにちと株価が上がる経験をしてしまったせいだろう、上がるまでひたすら待つということが当時の自分には出来なかった。
待っている間に次々と将来有望な企業の情報が入ってくるのがアメリカ市場のすごいところで、手元の資金はないが買いたい株は増えていく、そして上がらないアップル・・・。
結局それを待つことが出来なかった私はアップルを手放し他の会社を買うことになる。
結果としてこの決断は数10%の利益を上げ、収支の黒字化を達成することが出来た。その頃手放したアップルの株価は空へ向かって上昇し、気づいた時には売値の7倍ほどの値段になっていた。
待つことの重要性を優しく教えてくれたのはアップルだった。

3:見かけの数字に騙されて落ちるナイフを拾う
 配当金による不労所得は全人類の夢である。
私も当然その夢を追って高配当株に手を出すことになる。
購入したのはとある通信会社だった。年間の配当金は9%を超える好条件に見えた。数字の上では。
高額の配当金を出す”信用のある会社”は当然みんなが欲しがるので株価は上がり、その結果配当利率は下がるのが普通である。そのラインは社会情勢や投資家のリスク意識によって変動するがある程度の基準は存在する。
基準からすると9%は明らかに危険域だったのだが、会社の経営陣としては株価の下落は一時的なものですぐに回復すると強弁しており、また通信会社というインフラ寄りの安定した業態だったことも自分の危機感を鈍らせた。

「人は自分の信じたい情報だけを信じる」という認知バイアスがあるというが当時の自分は正にそれだった。落ち始めたナイフを力強く握ってしまったのである。

株価が奈落へ落ちかける直前にようやく踏ん切りがつき、全てを手放した時には80%のマイナスとなっていた。10年経った今でもこれが過去最高の損切りである。
しかしこれは英断だったともいえる。その後その会社は倒産、株は紙くずになってしまった。その前に現金化できた自分は勝ち組だったと言えなくもない。


 こうして振り返ると本当に初心者がやりがちな失敗は大体やらかしている。この上でトータル収支がトントンなら十分な成果なのではないかと思えてくる。まさに愚者は経験に学ぶを地でいく10年間だったと思う。
 

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