10*原っぱで
バルアトルケものがたりⅠ*10
森のはずれからしばらく歩くと、原っぱに着きました。
生えている木は、森の木よりも背が低い木が多く、枝もまばらで太陽がたくさん届いています。
とても明るくて、今まで見たことがない花がたくさん咲いています。
とてもいい匂いのする花をみつけました。くんくん、と鼻を寄せ、匂いをたどりながら歩いていきました。花が途切れ、顔を上げると、目の前に、小さな家が建っていたのです。
誰が住んでいるんだろう。声をかけてみようかな。
シロは注意深く家の周りを歩いてみました。ドアのわきにはバケツが置いてあり、スコップがささっています。バケツの中から、さっき見つけた花のいい匂いがしてきます。
ああ、本当にいい匂い。
シロは鼻をバケツによせました。鼻がスコップに触れ、床に落ちて音をたてました。
ガタン ゴトッ コン コン コン・・・
思いがけず大きな音がしたので、びっくりしたシロは息をのみました。少しの間、体がこわばってしまい、動くことができませんでした。
しばらく様子をうかがって、何も物音がしなかったので安心し、ふっと気がゆるんで、鼻がスコップにぶつかってしまいました。
コン コン・・・
ああ、もう。なんてドジなんだ。どうか、怖いことが起こりませんように。
シロは泣きそうな気分で思いました。
そうして、背を向けようとした瞬間、パタパタッと小さな足音が聞え、声がしたのです。
「誰かいるの?」
その声を聞いた瞬間、シロにはわかりました。
この声の持ち主が、僕に名前をくれるんだ。
思わず、足を踏みしめました。
コトッ
思い切って言いました。
「おはよう ぼくはシロ」
ドアが開き、そこには、大きなTシャツを着て、くつしたをはいた
ちいさなおとこのこが立っていたのです。
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