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【書物シリーズ】

趣味の書き物。

*一番星

バンさんは、今年で30になる。
地元の子はほとんど結婚して子供が産まれている。幸い、都会に出て仕事をしていると、同世代で独身の子がいるから少し安心できる。同じ境遇の人がいるだけで、気持ちの落ち着きが違う。
でも本当は、バンさんも結婚がしたい。
家庭がほしいのだ。
そもそも、本来26歳で結婚すると思っていた。
しかし、自分が思っていたよりも26年間はあっという間で、恋愛はもっと難しかった。
歳下の子の結婚の報告や、有名人の結婚の報告を聞いては、おめでとうの気持ち8割、悲しいの2割。喜びきれない自分がいるのだ。

結婚だけが全てじゃない。
1人の時間があるのは幸せなことだよ。

言われることは正しい。その通りだ。
それはバンさんもそう思う。
でも、やはり子供と公園で遊んだり
家族で団欒を過ごせたら、と思ってしまう。

婚活アプリにも登録するけれど、なかなかうまくいかない。そんな時に親からはやく結婚しなさいと電話があると、もやもやしてしまう。
30になったら、恋して結婚できると思わない方がいいよ。遅くなるから。というアドバイスをいただいたこともあるのだが、条件だけで結婚生活が成り立つとも思えない。

仕事中は、そんな諸々を考えなくて済むからいい。忙しい日は逆に有り難い。

だが、仕事帰りは冬の凍てついた空気が頬や耳に刺さるようだ。特に冬はこの環境もあってか、なんとも言えない寂しさが漂う。
吐く息の白さと、オレンジと濃紺のグラデーションの空。
ふと見上げると、小さく輝く一番星が見えた。

あいつもひとりぼっち。
私みたいだ。
でも、あいつは私と違って、綺麗に輝いてるんだな。自信満々に光ってるもんな。

。。。そうか。
あいつが輝いてるから、私はあいつを見つけられたのか。

私は、人並みに仕事して、結婚もできずただ毎日を生きる自分のこと、どう思ってた?
勝手に卑下して、自信を無くしてなかったか。。?
結婚できない自分がダメな奴に見えて。
悔しくて悲しくて、悩んでたけど…

そうじゃないかもしれない。
何かがないと、だめ。
こうじゃない自分には価値がない。
そう決めつけてたから、こんなに私は暗かったのだ。

ぼんやりと、頭の中に問いかける。

本当は、私はどうしたい?

ひとつずつ、確認していくように。
語りかけるように。

あの星みたいに、輝いてた方がよくない?
ため息ばかりで暮らすよりも
笑って暮らしていたくない?

あぁ、私を苦しめてたのは周りの環境や変化、言葉だと思ってたけど、、、もしかしたら、
実は自分を一番苦しめてたのは自分だったのかもしれない。

なんだよ。。泣笑

しばらくバンさんは、一番星をみながら
ひとりぼっちで涙を流していた。

その目が少しキラっと見えたのは、涙のせいだけじゃないような気がした。


以上

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