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【書物シリーズ】

小説?みたいな書物の趣味

*変わった

2009年。
並の大学でバイトしながら就活をする普通の大学生。毎日ジム行って、大学行って、とりあえず周りの流れに乗って就活をはじめた。
でも、やりたいことがよくわからない。
むしろ就職って…安定したところがやっぱりいいのかな。大手やかたいところに内定もらった子がゼミの先生や皆んなに崇められる日々。
勝手に比較してしまう自分。
中身がない自分が苦し過ぎて、目を逸らしたくて。見た目を整えると周りが評価してくれるから、とりあえずオシャレしてダイエットして、評価される自分を保って自己肯定感を上げる。

どうにかしたいと思いながら
自分より周りを見てしまう。
そして、考えるのが苦しくなって
忙しくバイトを入れてしまう。
動いていて、目を逸らしたら楽だから。
でもその繰り返しが本当は苦しさの沼にどんどん向かわせる。

そんな時に、昔の恋人と会った。
郊外の小さな駅で、その駅の近くのご飯屋さんで。
私はその人のことが大好きで、別れてしまった後にも大好きだったと改めて気が付いて、今は片思いの相手だったから、会えた事がとても嬉しかった。まさかの夢のような出来事。

彼の話は、自分とは全く真逆で自分の軸があって、魅力的だった。
「俺はもう見つけちゃったから」と照れ臭く、でも確かな確信を持って微笑んで言う彼が心に刻まれた。
大学をやめて、やりたい道にまっすぐで、継続して、ついにデビューを控える彼。
周りの目や世間体を気にして、自分がどうしたいのか、何がしたいのか見つけられずただ流される自分。
途中から、インタビュアーとアーティストかと思うような構成で会話が進む。
彼の語ることが全て面白くて、心を弾ませた。
バンドの話、生き方の話、考え方の話、口調や間合いと気遣い、距離の置き方…全てにとって彼は私が知ってる男の子ではなく、立派な男性だった。1人の人間として、自分の足で立っていた。
自分の考え方をしっかり持っていた。
イエスはイエス。ノーはノー。
やりたい、こーしたい、嫌なのは嫌、なら、そーすればいいじゃん。と言い放った。
彼を見ながら、私は少しの驚きと尊敬と、恥ずかしさの気持ちを抱いた。たしかに、その通りだ。私はいつも周りに流されてて、自分がなかったし、見ようとせずに逃げていた。いつも口だけで、これだけは!という一つの信念もない。
彼は自分の信念を見つけ、そこへの心構えもしっかりと持ち、自信に満ち溢れていた。
自分が自分に、責任を持って行動する。という心構え。

彼の存在は、私にも、何かやってみようという気持ちにさせてくれた。
会えて良かった。会って良かった。

さよならするときは、恋愛のドキドキなのか、自分の心を動かしてくれたことへのドキドキなのかよく分からなかった。
忙しいのに、会ってくれた彼に感謝の気持ちでいっぱいだ。
次に会う時は、彼に恥ずかしくない、むしろ「その考え方面白いね」って、興味を持ってもらえる人でありたいと思った。

彼は変わった。
私も変わりたい。いや、今この瞬間に
たった1ミリだけど、心の中の何かが変化したような気もした。

以上

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