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ガストやバーミヤンのクレームが23%も減った理由(◯◯の解消がDXの鍵)

こんにちは。若林です。
突然ですが、お店に行って、あまりにも行列が長いために買うのを諦めた経験はありませんか?

私はファミレスや100均は「スピード」も価値の一部だと考えているので、レジ前に行列ができていると、その時点で買うのをやめてしまいます。

さて、待ち時間が長いことで、お客様を逃してしまった場合、「本来得られるはずだった売上」は財務諸表上にどのように現れるでしょうか・・?

答えは、もちろん「現れない」です。

この「現れない売上(=機会損失した売上)」を「リアルな売上」に変えることが大きな経営上のインパクトをもたらします。

例えば、ファストファッションのお店で、欲しかった人気の服が売り切れ(欠品)になっている場合を考えてみましょう。もし3%の欠品が生じているなら、うまく在庫をマネジメントして欠品を防ぐことで、売り上げが3%アップすると思いがちです。ところが実際には15%以上アップすることもよくあります。なぜなら、欠品するほど人気の商品は、そこにあるだけで、飛ぶように売れていくからです。つまり欠品を解消するだけで、大幅な売上アップが見込めるのです。


ボトルネックをDXするのがキー

ここで今月の面白い記事をご紹介します。

この記事によると、ガストやバーミヤンを展開する「すかいらーく」では、利用客10万人当たりのクレーム件数(2023年)が、22年比で23%減少したとのこと。

詳細を見てみると、DXによるサービス向上がその理由のようです。(23年度通期決算説明資料

 滞留解消により、レジや下げテーブルの対応時間をスピードアップ(出所:23年度通期決算説明資料 P17)

ただここで注意したいのは「何でもかんでもDXすれば、良い結果を生む」のではない点。もっと解像度をもっと上げて観察する必要があります。

DXというのはその名の通り
D=デジタル
X=トランスフォーメーション
をあわせた造語で、デジタル化してもトランスフォーメーション(儲け方の構造変革、顧客体験の変化)しなければ、それはただの「IT化」です。

ここでDXを実現するための重要な問いは「何をデジタル化するか?」です。

流れを把握する

すべての業務には「流れ」が存在します。例えばファミレスのお客さんの流れを大雑把に分解すると、

来店→着席→オーダー→食事→会計→退店

となります。ここで重要なのが、最も流れが悪い場所=滞留を探すことです。たとえば、なかなか定員さんがオーダーを取りに来ない(下記)

来店→着席案内→「★オーダー」→食事→会計→退店

が最も流れが悪い場所だとします。それなのに、着席案内をデジタル化して、どんどん改善しても、結局、オーダーのところで詰まります。むしろ、待たされるお客さんが増えて、「なんで注文を取りに来ないんだ!」というクレームが増加し、かえって店の評判が悪くなるかも知れません。

私なら次回からその店に行くのは避けてしまいます。(つまり、お店は本来得られたはずの売上を失います。)

世界で1000万人が読んだベストセラー『ザ・ゴール』で発表されたTOC(制約理論)によれば、流れの最も悪い場所(=ボトルネック)を改善することが、全体の流れを良くする「全体最適」につながります。逆にいえば、もともと流れの良い場所を改善しても、まったく効果に繋がりません。

お店のオペレーションにおける滞留=ボトルネックは、一般に「お客さんのクレームが最も多いところ」と言えるでしょう。とにかくお客さんが「待たされる」ことにストレスを感じるからです。

すかいらーくの成功要因のひとつは、まさに「ボトルネック」であった食事後の「レジ待ち」にデジタルを導入して、平均対応時間を80秒から9秒に縮めたことです。

強みを考慮してボトルネックをデジタル化する

ファミレスにおいて「スピード」は価値です。もちろん、接客態度が悪いのは論外ですが、必ずしも接客のホスピタリティを売りにしているわけではありません。であれば、その価値である「スピード」を加速するための、デジタル化は、まさに同社の競争力アップに貢献するうまいやり方です。

逆に高級レストランやホテルで、スタッフのホスピタリティ自体が提供価値の場合は、安易にそこをデジタル化することで、杓子定規な対応しかできなくなり、魅力を落とすことになります。

多くのDX取り組み事例において、なかなか効果が出ない理由は2つあります。

ひとつは、とにかくデジタル化すること自体が目的になってしまい、手当たり次第にボトルネック以外の改善に取り組んでしまうことです。残念ながら、ボトルネック以外を改善しても、実際には最終成果の改善には繋がらないのです。

もう一つは、アナログ時代に作られた既存の「ルール」を変えずに、とにかく、できそうなところからデジタルを導入してしまうこと。これをやると、霜降り牛のごとく、アナログとデジタルが入り乱れ、結局成果に繋がりません。たまたま改善したところがボトルネックに当たることもありますが、改善のためのリソースが分散するので、かけた工数の割には費用対効果が思ったように得られないのはよくある風景です。

これまでの延長線上にない「トランスフォーメーション」を実現するためには、まず明確なゴールを設定することです。そうすれば、既存のどんな「ルール」を変えなければならないかが明確になります。その上で、デジタルを導入するのが正しい順番です。デジタルはあくまで手段であり、トランスフォーメーションが目的なのです。

といっても、ついつい

「デジタル化してビッグデータを分析したら、今まで見えなかった”何か”が改善できるんじゃないか?」

という淡い期待で、ツールの導入が先行してしまうのが人の性なんですが。(実はかつての私のことなんですが・・)

典型的なDX失敗を防ぐヒントは、ぜひ下記の「金の知恵」をご覧ください。

今度お店を訪問したときは、オペレーションのどの部分がボトルネックなのか観察してみてくださいね。きっとビジネス力アップに役立つはず。

執筆者:若林計志 (Kazushi Wakabayashi) 
予備校のカリスマ講師のオンライン授業のあまりの面白さに大きなショックを受けて以来、下手な対面授業より、一流講師の動画授業の方が絶対に価値が高いことを確信。世の中に蔓延する「つまらない授業」「眠たい勉強」の撲滅を目指し、世の中のあらゆる教育・学習をデジタルコンテンツ化しています。ゴールドラットプレミアムチャンネルを担当。

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