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第六十八景 マッチングアプリ大戦記 episode11-2

雰囲気のある店内に足を踏み入れ、案内されたのは、半個室だった。周りが見えない方が落ち着いて話しやすくていい。僕はトマト系のパスタで、彼女はズッキーニが入ったパスタを頼んだ。

サラダ、飲み物とデザートの付く至れり尽くせりのセットメニューだった。知らない人と会うのが久しぶりであったため、どこかぎこちなく無難な話をした。ほどなくサラダが運ばれてきて助かったと思った。

何かを食べながらだと、ちょっとテンションが上がり、思ってもないようなことが口から出てくる。軽くいじっていると、アツアツのパスタが来た。パンも付いていた。

冷房から出た冷気で、余計に湯気が立って美味しそうに見えた。もちろんパスタ自体も美味しかった。パスタを食べ終わるまで、適当に話をした。アポの時は、めちゃくちゃのろのろ食べるように心がけている。

僕の方が遅くなることもあり、急いで食べることもあった。この時は同時だった。残ったソースをパンに付けて食べていて気になったのは、ぼろぼろと服の上にパンのカスを落とすことだった。それも気づいていない。

しかも胸のふくらみの上に落としている。その近くにはなぜか、お水を飲んだ時に出来たのであろうシミもあった。そればかりが気になって、話どころではなくなった。

なんとか意識を逸らしていたら、最後のデザートがきた。ここの店員はナイスタイミングで料理を持って来てくれる。二度も助けられた。抹茶のパンナコッタのようなババロアのようなものにあんこがかかったものが目の前にあった。

おいしい。あっという間に平らげ会計を済ませた。沼垂商店街の方へ、猫を探しに行った。歩幅が小さくちょこちょこしているのが可愛かった。猫には会えず、彼女が車を停めた駐車場まで、歩いた。

合計で数キロ歩いたが、そのことについては何も言われず、にこにこしていた。歩道橋を登って、降りると駐車場の近くに来ていた。なた会おうねみたいなことを言われ、何度か振り返って、人の中に消えていった。見えなくなるまで見送った。

一杯引っかけようと思って入った居酒屋でもつ煮を食べていると、彼女から写真が送られてきた。鉄板の上で薄く伸ばしたアイスをくるくる丸めた食べ物だった。名前は忘れてしまったが、一緒に食べに行けたらよかったのにと思いつつ、ビールで流し込んだ。

そのあとは、コロナ自粛明けでタガが外れたように、飲んだり食べたりを繰り返し、翌日にはお腹がもたれていた。

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