見出し画像

第三十二景 マッチングアプリ大戦記 episode2-1

2回目のアポはロティサリーチキンの有名なダイニングバーで飲むことになった。前回のお店の系列店だったので、とても雰囲気がよさそうだった。

僕は再度、遠征アポだったので泊まることにした。今回は都市部だったので寝る場所だけでも確保できればと思い、ホテルを取った。

約束は夜だったが、日中する事も無かったので、行ってみたかったイタリアンで昼食をとることにした。海老のトマトクリームパスタを食べた。ソースが濃厚でとてもおいしかったし、ひとりでならまた来たいと思った。ひとりで来たい店が多くて困る。おいしいものは、話をせずに無心で平らげたい。

それでもまだ夜まで時間があるので近くにある図書館で時間を潰すことにした。3時間で読めそうな本を漁り、沼田まほかるの「ユリゴコロ」を読むことにした。サイコキラーが出てくる話なのだが、展開が読めず、最後まで読ませる構成になっていて、一気読みしてしまった。

あたりが暗くなったので、待ち合わせの駅に向かった。そこでもそわそわしながら、街灯の明かりを頼りに本を読んだ。

友達の家に遊びに行っていたらしい彼女がやって来た。そこからは車で店まで向かうことになっていたので、車に乗り込んだ。

自分の車の助手席には、元嫁と母くらいしか乗せたことがなかったので、若干の背徳感があった。車中では、西尾維新が好きなことと、伊坂幸太郎なら「重力ピエロ」が好きということを知った。

会話か運転かどちらかのことに集中したい僕は、適当に相槌を打った。そうしていると、お店に着いた。

とりあえずお互いビールを頼んだ。ビールを頼む女性は珍しいなあと思いながら、半分くらい飲み干す。続々と料理が運ばれてくる。

店をよく見る癖があるので、向かいの席の男性の両耳のピアスと、カレーを頼んでいたひとり飲みのおじさんのことが気になった。

会話の中で、コナンが好きで公開すれば映画館で見るという話をされたけど、コナンは語れるほど知らない。

僕はひたすらビールを飲み、彼女はハイボールやらレモンサワーなど頼むたびに違うお酒を飲んでいた。少し気になったのは、2センチくらい飲み残すことだ。

前にもどこがで見たことあるなあと思っていたら、B型の友人の癖だった。彼女もB型で、B型の共通項なのだろうか?とどうでもいい考えが頭をよぎる。出来れば最後まで飲んでほしい。

彼女が突然、歴代の恋人と長続きしないという話を打ち明けてきた。僕は真逆の人生を送っていたため、大したアドバイスはできなかった。付き合うことに思い切りがいいのか、こだわりがないのか、形にとらわれないのか、真偽は分からなかったが、付き合うことになると気持ちが冷めるらしかった。

時間がきたので、店を出て酔い醒ましに善光寺に向かった。夜の善光寺は暗く、建物の影がにゅっと現れた。そういう類の人間なら、手をつないだり、もっと迫るようなシーンだったのかもしれないが、僕にはそんな勇気はない。

そんなことを考えながら、酔った心地よさに包まれ、ただふわふわと歩くだけだった。

彼女を送るために駅に足を向ける。改札口の明かりが見える。

改札口は夜の善光寺とは対照的に爛々と輝いていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?