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湖へ下りる散策路

トイレのドアの前に貼られた案内図を見る。登山道が2本、ここと、もう少し車で行った先と、全部で2カ所の入り口。ふもとの湖のまわりにも散策路が縦横にある。この駐車場から湖まで約2キロの散策路、名前は「アカエゾマツ純林コース」。今日はこれを歩こうと決めた。

駐車場のはずれから散策路が始まっている。歩きはじめる。背中のリュックサックにぶら下げた鈴がリンリンと響く。

下り斜面が続く。湖に向かっているから下りなのだろう。今日は晴れて暑い日だが、散策路の名前通りの鬱蒼としたアカエゾマツの林はヒンヤリと涼しい。シダに覆われて散策路が狭くなっている箇所や、「危険木注意」と札が貼られた枯れた木の横を通ったりしながら歩く。

いきなり視界が開ける。湖に到着した。蒼い湖面が透明に広がっている。先客がいた。家族連れのようだった。家族のじゃまにならないように、岸に立って写真を撮る。

湖を見てると25年くらい昔を思い出す。当時、真ん中が大きなダム湖になっている町で仕事をしていた。現場を任される、といった内容で、結構忙しい毎日だった。ある日の夕方、ダム湖の岸に行ってみると、大勢の釣り人が並んでいた。そこはルアー釣りの名所だった。関心があったので、自分もルアー釣りの竿やリールや仕掛けを揃え、ウエーダーを着て釣りデビューした。そしてハマった。休みの日は一日釣りをしていたが、そのうち、朝早起きして、出勤前の1時間とかも釣りに当てるようになった。雪が完全に解ける晩春から、雪が降りはじめる晩秋までがシーズンだった。魚は余り釣れなかったが、湖で竿を振っていると、心が落ち着いた。仕事が忙しくても耐えていけると思った。冬はルアー釣りはシーズンオフだったが、氷が張り、雪が積もった湖の上にテント村ができた。氷に穴を開けて、ワカサギ釣りを楽しんだ。懐かしい思い出だ。

帰りは当然登り斜面だった。汗が噴き出し、立ち止まっては、タオルで顔を拭き、持ってきた冷たいお茶を飲んだ。急ぐ必要は全然ない、ゆっくり行こう、と言い聞かせながら歩く。

思ったより早く駐車場にたどり着いた。車を走らせ、少し先にあるもう一つの登山道の入り口を確認した。次に来るときは登山道を登ろうと思った。

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