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チラシ

実に5年振りのミッドナイトトーキョーのライブ、企画が7/13(土)に四次元である。
何となくUTEROかKIETH FLACKでやりそうな所であるが、今回四次元でやるのは店長ケイタに対しての敬意からである。
誘われても中々ライブ出れなかったりしたし、思えば長い付き合いなのでとびっきりスペシャルな出演の仕方がしたかった、というと大袈裟すぎるが。

イベントへの想いはありまくるが、今回はチラシの話である。

今回のフライヤーはイベントと内容が決まってからオレがAdobeのイラストレーターで1時間くらいで作った。
それからしばらくして紙のチラシも作ろうと業者にデータを送ったら2日で届いた。
箱を開けて確認するとハッキリ鮮明、何のミスもない完璧なチラシだった。
よしよしよかった、と思ったが、いつからだろう、フライヤーを作るのがこんなに簡単になったのは、と思った。

オレがバンドを始めた2009年頃、チラシ制作はイベント開催前の一大行事だった。

当時のAdobeはとても高価で、デザインのフリーソフトにはロクなものがなく、スマホなんかも全然普及してなかった。
なので、Adobeを扱える人を探して作ってもらうか、頑張ってそのフリーソフトを使って作るか、なわけであるが、これがまた大変だった。
今となっては信じられない話だが、そうやって人に頼んでフライヤーを作ってもらう時はわざわざその人の家まで行って、イメージを伝えながら半日かけて一緒にあーだのこーだの言って作っていた。
文章で伝えればいいじゃん、と思うが、当時はLINEみたいなチャットツールがないので、制作経過を確認するのが困難であり、例えばいかつくてかっこいいトラのチラシが作りたくて「トラがこっちむかって吠えてるみたいなチラシでお願いね」と伝えて、数日後に完成したフライヤーはトラ次郎みたいな可愛いトラのファンシーだった、みたいな事が起きたらもう手遅れである。
さらに数日かけて作り直してもらうか、我慢して可愛いトラ次郎のフライヤーを使う事になる。
なので一緒に作らなきゃダメなのだ。

そうやって良いフライヤーが出来るととんでもなくテンションがぶち上がり、「そうだ、俺たちはイベントをやるんだ」と実感する。
フライヤーが出来た瞬間、それはすなわちイベントをやる事が完成した瞬間でもあった。

なので、フライヤーデザインの発注から完成までは結構なスケジュールを要し、開催の日が近くてフライヤーが間に合わない時には手書きでフライヤーを作ってコンビニでコピーして配布したりした。

しかしデザインが出来ても次の問題がある。印刷だ。

初めての主催ライブ「MIDNIGHT OF BUBBLE HOP(泡麦ナイト)」をやった時、ドラムのけんたろうが当時全くのデザイン未経験であったが何とかテクってフリーソフトでデザインを作った。もちろん上記の様にオレも一緒にあーだこーだ横で言ってて、多分本当に半日くらいかかった。白黒の写真に文字が入ってるだけのフライヤーで、プロデザイナーになった今のけんたろうならおそらく10分で制作が終わる様なフライヤーだ。
それでもお互いに「めちゃくちゃかっこいい」と称賛しあって、もう嬉しくて仕方なかった。
が、俺たちはそれを印刷する術を知らなかった。
コンビニのコピー機でやるとすれば金がかかりすぎる上に出来が荒くなる。どこかの印刷所にもってかねばならない、とおもった。

そこで俺たちは先輩バンドのSNAREKILLSのタカユキさんに「フライヤーってどこの印刷所に持っていけばいいですか?」と聞いたのだが、タカユキさんはキョトンとして印刷所なんて知らないよ、みんなキンコーズでやってるよ、という。
キンコーズは有名なセルフコピー、裁断、製本などが行えるお店なのだが、俺たちはキンコーズの存在を知らず「いや、だからそれって印刷所なんじゃないの?」と言いながらUSBメモリ片手にキンコーズに向かうと納得し、「なるほど、こりゃ印刷所じゃなくてキンコーズだ」とアホの子の様なことを言い合った。
こうして何とか最初のフライヤーを印刷まで導いた。

しばらくはキンコーズに頼っていたが、そのうち我々もフルカラーでちゃんと綺麗に印刷されたフライヤーが作りたくなり、今度こそちゃんとネットの印刷所を教えてもらい、フライヤーを発注する様になった。
しかし印刷が失敗して変な色になったり、文字化けしてたり、サイズが超デカくなったり、様々な失敗を乗り越えてきた。

そして、スマホが登場してもいまだに過去の名残で家で一緒になってフライヤー作りをしていた。
遠足は帰るまでが遠足、フライヤーは印刷の出来を確認するまでがフライヤーだった。
しかし手を抜くわけにはいかない、俺たちローカルのバンドにとって宣伝する方法はこれしかねぇんだ、超カッコ良いフライヤーを作り続けるしかねえのだ。

あれから月日が過ぎ、今ではオレでも使えるくらいイラレも扱いやすくなり、他のデザインソフトも充実してるし、またスマホのアプリでもかなり高度にチラシ作りができる様になった。
そして印刷所もびっくりするくらい進化し、上記の様な失敗が起こらない様にデータチェックが充実し、ちょっとトンボずれてても向こうが修正してくれる様になって俺の様なおっちょこちょいでも失敗が格段に減った。

そして現代ではそもそもが紙のフライヤーの需要が無くなりつつある。
SNSで十分だ、という風潮だ。
昔はどこのライブに行っても分厚いフライヤーの塊をもらったが、最近は受付でドリンクチケットしか受けとらない事の方が多い。

それに応じてフライヤーは単純に情報のわかりやすさが重視される様になったと思う。
気が変わったり、内容が変わっても、ネットならすぐに差し替えができる。ゲームのアップデートやバグパッチみたいに。
それは便利だし、良いこととは思う。
ゲームだってそれが出来なかったからスト2はスト2だけで何回も発売され直している。



そんな感じだったよなあ、オレもこんなに簡単に立派なフライヤー作れるようになっちゃってさ、などと若干調子に乗りつつ、完成ほやほやのチラシを配りに出る。馴染みの音楽どころに。
昔はバカみたいな量作っては手分けして、全部配りきろうぜとか言って、置いたところで絶対に宣伝効果皆無のおじいちゃんがやってる様な喫茶店にチラシ置かせてもらったり、すんげー無駄な事ばかりをしていた。
「すみません、チラシ置かせてもらって大丈夫ですか?」
って切り出すのめちゃくちゃ緊張して苦手だったな。
けど、そうやって何とかチラシ作って、配って、置いてもらって、もらっていった人いるかなとチェックして何枚か減ったりするとすげー嬉しかったなあ。
今度のライブ、満員になるぜ!!とか言って調子乗ってたな。

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