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293人/7101件、映画『太陽の蓋』、自らを少数派と知る~327日目

 再宣言58日目。
 都内新規感染293人/7101件、65歳以上70人。リバウンド懸念。都基準重症者51人(前日比2人増)。8人死亡(累計1462人)。

映画『太陽の蓋』(2016)再映を観る

 映画『太陽の蓋』(2016)再映(~3/15)を、渋谷のユーロスペースで観る(こういうミニシアターがあるのが都会のいいとこ)。
 この再映には、アフタートークの付いている回があり、そこを選んだため、最近続いた安い曜日の映画をやめてこの日にしたのもある。アフタートークも既に終了しているのもあったが、残っている候補の中から、自分が「この人のを聞きたい」と思った、アフタートークのゲストは、「ゆとり教育」の寺脇研氏であった。
 ※アフタートークにご興味ある方にご参考まで。芸術というより、政治社会的にちょっと目を引く布陣かも。最初のhをとっています。
 ttp://www.eurospace.co.jp/works/detail.php?w_id=000504

 ※以下、ネタバレ含む

 映画は、東日本大震災で起きた福島第一原発事故を巡る官邸、官僚、電力、新聞記者、地元住民らのせめぎ合い。当時叩かれた民主党政権の混乱を、比較的冷静に描いたものと言えそう(私見)。
 アフタートークでは、反原発、の意図が明確で、方向性があるのはさておき。

自民党なら、上手くやっていたのか? という疑問

 かなり前にも書いたが、政権のあり方に関し、自分は「二大政党制」がいいと思っている。自民党支持でも野党支持でもなく、バランスのために、政党が入れ替わる米国式を気持ちは求める。従って、民主党政権が誕生した時は、別に民主党支持ではなく二大政党制への布石と期待したし、このコロナ禍でも書いているが、誰かが政策を決めて進めなければいけないので(必要悪としても)、今、政策を立案し進める立場の人に頑張っていただきたい気持ちに変わりはない。

 あの時、自民党政権だったら、もっと上手くやったのか? の疑問は当時から持ち続けている。
 ちょうど、コロナ対応で、自民党政権の対応を叩く野党を見て感じるのと同じように。
 両者の違いは、官僚や民間企業の使い方、付き合い方であり、能力にさほど違いはない。官僚を上手く使いこなせなかったのが民主党敗北の一因とは、多くの人が思っているところだろう。
 ただ、自民党かそれ以外に関わらず、政治家による官僚の使い方が荒すぎるという話は、文春砲あたりでもちらちら出ている。

 自民党であっても、かなり混乱したことは変わりない。種類が違っていても。今の、コロナ禍での政権の右往左往を見るにもつけ。

ゾワゾワ来た津波、爆発、オッサンの「突入」

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 映画の感想。
 まず、津波の映像では、身体にゾワゾワきた。3・11のその時、自分は東京で電車に乗って数時間閉じ込められ、電車を降りた後も家に帰れず時間つぶしをしていたので、リアルで津波の映像は見ていない。

 官邸の場面はひたすらリアル的映像追及。演技の上手い下手は多分ほとんど関係ない。というより、下手に演技するな、の世界だったかな。
 比して、一般人のところは、いわゆる普通の演技があったかも。

 福島第一原発の爆発の映像。ゾワ。

 現場の作業員が、手動でベント(原子炉内の蒸気を放出し、圧力を降下させる)を行う。
 その直前、作業員の若者と中高年のオッサンが会話。
 オッサンが、若者に言う。
 「今は俺らオッサンに任せて、お前らはこのまま待機。いいな」
 そして、オッサンらは、ベントに向かう。
 つい、涙腺が緩む。

 ああ、この人はものすごい量の放射線を浴び、決死隊として向かったんだ。

家を奪われた悲しみが初めて少しはわかったか?

 福島の人たちの描写。
 家が揺れて家財道具が壊れて、片づけている。
 まず原発から3キロ圏内外への避難なので、その時点では「家にいろ」。
 そこで「避難は10キロ圏内外へ」となり、家に来た人が「早く、早く」と避難を急かす。住み慣れた家を、離れなければいけないのだ。

 ここで、音問題でもはや以前の家でなくなった家に住む自分は、ずんときた。家を奪われる、それが、たとえそれだけでも(と言っていいのか)どんなに苦しいことか、ほんの少しだけ分かった気がした。しかも皆さんは街も近所も知り合いも仕事も奪われていった。どんなに苦しかっただろう。
 その住民たちが体育館に避難していると、さらに、「避難は20キロ圏外へ」ということで、「さあ、皆さん、ここから更に動くんですよ」。
 また、動くのか。
 それは、きつい。きついよ。きついんだ。
自分には正確にはわからないけど、きついんだ。福島の皆さんがどんな辛い思いをされてきたか、ほんの少しだけ想像をして、できるだけ忘れないようにしようと思った。

安定の北村有起哉

 主演は北村有起哉、である。実は、ここしばらく見た映画『ヤクザと家族 The Family』にも、『すばらしき世界』にも出演して、『太陽の蓋』は主演。3映画連続北村有起哉まつり! 別に北村有起哉の追っかけではない、単なる偶然。

 故・北村和夫という俳優の息子さんなので、いわゆる二世俳優でもあり、最初は気に入らんかった。美男というわけでもないし(すみませんm(__)m)。でも、だんだん慣れてきて(すみませんm(__)m)、あれ、この、その辺にいそうな風貌での脇役、いいかも、と思い始めたかも。二世ではないが、女優の江口のりこにも、似たような「段々慣れてきて、あ、その辺にいそうで、いいかも」を感じている。
 『太陽の蓋』は主演だが、力が抜けてる感が自分にはよかった。

 政治部の記者が原発にあれだけ詳しいのはちょっとリアルっぽくないが、尺も足りないし、政治部記者と科学部記者を合体させたんだろうな。官邸を描くためには政治部記者が必須だったのだろう。 

寺脇研「官僚は『所与の条件』下でベストを尽くす」

 で、アフタートークの寺脇研氏(右)。元文科省官僚で「ゆとり教育」の提唱者だ。左は製作の橘民義氏(早稲田理工出身、岡山県議3期経験)。

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 あれこれお話しされていたが、一番印象に残ったのは、「官僚は『所与の条件』の下でベストを尽くす」存在ということ。
 政治家と官僚の違い。政策の方向を決めるのは、あくまで選良の政治家であり、官僚はその指示に従い、実現のための施策を準備し、駆けずり回る。
 つまり、政治家(議員)が「やる」と言えば、「やる」ための準備・実現に官僚は奔走し、政治家が「やらない」と言えば、「やらない」ための準備・実現に官僚は奔走する。「やる」「やらない」の青写真を描いて政治家にレクチャーしたり、時に“誘導”したりすることがあっても(あまりいいことではないが)、決定権は政治家にある。
 原発を止める止めない、オリンピックをやるやらない、消費税を上げる上げない、すべて、すべて。

 そして、官僚は極めて優秀なので、どちらであっても、ちゃんと対応して施策を作って実行するのだ。
 遡れば、第二次世界大戦を「やめる」と決め、焦土の敗戦国日本が生まれたが、そこから、日本は這い上がったではないか、と寺内氏。

 みたいな、そんな話だった。あー、面白かった。

音、自分は少数派と改めて知る哀しい夜

 音、自分は少数派と改めて知る哀しい夜。それでも、生きていく。

 皆さまのご健康を。

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