見出し画像

読書「歩くような速さで」

是枝監督の初のエッセイ集「歩くような速さで」(2013年)を読みました。

楽しみにしている新作映画「ブローカー(仮)」の予習活動の一環(!)です。

すべてではありませんが、是枝監督の映画はよく観ています。是枝監督作品の中でもペ・ドゥナ主演の「空気人形」は好き過ぎて(というか大切過ぎて)、私の映画note「ペ・ドゥナ祭り」でもまだ取り上げることすらできないほどです。

「誠実」と「謙虚」

以前、是枝監督がフランスでカトリーヌ・ドヌーヴを主演に撮った映画「真実」(2019年)のメイキングドキュメンタリーをNHKで見たのですが、実は本編より面白かったのでした。

大まかにいえば異国の違う価値観や習慣の中で驚きながら、時には困り果てながら撮影を進める是枝監督の「誠実さ」「謙虚さ」に心を打たれました。異文化の中に監督として身を置く苦労は並大抵ではなく、そこまでして映画を撮るのか、と正直思ったのものでした。

そんなことを思い出しながら「歩くような速さで」を読むと、やはり「誠実な」お人柄なんだ、ととても納得する。一つ一つの出来事や人との会話の中から生まれる思いや疑問に対して、スルーせずにちゃんと答えを出そうとする姿勢。人と向き合い、人を大事にする姿勢。

「自己表現」ではなく「対話」

いくつかの章がとても心に残り、考えさせられました。映画について、映画の作り方や心構えについて語られていることが、私自身の小さな草の根的な仕事への取組み方の姿勢で理想とするところに通じる部分があったからです。

作品は、自己表現ではなく世界との対話(コミュニケーション)である。

というところがその部分なのですが、是枝監督の作品はどうして人に温かいのか、なぜ考えさせられるのか?が少し理解できたような気がしました。

コロナやオリパラ関連のニュース(ほかのも)を見ると、同じ困難な今を生きている人間同士なのに、大人同士なのにどうして「対話」ができないんだろう?と虚しくなるばかりの世の中ですが、是枝監督のエッセイを読んで、そんな人ばかりじゃないんだよ、と気持ちが癒されました。あと数冊行けそうです(笑)

このご時世に韓国に出向いて映画を撮っている是枝監督、本当にすごい。新作映画が楽しみで仕方がないです。そして、またドキュメンタリー的なメイキングや関連の書籍を見られますように…

この記事が参加している募集

読書感想文

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?