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宅建士試験合格講座 物権 > 占有権・相隣関係・地上権・永小作権・地役権

第4節 占有権

占有とは、物を事実上支配することをいいます。物を占有する者は、ふつう、所有権や賃借権など、その占有を正当づける権利(本権)を持っているはずですが、占有権とは、そのような権利の有無とは無関係に、物を事実上支配する状態そのものを法律上保護するために、占有者に認められる権利です。
たとえば家主からアパートを借りて使っている借家人は占有権を有しているということになります。
 
[所有権]
法令の制限内においてその所有物を自由に使用収益および処分できる権利。
[占有権]
自己のためにする意思で物を所持している状態を法律上保護する権利。

第5節 相隣関係

隣接する土地所有者間の関係を相隣関係といいます。隣接する土地相互の間では、その境界線付近でトラブルが生じがちです。そこで、民法は、土地所有者同士が互いに仲良く土地を利用できるように、隣接する土地相互の所有権を調整するルールを定めています。

(1) 隣地使用権

① 隣地使用権
土地の所有者は、次の目的のため必要な範囲内で、隣地を使用する〔=立ち入る〕ことができます。

(a) 境界またはその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去または修繕
(b) 境界標の調査または境界に関する測量
(c) 越境した竹木の枝の切取り

ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできません。

② 隣地使用権の行使方法
上記の目的で隣地を使用する場合、使用の日時、場所および方法は、隣地の所有者および隣地を現に使用している者〔=隣地使用者〕のために損害が最も少ないものを選ばなければなりません。
また、隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所および方法を隣地の所有者および隣地使用者に通知しなければなりません。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足ります。
 
③ 隣地の所有者等の償金請求権
隣地の所有者または隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができます。

(2) 公道に至るための他の土地の通行権

① 公道に至るための他の土地の通行権
他の土地に囲まれて公道に通じない土地〔=袋地〕の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地〔=囲繞地(いにょうち)〕を通行することができます。
 
② 公道に至るための他の土地の通行権の行使方法
他の土地を通行する場合、通行の場所および方法は、通行のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければなりません。
なお、通行権者は、必要があるときは、通路を開設することができます。

1. 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に出るために、その土地を囲んでいる他の土地を自由に選んで通行できるわけではない。
2. 公道に至るための他の土地の通行権として、自動車による通行権が認められる場合もある(判例)。


③ 通行権者の償金支払義務
通行権者は、その通行する他の土地の損害に対して、原則として1年ごとに、償金を支払わなければなりません。
 
④ 土地の分割・一部譲渡によって公道に通じない土地が生じた場合の通行権
土地の分割または一部譲渡によって袋地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができます。また、この場合は、償金を支払うことを要しません。 

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