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宅建士試験合格講座 民法総則 > 代理 #1

第4節 代理

本来、契約は自らの責任において本人が直接なすべきものですが、本人がすべて相手方に意思表示をしなければならないとしたら、幅広い経済活動を行うのを阻害し、大変不便です。そこで民法では本人に代わって他人が契約等を行い、その効果を本人に生じさせる制度(代理制度)を認めました。これによって、忙しくて暇がない場合でも、他人に頼むことにより契約等を行うことができます。このように、本人から依頼を受けて代理人になる場合を「任意代理」といいます。
また、自分では契約をすることができない未成年者や成年被後見人も、代理人の助けにより有効な契約を成立させることが可能になります。このように、本人の依頼に基づかないで、法律の規定に基づいて代理人が選任される場合を「法定代理」といいます。

■ 1 代理行為の要件と効果

代理人が、その権限内において、本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生じます。
 
[事例]
Aは、Bの代理人として、B所有地をCに売却する契約を締結した。
この場合、Aがした契約の効果は、直接Bに帰属する。

「顕名」とは、本人のために意思表示をすることを示すことだが、代理人が本人の名前で契約を締結するということではない。代理人は本人のために意思表示をすることを示しつつ、自らの名で、自らの判断により相手方と契約をするのである。たとえば、本人Bの代理人Aは「B代理人A」として相手方Cと契約をする。



■ 2 代理行為の瑕疵

(1) 原則
代理人や相手方がした意思表示の効力が次の①または②によって影響をうけるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決します(代理人を基準として判定する)。

① 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫、または、ある事情を知っていたこと(悪意)もしくは知らなかったことにつき過失があったこと(善意有過失)によって影響を受けるべき場合
② 相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思を受けた者がある事情を知っていたこと(悪意)または知らなかったことにつき過失があったこと(善意有過失)によって影響を受けるべき場合

(2) 例外(「特定の法律行為」の委託の場合)
 このように、代理行為に瑕疵がある場合は、その事実の有無は、原則として代理人を基準に判定することになりますが、特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情または過失によって知らなかった事情について代理人が知らなかったことを主張することができません。
 
[事例]
本人BからC所有の甲土地の購入に関する代理権を与えられた代理人Aが、その指示通りにCと甲土地の売買契約を締結したところ、実は甲土地はDが強制執行を免れるためにCに売却したことにしていたものであった。このとき、DC間の虚偽表示の事実について代理人Aは善意であったが、本人Bは悪意であった。
 本来であれば、代理人Aが善意なので、DはBに対してDC間の虚偽表示の無効を対抗できないところであるが、この場合、代理人AにC所有の甲土地の購入を委託した本人Bが悪意であるので、本人Bは代理人Aの善意をDに主張することができず、DはBに対してDC間の虚偽表示の無効を対抗できる。

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