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宅建士試験合格講座 債権総論 > 連帯債務(多数当事者の債権債務) #1

第5節 連帯債務(多数当事者の債権債務)

 連帯債務とは、複数の債務者がいる場合に成立する債務です。金銭債務のように債務の目的が性質上可分である場合に複数の債務者がいるときは、原則として各債務者は全債務を債務者の数で等分した債務を負うことになるのですが、連帯債務が成立すると、複数の債務者がそれぞれ個々に、債権者に対して全債務を履行する義務を負うことになります。ここでは連帯債務が成立する場合の、債務者と債権者の関係、債務者間の関係について学習していきます。

学習のポイント
1. 連帯債務とはどのようなものか把握する。
2. 連帯債務の絶対的効力について理解する。


■ 1 連帯債務の意義

(1) 可分債務
 金銭債務など、債務の目的がその性質上可分な場合、その債務を可分債務といいます。
 可分債務について数人の債務者がある場合に、別段の意思表示がないときは、各債務者は、それぞれ等しい割合で義務を負います。
 
[事例]
A・B・Cの3人が共同でXから900万円の借金をした。この場合、別段の意思表示がなければ、A・B・Cは、それぞれが、Xに対して300万円の債務を負担することになる。したがって、Xは、A・B・Cに対して、それぞれ300万円ずつしか請求できないので、たとえばAが300万円を返せなくなったとしても、その300万円を、BやCに代わりに支払うよう請求することはできない。

(2) 連帯債務
① 連帯債務者に対する履行の請求
 前述のように、可分債務の場合で数人の債務者があるとき、債権者は債務者の1人に全額を弁済するよう請求することができないが、これを可能にしたものが連帯債務です。
 債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定または当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の1人に対し、または同時にもしくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部または一部の履行を請求することができます。
 
② 負担部分
 連帯債務が成立すると、連帯債務者は各自で債権者に対して全額の弁済義務を負うことになるが、連帯債務者間の内部では、その債務の負担割合が定められます。この割合を負担部分といいます。負担部分は、特約があればそれにより、特約がなければ平等ということになります。弁済をした連帯債務者は、他の連帯債務者に対して、それぞれの負担部分に応じて求償することができます(後述)。
 
[事例]
A・B・Cの3人が共同でXから900万円の借金をした。このとき、A・B・CはXに対する債務について連帯して負担する旨の契約をした。この場合、A・B・Cは、それぞれが、Xに対して900万円全額の債務を負担することになる。Xは、900万円までの範囲で、A・B・Cの誰か1人に対して支払うよう請求してもよいし、A・B・Cの全員に対して同時または順次に支払うよう請求してもよい。
 また、A・B・Cの間で「負担部分は平等」と定めれば、A・B・Cの負担部分は各300万円となる。


■ 2 連帯債務者の1人についての法律行為の無効等

 連帯債務者の1人について法律行為の無効または取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられません。
 
[事例]
A・B・Cの3人が共同でXから900万円の建物を購入した。このとき、A・B・CはXに対する代金債務について連帯して負担する旨の契約をした。
 Aは未成年者であったが、親権者の同意を得ないで契約を締結したということで、契約が取り消されたとしても、XとB・C間の契約は有効であり、B・Cの2人で900万円の連帯債務を負担することになる。


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