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宅建士試験合格講座 抵当権(担保物権) > 抵当権の実行 #2

■ 3 抵当権と賃借権の関係

(1) 抵当権設定登記前の賃貸借

「借地借家法による対抗力」で建物の賃借人は、建物の引き渡しを受けていれば、建物賃借権の登記がなくても、対抗力を有する。

(2) 抵当権設定登記後の賃貸借
① 原則

② 例外(抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力)
 登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができます。

抵当権者の同意の登記がある場合に保護される賃貸借は、「賃借権の登記」を備えたものに限られる。「借地借家法に定める対抗力」を有するのみでは、保護されない。

(3) 抵当建物使用者の引渡しの猶予
 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用または収益をする者であって次の①または②に該当するもの(抵当建物使用者)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から6か月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しません。

① 競売手続の開始前から使用または収益をする者
② 強制管理または担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用または収益をする者

 買受人の買受けの時より後にその建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその1か月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、上記の引渡しの猶予の規定は適用されません。


■ 4 法定地上権と一括競売

(1) 法定地上権
 土地およびその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地または建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなされます。この地上権を法定地上権といいます。

 [事例]
Bは土地および建物を所有しており、その土地のみにAの抵当権が設定されている。この場合において、Aが抵当権を実行し、Bの土地が競売に付され、Cがその土地を競落したときは、Bのために法定地上権が成立する。

(2) 法定地上権の成立要件
 次の①~④のすべての要件を満たすときは、法定地上権が成立します。

① 抵当権設定時に、土地の上に建物が存在すること
② 抵当権設定時に、土地と建物が同一の所有者に属すること
③ 土地または建物につき抵当権が設定されること
④ 抵当権の実行により土地と建物の所有者を異にするに至ったこと

1. 更地に抵当権が設定されたあと、その土地の上に建物が築造された場合は、法定地上権は成立しない。抵当権設定時に、土地の上に建物が存在しない場合、抵当権者は土地を更地として評価しているためである。
2. 抵当権設定時に土地と建物が同一の所有者に属していた場合は、建物の登記は前の所有者名義のままであったとしても、法定地上権は成立する。
3. 抵当権設定時に土地と建物が同一の所有者に属していたが、その後建物または土地が譲渡され、土地と建物の所有者を異にする状態で抵当権が実行された場合でも、法定地上権は成立する。
4. 土地と建物の両方に抵当権が設定され、その抵当権が実行された結果、土地と建物の所有者を異にするに至った場合も、法定地上権は成立する。 

[事例]
Bは土地および建物を所有しており、その双方にAの抵当権が設定されている。この場合において、Aが抵当権を実行し、Bの土地および建物が競売に付され、Cがその土地を、Dがその建物をそれぞれ競落したときは、Dのために法定地上権が成立する。

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