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宅建士試験合格講座 媒介・代理契約に関する規制 > 媒介契約の種類等・媒介契約書の記載事項

 本章は「媒介・代理契約の規制」である。宅建業法では、契約に書面が必要になるものがいくつか出てきます。そのうちの一つが「媒介・代理契約の規制」です。
 本章からも毎年1~2問出題されます。媒介契約そのものに対する規制と、媒介契約書の記載事項を覚えていく作業が中心です。指定流通機構に関する出題も増えてきているので対応できるようにしておきましょう。本章は特に暗記力が必要な分野なので徹底した反復継続をしなければなりません。


第1節 媒介契約の種類等

 「媒介契約」といわれる分野では、媒介と代理の両方が出てくるが、業法は、媒介契約に関する規制をすべて代理契約に準用しています(宅建業法34条の3)。したがって、この章において媒介契約という場合は代理契約を含むものと考えてよいです。

 

■ 1 媒介契約の書面化

 宅建業とは何かについて、ここで改めてまとめの表を掲載します。

 このうち、自ら売買・交換する場合は、自分が契約当事者となるので、「媒介契約に関する規制」の問題は出てきません。問題なのは、他人が売買・交換・貸借するのを媒介代理する場合です。具体例で見てみましょう。

 例えば、土地の売主Aが、自ら買主Bに売る場合には、A・B間に売買契約が生ずるだけで、媒介契約の規制は適用されません。これに対し、売主Aが、土地の売却を業者に依頼する場合には、まず売主Aと業者との間に媒介契約が成立します(①の契約)。その後、業者が買主Bを見つけてきて、AとBとが契約締結を行い、それによって売主Aと買主Bとの間で売買契約(②の契約)が成立することになります。
 そこで、①の媒介契約から生ずるいろいろなトラブルを、未然に防止する必要が生じるのです。そのために要求されるのが媒介契約の書面化です。ここでは、くれぐれも①の媒介契約と②の売買契約は別ものであることを覚えておきましょう。なお、②の売買契約に関しては、後述の37条書面として問題となります。
 では、どのような手続で媒介契約書面は交付されるのでしょうか。

宅建業者は、宅地建物の、
売買・交換の媒介契約を締結したときは、
② 遅滞なく、媒介契約書面を作成して、
業者が記名・押印して、
依頼者に、交付しなければならない。

 媒介契約書面の交付が義務付けられているのは、「売買・交換」の媒介契約を結んだ場合だけであり、「貸借」の媒介契約は除かれていることに注意を要します。これは、安価な報酬しか生じない小さな契約のためにわざわざ媒介書面を交付していたのでは採算が合わないという趣旨です。

交付すべき書面については『媒介契約書面』のほかに、『重要事項の説明書面』、『37条書面』が問題となるが、その特徴の比較整理が重要となる。出そろった段階で比較整理しよう。


■ 2 媒介契約の種類

 媒介契約は、1人の宅建業者にしか依頼(媒介・代理)できない『専任媒介契約』と、複数の宅建業者に依頼できる『一般媒介契約』に分かれます。その『専任媒介契約』が、自己発見取引(依頼者が自分で契約の相手を見つけること)を許さない『専属専任媒介契約』と、それを許す『非専属専任媒介契約』に分かれます。また、一般媒介契約は、依頼した業者に対して、他の業者に依頼した場合に、その業者の名前を明示する義務のある「明示型」の一般媒介契約と、その義務のない「非明示型」の一般媒介契約に分かれます。
 このような媒介契約の種類のどれにするかは、依頼人と業者の契約で決まります。いずれも一長一短があります。例えば、専任媒介契約は依頼者から見ると、1人の業者にしか依頼できず不利のようであるが、業者は、自己が一所懸命にやれば報酬を得られることが確実なので懸命に営業します。逆に、一般媒介の場合は、依頼者は多くの業者に依頼できて有利なようであるが、業者のほうは一所懸命にやっても他の業者に報酬をさらわれる可能性があるので、それほど懸命に営業してくれません。
 いずれにしても、専任媒介契約を結んだのに業者が営業をさぼってしまうと、依頼者にとっていつまで経っても物件が売れないといった状況になります。
 そこで、専任媒介契約を結んだ場合には、業者が手抜き営業をしないよう、以下のような規制があります。一般媒介の場合は、他の業者に依頼できるので、以下の規制は一切適用されません。 

① 有効期間は3ヶ月とする。3ヶ月を超える定めは3ヶ月に短縮する。
② 更新は、依頼者の申出のあった場合に限り可能。更新後の期間も3ヶ月まで。
③ 契約を締結した日から7日以内(専属専任は5日以内、いずれも休業日は除く)に指定流通機構に所在、規模、形質、価格、法令上の制限を登録しなければならない。
④ 指定流通機構は、専任媒介契約の宅地建物の登録があったときは、登録をした宅建業者に対して、登録を証する書面を発行する(宅建業法50条の6)。
⑤ 宅建業者は、上記登録を証する書面を、遅滞なく依頼者に引き渡す。
⑥ 業者は2週間に1回以上(専属専任は1週間に1回以上)依頼者に業務の処理状況を報告しなければならない。
以上に反する特約は無効となる(④を除く)。

※業者は登録にかかる物件が成約したときは、遅滞なく、流通機構に報告しなければならない。

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