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宅建士試験合格講座 抵当権(担保物権) > 抵当権の実行 #1

第4節 抵当権の実行

■ 1 抵当不動産の第三取得者の保護

 抵当権設定者から、抵当不動産を買い受けた第三者を「第三取得者」といいます。第三取得者は抵当権が実行されると、せっかく手に入れた不動産の所有権を失うことになりかねません。そこで第三取得者が、買い受けた不動産の所有権を失わずにすむ方法が定められています。第三取得者は次の①~③のいずれかの方法によって抵当権を消滅させることができます。
 
① 抵当権消滅請求  ② 代価弁済  ③ 第三者弁済

AのBに対する貸金債権を担保するため、B所有地にAの抵当権が設定されていたが、Bはその所有地をCに売却した。その後、Bが債務を弁済しないため、Aは抵当権を実行し、C所有地を競売にかけた。
この場合において、Dがその土地を競落したときは、土地の所有権がCからDに移転するため、Cは、土地の所有権を失うことになる。これを未然に防ぐための方法があるということである。

 (1) 抵当権消滅請求
① 抵当権消滅請求の手続
 抵当不動産の第三取得者は、一定の金額を抵当権者に提供することを申し出て、抵当権消滅請求をすることができます。この場合、抵当不動産の第三取得者は、登記をした各債権者に対し、所定の書面を送付しなければなりません。
 登記をしたすべての債権者が抵当不動産の第三取得者の提供した一定の金額を承諾し、かつ、抵当不動産の第三取得者がその承諾を得た一定の金額を払い渡しまたは供託したときは、抵当権は、消滅します。

[事例]
AのBに対する貸金債権3,000万円を担保するために、B所有地にAの抵当権が設定されていたが、Bはその土地をCに売却した。この場合、B所有地を買い受けた第三取得者Cは、抵当権者Aに対して、抵当不動産の購入代金2,000万円をAに支払うことで抵当権を消滅させるよう請求し、その金額についてAの承諾を得たときは、Cは、購入代価2,000万円をAに支払うことにより、抵当権を消滅させ、自己の所有権を保全することができる。

1. 主たる債務者、保証人およびその承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。
2. 買い受けた不動産について契約の内容に適合しない抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。この場合において、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができる。

② 抵当権消滅請求の時期
 抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をしなければなりません。
 
③ 債権者のみなし承諾
 債権者が上記①の所定の書面の送付を受けた後2か月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときには、債権者が抵当不動産の第三取得者の提供した一定の金額を承諾したものとみなされます。

債権者は、抵当権消滅請求を承諾したくない場合は、書面の送付を受けた後2か月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしなければならない。

(2) 代価弁済
 抵当不動産について所有権(または地上権)を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。 

[事例]
AのBに対する貸金債権3,000万円を担保するために、B所有地にAの抵当権が設定されていたが、Bはその土地をCに売却した。この場合、B所有地を買い受けた第三取得者Cは、抵当権者Aの請求に応じて、抵当不動産の購入代金2,000万円をAに支払うことにより、抵当権を消滅させ、自己の所有権を保全することができる。

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