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宅建士試験合格講座 保証金制度 > 弁済業務保証金(宅建業保証協会)

第2節 弁済業務保証金(宅建業保証協会)

 営業保証金制度は、宅地建物の取引に関して、一般消費者を保護しようというものでした。
 しかし、営業保証金は、どれだけ小規模の業者でも一律1,000万円と高額です。これでは、潤沢な自己資金を有するものしか宅建業を営むことができず、問題があります。そこで登場したのが、「宅地建物取引業保証協会」です。この保証協会は、宅建業者の集合体であり(社団)、宅建業者が多く集まるので、個々の業者の拠出するお金が安価で済みます。いわば保険の原理で、個々の出資金は少なくとも、大勢集まるため、弁済に支障はないだけの保証金が集まるという構図です。
 この保証金を「弁済業務保証金」といい、会員(社員といういいかたをする)である業者の負担額は営業保証金の100分の6、つまり、60万円です。この金額を保証協会に納めることによって、営業保証金を供託しなくて済むのです。 


■ 1 保証協会とは

(1) 保証協会の指定
 
保証協会は、宅建業の発展のための業者団体であるから適性が求められます。よって、国土交通大臣が指定して初めて保証協会となれます。
 宅建業法は以下のような指定の基準を定めています。

① 申請者(協会になろうとする者)が、必須業務の全部について適正な計画を有し、かつ確実にその業務を行うことができると認められること
② 一般社団法人であること
③ 宅建業者のみを社員とする者であること
④ 宅建業法64条の22第1項の規定により指定を取り消され、その取消の日から5年を経過しない者でないこと
⑤ 申請者の役員が免許欠格事由に該当したり指定の取消しを受けて5年を経過しない者でないこと

※ 国土交通大臣は、保証協会が弁済業務を適正かつ確実に行えないと認められるときなどは、その指定を取り消すことができる。
※ ここにいう「社員」とは、保証協会に加入している宅建業者のことである。

(2) 保証協会の業務
 
保証協会の一番重要な業務は『弁済業務』であるが、そのほかにも、次のような業務があります。

1. 必須業務(必ずしなければならないもの)
① 苦情の解決…宅建業者の相手方などからの、社員の取り扱った取引に関する苦情を解決する業務
② 研修業務…取引士や宅建業に従事しまたは従事しようとする者に対して研修をする業務
③ 弁済業務…社員と宅建業に関し取引をした者の有する、その取引により生じた債権を弁済する業務

2.任意業務(してもしなくてもよいもの)
① 一般保証業務…社員が負った債務について連帯して保証する業務
② 手付金等保管事業…手付金等の保全措置の一つである手付金等保管事業を行うこと
③ 研修費用の助成業務…全国の宅建業者を直接・間接の社員とする一般社団法人による取引士等に対する研修に要する費用の助成
④ 宅建業の健全な発達を図るため必要な業務…宅建業のレベルを上げるための業務

※ 宅建業法は、「宅建業者を直接または間接の社員とする一般社団法人は、取引士等がその職務に関し必要な知識・能力を効果的かつ効率的に習得できるよう、法令、金融その他の多様な分野に係る体系的な研修を実施するよう努めなければならない」と定めており、保証協会はこのような研修に費用の助成をすることができる(任意業務③)。これは、取引士等の能力や資質の維持向上に、業界団体全体で取り組む趣旨である。


■ 2 弁済業務保証金分担金

(1) 弁済業務保証金分担金の納付
 
『営業保証金』は、業者が自ら供託所に供託する場合の名称です。これに対して、業者が保証協会を通じて納める保証金を『弁済業務保証金』といい、これは保証協会が供託所に供託します。
 業者が保証協会に収める
金銭は、『弁済業務保証金分担金』といいます。弁済業務保証金制度においては、「主語」と「支払先」に加えて、「支払うお金の名称」を整理しておいてほしいです。

① 保証協会の社員となろうとする者は、その加入しようとする日までに、弁済業務保証金分担金を保証協会に納付しなければならない。
② 保証協会の社員は、事務所を増設したときは、増設した日から2週間以内に、増設した事務所についての弁済業務保証金分担金を保証協会に納付しなければならない。

※ 社員は、1つの保証協会の社員にしかなれない。

 社員が事務所を増設しながら2週間以内に分担金を納付しない場合は、社員の地位を失います(宅建業法64条の9第3項)。社員の地位を失うと、『営業保証金』を供託しなければならなくなるので、業者にとっては痛手となります。

(2) 弁済業務保証金分担金の額
 
改めて、分担金の額を確認しておきます。

① 主たる事務所については60万円
② その他の事務所については、一つにつき30万円
の合計額を保証協会に納付する。

※ 営業保証金の100分の6という数字はここから導かれる。

弁済業務保証金「分担金」は必ず金銭で納付しなければならない。『弁済業務保証金』の供託や『営業保証金』の供託が有価証券で行えることと区別が必要。

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