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宅建士試験合格講座 借地借家法 >借家 #2

■ 8 居住用建物の賃貸借の承継

 居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻または縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦または養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継します。
 ただし、その同居者が、建物の賃借人が相続人なしに死亡したことを知った後1月以内に建物の賃貸人に反対の意思(賃借人の権利義務を承継しない旨の意思)を表示したときは、承継されません。

[事例]
AがBからB所有の居住用建物を賃借している。この場合において、Aが相続人なくして死亡した当時、Aと次の①または②の関係にあった同居者Cがいる場合、CがAの賃借人としての権利義務を承継することができる。
① 婚姻の届出をしていないが、Aと事実上夫婦同様の関係にあった同居者C
② 養子縁組の届出をしていないが、Aと事実上養親子同様の関係にあった同居者C

居住用建物の賃貸借の承継に関する規定は、強行規定ではないため、居住用建物の賃貸借の承継を認めない旨の当事者間の特約は有効である。


■ 9 建物賃貸借終了の場合における転借人の保護

 建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了または解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができません。
 建物の賃貸人がこの通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から6月を経過することによって終了します。 

[事例]
AがBから賃借している建物を、Bの承諾を得てCに転貸していたが、AB間の賃貸借が①期間の満了または②解約の申入れにより終了した。
 このとき、Bは、Cに対して賃貸借が終了する旨を通知していなければ、その終了をCに対抗することができない。BがCに賃貸借が終了する旨を通知すれば、その日から6か月を経過することにより転貸借は終了する。


■ 10 借地上の建物の賃借人の保護

 借地権の目的である土地の上の建物につき賃貸借がされている場合において、借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明け渡すべきときは、建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをその1年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、建物の賃借人の請求により、建物の賃借人がこれを知った日から1年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができます。
 裁判所が期限の許与をしたときは、建物の賃貸借は、その期限が到来することによって終了します。 

[事例]
BはCから定期借地権の設定を受けその借地上に建物を所有しており、この建物をAに賃貸している。定期借地権の存続期間の満了によって、Aが土地を明け渡さなければならないときでも、Aがその満了をその1年前までに知らなかったときは、Aは土地の明渡しにつき裁判所から相当の期限を許与される場合がある。


■ 11 定期建物賃貸借等

(1) 定期建物賃貸借(定期借家権)
① 定期建物賃貸借
 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、契約の更新がないこととする旨の特約を定めることができます(定期建物賃貸借)。定期建物賃貸借の場合には、期間を1年未満とする建物の賃貸借も有効にすることができます。
 なお、建物の賃貸借契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その契約は、書面によってされたものとみなされます。

1. 契約の更新がないこととする旨の特約は、必ずしも公正証書でする必要はない。
2. 定期建物賃貸借については、期間を1か月未満としても、期間の定めがない賃貸借とはみなされない。

② 事前説明義務
 定期建物賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければなりません。
 なお、建物の賃貸人は、書面の交付に代えて、建物の賃借人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができます〔=この場合は、書面を交付したものとみなされる〕。
建物の賃貸人がこの書面による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効となります。

③ 定期建物賃貸借の終了
 定期建物賃貸借は、期間の満了により終了します。ただし、期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間(通知期間)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができません。
 通知期間中に通知をしなかった場合は、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をすれば、その通知の日から6月を経過した後は、建物の賃貸借の終了を賃借人に対抗することができます。
 上記に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効となります。

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