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宅建士試験合格講座 借地借家法 >借家 #1

第2節 借家

 「借家」に関する規定は、「借地」に関する規定に比べ、民法の修正部分は必要最小限になっています。宅建試験の出題においては、民法の賃貸借の内容も併せて問われるケースがあるので注意が必要です。

学習のポイント
1. 借地借家法の適用対象を把握する。
2. 借家権の存続に対する保護と終了させる方法を覚える。
3. 借家権の譲渡・転貸・承継について整理しておく。

 

■ 1 借地借家法の適用対象(建物の賃貸借)

 借地借家法の借家関係の規定は、建物の賃貸借に適用されます。

1. 借地借家法は建物の使用貸借(無償の貸借)には適用されない。
2. 借地借家法の規定は、たとえば、ひと夏だけ別荘を貸すような場合のように、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用されない。したがって、一時使用目的の建物の賃貸借には民法の賃貸借の規定のみが適用される。

 

■ 2 建物賃貸借の期間

 建物の賃貸借の場合は、必ず期間を定める必要はなく、期間を定めないこともできます。ただし、期間を定める場合は、期間を1年以上としなければなりません。期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされます。
 また、民法の賃貸借の存続期間の規定(最長50年)は、建物の賃貸借には適用されません。したがって、建物の賃貸借では、50年を超える存続期間を定めても有効となります。

1 存続期間を60年と定めた場合・・・存続期間は60年となる。
2 存続期間を6ヵ月と定めた場合・・・期間の定めがない賃貸借となる。
3 存続期間を定めなかった場合・・・期間の定めがない賃貸借となる。


■ 3 更新

 期間の定めがある場合、その期間が満了すると賃貸借が終了するので、その更新が問題となります。 

(1) 合意による更新
 当事者は、原則として、合意により賃貸借を更新することができます。

(2) 法定更新
 一定の場合に、更新の合意がなくても自動的に賃貸借が更新される場合があります。 

① 更新拒絶の通知がない場合の法定更新
 期間の定めがある建物の賃貸借について、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知(または条件を変更しなければ更新をしない旨の通知)をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます。ただし、期間だけは同一条件ではなく、その期間は定めがないものとなります。

1. 法定更新後は、期間は定めがないものとなる。期間だけは従前と同一条件ではないので注意。
2. 期間の定めがある建物の賃貸借を終了させたい場合、各当事者は、「期間満了の1年前から6月前の間」に上記の通知(更新拒絶の通知)をしなければならない。この期間に更新拒絶の通知をしなければ、原則として、賃貸借は期間の満了により終了しない。
3. 建物の賃貸人による更新拒絶の通知は、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

4. 建物の賃貸人が更新拒絶の通知をする場合の正当の事由の有無は、以下の事情等を総合的に考慮して判断される。したがって、単に立退料を支払えば、これをもって、当然には正当事由があると認められるわけではない。

1 建物の賃貸人および賃借人が建物の使用を必要とする事情
2 建物の賃貸借に関する従前の経過
3 建物の利用状況および建物の現況
4 建物の賃貸人が建物の明渡しの条件としてまたは建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出

② 更新拒絶の通知後の法定更新
 更新拒絶の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます。ただし、この場合も、期間だけは同一条件ではなく、その期間は定めがないものとなります。

 

■ 4 解約による建物賃貸借の終了

(1) 解約の申入れ
 期間の定めがない建物の賃貸借や、期間の定めがある建物の賃貸借でその一方または双方がその期間内に解約をする権利を留保した場合は、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができます。この場合、建物の賃貸借は、次の期間が経過することにより終了します。

建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合・・・解約の申入れの日から6月
建物の賃借人が賃貸借の解約の申入れをした場合・・・解約の申入れの日から3月

 なお、建物の賃貸人による解約の申入れは、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

当事者間で、建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合であっても、解約の申入れの日から3月を経過することにより契約が終了する旨の特約をしても、賃借人に不利な特約であるため無効となる。

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