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宅建士試験合格講座 物権 > 所有権・共有

第2節 所有権

所有権とは、所有者が、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益および処分をする権利いいます。例えば、不動産の所有者は、その不動産を自分で利用することも、人に貸すことも、売却することも、壊すことも、もちろん自由なのです。

[使用]
その物を用法に従って用いる(建物に居住する)
[収益]
その物から収入を得る(建物を賃貸し、賃料を受領する)
[処分]
その物を譲渡したり壊したりする(建物を他に売却する)


第3節 共有

共有とは、2人以上の者が1つの物を共同で所有しあうこといいます。一物一権主義に基づき、1つの物には1つの所有権しか存在することができないというのが原則です。しかし、現実には、複数の者による共同所有形態も少なくないため、民法ではこのような共有を認めています。

■ 1 持分

[共有の対象物]
共有物
[共有物の各所有者]
共有者
[持分]
持分とは、各共有者が共有物に対して持っている所有権です。持分は割合の形をとっており、各共有者の持分をあわせると、1つの所有権と内容が同じになります。共有者は多い少ないを別にして、必ず持分を有します。
各共有者は、他の共有者の同意を得ることなく自由にその持分を処分(譲渡・放棄)することができます。
[持分の割合]
持分の割合は、法律の規定で定まる場合を除き、共有者間の合意により定めます。法律の規定や共有者間の合意がない場合には、各共有者の持分は相等しいものと推定されます。
[持分の譲渡]
共有者の1人が持分を譲渡すれば、その持分は譲受人に移転します。
[持分の放棄]
共有者の1人が持分を放棄すれば、その持分は他の共有者に(その持分割合に応じて)帰属します。
[持分の相続]
共有者の1人が死亡して相続人がある場合は、その持分は相続人に移転します。
共有者の1人が死亡して相続人がない場合は、特別縁故者(その共有者の生前に療養・看護に努めた者)への財産分与があるときを除いて、その持分は、他の共有者に(その持分割合に応じて)帰属します。国庫に帰属するのではありません。


■ 2 共有物の利用

(1) 共有物の使用
① 共有物の使用
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます。
共有者は、たとえ持分がわずかでも、自己の持分に基づいて、共有物の全部を占有することができます。また、共有者は、自己の持分に基づいて、第三者に共有物の占有使用を承認することもできます。なお、具体的な使用方法については、共有者の協議で定められます。

1. 他の共有者との協議に基づかないで共有者の1人が共有物全部を占有している場合であっても、その共有者は自己の持分に基づいて共有物を占有することができるので、他の共有者は当然にはその共有物の明渡しを請求することができない。
2. 他の共有者との協議に基づかないで共有者の1人から共有物の占有使用を承認された第三者が共有物全部を占有している場合であっても、その第三者はその占有使用を承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用することができるので、他の共有者は当然にはその共有物の明渡しを請求することができない。


② 持分を超える使用をした場合の使用対価の償還義務
共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負います。
 
③ 共有物を使用する共有者の善管注意義務
共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければなりません。


(2) 共有物の変更〔=重大な変更〕
① 共有物の変更
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状または効用の著しい変更を伴わないもの〔=軽微な変更〕を除く。)〔=重大な変更〕を加えることができません。
重大な変更とは、共有物の性質を大きく変更するか、共有物そのものを処分してしまう行為です。具体的には、建物の増築・改築・建替え、木を伐採して道をつくるなどがあります。

共有物に重大な変更を加えるには、共有者全員の同意が必要である。


② 所在不明等共有者がいる場合の共有物の重大な変更
共有者が他の共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に重大な変更を加えることができる旨の裁判をすることができます。
たとえば、他の共有者が行方不明になっているために、共有物に重大な変更を加えることができないという事態を回避するための制度です。

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