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宅建士試験合格講座 8種制限 > 総説・クーリング・オフ制度・手付金等の保全措置

 本章からは毎年2~3問出題されます。クーリング・オフは出題頻度が高く、重点的に知識をつける必要があります。事例で出題されるパターンが多いので、過去問等を通じて形式にしっかり慣れてもらいたいです。その他にも、民法の規定を修正・補充して素人であるお客を守ろうとする規定が登場します。取り組みやすいはずなのでしっかりと取り組みましょう。概要の理解重視で、細かい数字の暗記等は後回しでもよいです。


第1節 総説

 宅建業者が、「自ら売主となって」取引を行う場合のみ、これからみていく8種の厳しい制限が課せられる。まずはその趣旨を検討しましょう。
 媒介や代理の場合は、業者は、媒介(代理)手数料によって収益を得ます。その手数料(報酬)は、宅建業法によって厳しく上限が課されています。したがって、大きく儲けるのは難しいです。
 一方、業者が「自ら売主」となる場合には、物件を安く仕入れて、高く売りさえすれば大きく儲かる可能性があります。すると、素人である買主の無知につけ込んで、とにかく自分に有利な売買契約を締結しようとする業者が出てくるおそれがあります。これを防ぎたいというのが8種制限の趣旨です。
 この趣旨から、重要なルールが導かれます。
 それは、8種制限は、「宅建業者が売主、素人が買主」という場合にのみ適用され、それ以外の場合にはすべて適用されないということです。
 すなわち、買主も業者である場合(業者間取引)はもちろん、売主が業者以外で買主が業者の場合、業者が媒介・代理をする場合などすべて適用されません。

1. 業者Aが自己の所有地の売買の媒介を、他の業者Bに依頼する場合、Bは「売買の媒介」なので8種制限は適用されないが、Aにとっては「自ら売主」なので8種制限の適用がある。
2. 8種制限以外の規定は、すべて業者間取引にも適用される。特に、書面の交付(媒介・重説・37条書面)について、「業者間では適用されない」といった出題がなされるので要注意。


第2節 クーリング・オフ制度

■ 1 クーリング・オフ制度とは

 「クーリング・オフ」とは、事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回または売買契約の解除の略称です。要するに、「不動産は極めて重要な財産なのだから、十分慎重に考えて買うべきだ。もし慎重に考えられないような場所で契約した場合は、後で契約を解除できるべきだ」ということです。
 慎重に判断したのかどうかは、契約したときの実際の状況ではなく、契約の「場所」で決まることになっています。

① 宅建業者が自ら売主となる宅地建物の売買契約において、事務所等以外の場所で買受けの申込み又は売買契約を締結した者は、書面により、申込みの撤回又は契約の解除を行うことができる。
② 事務所等(クーリング・オフができない場所)とは
(a) 事務所
(b) 以下の場所で、取引士の設置義務のあるところ
 i) 事務所以外で継続的に業務を行える施設
 ii) 一団の宅地建物の分譲を行う場合の案内所(土地に定着するものに限る)
 iii) 事務所等で宅地建物の売買契約に関する説明をした後、当該宅地建物に関し展示会その他これに類する催しを実施する場所(土地に定着するものに限る)
 iv) 業者が他の業者に代理・媒介を依頼した場合の他業者の(a)及び(b)のi)~iii)の場所(土地に定着するものに限る)
(c) 買主が自ら申し出た場合の自宅又は勤務先

 申込みの撤回、又は契約の解除は、いずれも「書面」でしなければなりません。書面でしないと解除等は無効です。
 「取引士の設置義務のあるところ」とは、そこで契約をしたり、契約の申込みを受けたりする場所です。取引士の設置義務があれば足り、実際に取引士がいたか、免許権者に届け出ていたか(宅建業法50条2項)は問いません。
 クーリング・オフできる場所の典型は、
1. 旅館・ホテルの一室
2. テント張りの案内所
3. 喫茶店・レストラン
4. 銀行の一室である。

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