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宅建士試験合格講座 民法総則 > 意思表示の有効性 #1

第2節 意思表示の有効性

契約は、申込みと承諾という2つの意思表示の合致によって成立します。そして、いったん契約が成立すると、当事者はこれにしばられます。もともと両当事者がそれを望んでいるのだから当然です。
しかし、意思表示が「ウソ」だったり「カン違い」だったり、あるいはおどされたりしてなされたものであった場合にもお構いなしに有効としてよいのでしょうか。それがここで扱うテーマです。

■ 1 意思の不存在

(1) 心裡留保(しんりりゅうほ)
① 心裡留保
心裡留保とは、表意者が、表示に対応する真意がないことを知りながらする意思表示をいいます。たとえば、冗談やウソで、売る意思もないのに「売るよ」と言ったような場合です。
 
② 心裡留保の効果
心裡留保による意思表示は、そのような意思表示を信頼した相手方を保護するため、原則として有効とされます。
ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知っていた場合〔=冗談やウソであると知っていた場合など〕、または知ろうと思えば知ることができた場合〔=普通の人なら冗談やウソだと気付くような内容を真に受けてしまった場合など〕には、相手方を保護する必要がないので、その意思表示は、無効とされます。

心裡留保の表意者は、自らの意思表示が真意ではないことを知っており、意思表示どおりの効果が生じても自業自得なので、原則として、その意思表示による契約は有効となる。
しかし、相手方が、その意思表示が表意者の真意ではないことを知っていたとき(悪意)、または知ることができたとき(善意有過失)は、その意思表示による契約は無効となる。


③ 心裡留保による意思表示の無効と善意の第三者の保護
前述の例で、買主であるBが悪意か善意有過失の場合は、AB間の売買契約は無効となります。ところが、BがCに土地を売却したような場合に、Aは、AB間の売買契約の無効を、C(第三者)に対しても主張できるかが問題になります。
Aが、AB間の売買契約の無効を、何も事情を知らなかったC(善意の第三者)に対しても主張できるとすると、Cが不測の損害を被ることがあります。それに対して、Aには、心裡留保の意思表示をしたという落ち度があります。そこで民法は、心裡留保による意思表示が相手方の悪意や善意有過失によって無効となる場合であっても、心裡留保の事実について知らない第三者(善意の第三者)に対しては、その意思表示の無効を主張できないことにしました。

心裡留保による意思表示の無効は善意の第三者に対抗することができない。


(2) 虚偽表示
① 虚偽表示
虚偽表示とは、相手方と通じて行った、虚偽の意思表示のことをいいます。通謀虚偽表示ともいいます。たとえば、強制執行を免れるために財産の名義を他人に移す、いわゆる仮装譲渡などが挙げられます。
 
② 虚偽表示の効果
虚偽表示の場合は、表意者は、意思表示が真意でないことを知っており、相手方もその意思表示が表意者の真意ではないことを知っているのであるから、当然、このような虚偽表示は無効とされます。

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