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Googleも認めた、合意形成がうまくいく意外な成功要因、“心理的安全性”

こんにちは!
HackCamp【合意形成ラボ】研究員のゴウイケイコです(私たちが合意形成を研究する理由はこちらから)。

Googleが組織運営のキーワードとして掲げた「心理的安全性」。これが実は合意形成に影響するのではないかという仮説を立てています。

今回は10年以上前から組織における合意形成の仕組みの研究と実践を続けてきた矢吹さんに「心理的安全性」についてお話を伺いました。

意外とシンプルだった、組織の生産性が上がるコツ

最近はすっかりリモートワークが定着しましたね。我が家の場合、パートナーとは仕事部屋が別ですが、そうは言ってもひとつ屋根の下。ウェブ会議中の声が聞こえることもあり「この間はおとなしかったけど、今日は盛り上がっているな」なんて思ったりもして。

それで何気なく晩御飯のときに「積極的に発言していたね」と言ったところ、「他部署の人もいる会議だと変なこと言えないって身構えるけど、今日の会議はお互いのキャラを知っている者同士だったから、安心して話せたよ」とのこと。

そう、これが『心理的安全性』です。お互いのキャラクターを知っている者同士だと、正直に思ったことを言えますし、ちょっと違うと思ったこともちゃんと伝えられますよね。これ、良い仕事をするために大切なことなのです。

心理的安全性はGoogleがチームの効果性に影響する因子の一つであると指摘したことで注目を集めました。Googleではこのように定義しています。

心理的安全性: 心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。
引用元:「効果的なチームとは何か」を知る

心理的安全性は組織運営に必要不可欠だと思いますが、Googleの発信が話題になったということは、実社会には心理的安全性が保たれていない職場の方が多いからだろうと思います。

言いたくても言えないこんな世の中……

HackCampは自由に発言できる社風です。言いたいことが言えるように上司や先輩が工夫してくださっていると思いますし、会議以外でも、自由に質問や提案を発信できるツールが整備されています。

しかし、以前勤めていた会社は違いました。会議の場では上司の顔色を窺い、当たり障りのない発言に留めるのが暗黙のルール。改善した方がいいと思うことがあっても、自分一人でできることは実践しましたが、周囲を巻き込むような提案は嫌がられるという……。そこにモヤモヤを感じて転職を決意しました。

でも、世間一般には言いたいことを自由に言える会社の方が少ないかもしれません。

モヤモヤ

心理的安全性の保たれていない組織では
いろいろな思いがよぎり、
言いたいことを言うことができません。

心理的安全性がない組織に集合知はない

ゴウイケイコ:矢吹さん、心理的安全性と合意形成ってやっぱり関係ありますよね?

矢吹さん:その話の前に、心理的安全性について補足するね。心理的安全性と言うと、安心して何でも言える点が強調されるけれど、それだけじゃない。Googleの説明にもあるように、お互いに批判し合うことも大事。批判とは「それはおかしい」「ここで言う必要はない」と否定するのではなく、次の議論につながるような指摘をすることだと思う。これはお互いを尊重し合っているからできることなんだけど、その環境を実現するのが難しいんだ。

ゴウイケイコ:求人情報を眺めていると、世の中には風通しが良く、自由闊達に意見し合える職場ばかりのように思えますが、実際は違いますよね。私もそうではない会社を経験しました。

矢吹さん:社長やリーダーは「自由に意見を言って」と言うかもしれないけれど、それが命令口調だったりしたら何も言えなくなるよね。そうじゃなくても多少の忖度は働くものだし、「これを言ったらあの人が嫌な思いをするんじゃないか」みたいな気持ちにもなる。普段は仲良く雑談していても「提案して」と言われると、急に言いづらさが顕在化したりして。そういう組織では何が起こると思う?

ゴウイケイコ:必要な改善提案がなされないから組織として衰退していくでしょうし、意識ある社員ほど辞めていくのでは?

矢吹さん:そうだね。このところ「集合知」が注目されているじゃない? いままでは社長やリーダーの力だけでも前進できたけれど、VUCAでは個人じゃなく、組織の力を生かしていく必要がある。つまり、集合知だよね。それには社員一人ひとりの中にある「知の種」を集めなければならないんだけど、言いたいことも言えない環境では何も出てこない。だから、心理的安全性が大事なんだ。

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多様なメンバーの知を生かす「集合知」のためには
心理的安全性が欠かせません。

理想論ではない実践的な技が知りたい!

ゴウイケイコ:心理的安全性という言葉を検索すると、いろいろな解説記事が出てきますし、関連書籍も多数発行されているようです。いまは心理的安全性が低い組織が多いとして、今後は変わっていくでしょうか。

矢吹さん:心理的安全性の定義や解説は多いけれど、どうしたらその環境を作れるのか、実践的な方法論はまだ確立されていないように思う。そこでまずは、心理的安全性が担保される場のルールをあらかじめ作ること。そういう議論ができる場を設定するということが大事だと思う。たとえば「批判はしない」「全員が発言する」「発言のハードルを下げる(ロジック・賢いこと・正しいことだけを言わないといけないという雰囲気にしない)」「自由に発言する」といったことだね。

もう一つ大切なことは課題ではなく、理想の「ありたい姿」から語り始めること。顕在化している課題って「こんなことを言ったら嫌な思いをする人がいるのではないか」という懸念のど真ん中だからね。

ありたい姿を裏返すと現状の課題になるだろうけれど、理想について語るのだから、感情論にはなりにくい。そういう発言の仕方に慣れていけば、会議自体がワクワクするものになるだろうし、参加者も前向きになれると思うし、それが心理的安全性につながっていくんじゃないかな。言ってしまえば、ニワトリタマゴ。心理的安全性があれば会議が楽しいものになるし、会議が楽しくなれば心理的安全性がついてくるよ。

ゴウイケイコ:合意形成では一人ひとりの意見や考えが大切ですから、それぞれが自分の意見を伝えられること、ほかの人の意見に耳を傾けられることが大前提と言えます。心理的安全性は一朝一夕で生まれるものではありませんが、「ありたい姿から語り始める」「未来志向で話し合う」といった小さなレギュレーションが社内の雰囲気を変えていくのかもしれませんね。

最後に今日のポイントを振り返ります。
(1)心理的安全性は単なる安心ではない、建設的な批判も大事
(2)上司が「何でも言って」と呼び掛けるだけでは変わらない
(3)雰囲気任せではなく、なんでも言い合えるための仕組みや仕掛けを考えよう


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