哲学徒たち

 ザハロの父親。ポーランド人だ。十五歳のとき、一人の士官の横っ面を張り飛ばす。逃亡。カーニヴァルのある日、パリにたどり着く。持っていた僅かな金でコンフェッティを買い、それを売る。三十年後に莫大な財を成し、家庭を持つ。全くの文盲だったが、彼の息子が、たまに本を読み聞かせる。息子は彼に『ソクラテスの弁明』を読む。
「もうほかの本は読まんでいい。そいつがすべてを言いつくしている」
と父が言う。以来、彼は常にこの本を読んでいる。彼は判事や警察を憎んでいる。

(アルベール・カミュのノートより。彼は1946年の三月から五月にかけて行ったアメリカ旅行のさなか、ニューヨークで知り合ったザハロと名乗る青年から上の話を聞いた。)

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