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鬼ジムとハルさん

「こんにちは。はじめてですか?
わたしは、トレーナーのみどりです。
どうぞよろしく、こちらにおかけください。」

「は、はい」
ポスター:ここは鬼のジム。このジムではみなこぞって強さを磨きます。
(ここが噂の鬼ジム、ごくり)
見渡す限り立派な機械が並んでいる。

鬼ジムは、強くなるという夢を叶えてくれるジム。そのために全国からカリスマトレーナーが集まっている。
(そんな鬼ジムにわたしが通えるなんて・・・ごくり)

「こちらが当鬼ジムの入会申込用紙と規約にです。注意事項やジムの使い方など、よくお読みになってからサインをお願いします。」
みどりさんはわたしに数枚の書類に目を通すように言った。

わたしは蛇のハル。わたしは今日鬼ジムに入会する。
現在、鬼ジムは一般予約は受け付けていない。一般公募に応募し、選ばれた者がこのジムに通うことができる。わたしは運よく選ばれたのだ。ラッキーだった。たぶん、古からもつ蛇の運のおかげ。せっかくのチャンスがんばらないと。
わたしは今日から変わるんだ。いや、変わらないといけない。
わたしはペンを強く握り申込用紙にサインをした。
「書けました。」
わたしは顔をあげ、みどりさんをみた。
よく見るとみどりさんの身体はとても磨き上げられており、背筋は伸び、ウェストはくびれ、お尻はぷりんとハリがある。
(わたしのあのような身体になるんだろうか…まぁ、蛇だから肉付きは変わるのだろうけれど…)
期待で脈拍がどんどんはやくなっていく。

「ありがとうございます。準備しますので少々お待ちください」
みどりさんはわたしに笑顔で応えた。
その笑顔に圧倒されてしまう。わたしは一度もこれまで、鬼が笑うところを見たことがなかった。
(鬼って本当は怖くないんじゃないだろうか…)
すこし鬼や鬼ジムに対する恐怖感が薄れた。

「あ、あの。みどりさんは、どのように強くなったのですか?」
わたしは聞いた。
「そうだねぇ。あなたの思う強さってなんなのだろう。それによって答えは変わってくるかもしれないなぁ。わたしたち鬼ジムのトレーナーはそれぞれに違う強さを持っているんだ」
「え」
わたしは鬼の持つ強さに種類があるなんて思ってもみなかった。また、同時に不安になってきた。どうしてわたしは多数の応募のなかから選ばれたのだろう。果たしてみどりさん達の期待に応えることができるのだろうか。
「あ、あの…みどりさん。わたし、自分がなんの強さを求めているか、分かっていません。」
わたしは恥ずかしくて自身の肌の色が赤くなっていくの感じた。
「大丈夫。なぜ強くなるかのか。強さって何かを知る場所。それが鬼ジムなんだよ」
そう言って、みどりさんは笑った。


(つづく)



『鬼ジムとハルさん』とは
大蛇のハルが鬼トレーナーのみどりから強さを学ぶお話です。


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