見出し画像

社会の底が抜けてなかった時代、人はもっとやさしかった。

あの頃の話を思い出すと、小さい頃から苦労ばかりだったんだなと改めて思う。父親がギャンブルで借金まみれで家出してからは、母と姉と一緒に親戚の家で暮らすこともあったし、閉院した産婦人科医院を借りて過ごすこともあった。家と言ってもトイレが産婦人科の待合室に繋がっている恐ろしい状況で、夜トイレに行くのが怖かった。

でも、母が再婚してからは貧しくはなかったけど、裕福でもない生活を送ることができた。そんな中で、5歳の誕生日の時のことを最近思い出した。保育園から帰ってきて、母の原付の後ろに乗って、マルキョウというスーパーで夕飯の買い物してたんだ。でも、当時は貧乏だったから、誕生日でもケーキなんてものはなかった。

スーパーのケーキ屋さんの前で、5歳児ながらに悲しい気持ちでケーキを見ていたら、隣の魚屋のおっちゃんが、「誕生日なの?おっちゃんが買ってやるよー」と言って1000円くらいのホールケーキを買ってくれたんだ。そのときはとても嬉しくて、飛び上がるほどだった。

でも、お礼を言いたいと思っても、探しても見つからなかった。そのおっちゃんは、数年前に他界していたんだ。墓参りもできなかったし、最後にお礼を言えなかったのが残念だった。

でも、その思い出があるからこそ、今自分が持っている幸せについて、改めて感謝するようになった。でも、まだまだ貧しい子どもたちがたくさんいる。

どうやったら、誰かの助けになれるのか、考えさせられる。自分にできることを見つけて、何か行動してみたいと思う。

日本の子どもの貧困率は今、OECD加盟国の中で最悪の水準にあります。 子どもの貧困率は、1980年代から上昇傾向にあり、今日では実に7人に1人の子どもが貧困状態にあるとされています。 子どもの相対的貧困率の推移。 1985年に10.9%であった子どもの貧困率は、2019年には13.5%となっています

日本財団 「子どもの貧困」の現状 

「ひとり親世帯」では「貧困層」が50.2%、「母子世帯」では「貧困層」が54.4%となっていた。シングルマザーの世帯は過半数以上が貧困の問題を抱えているということがこの結果からわかる。

東洋経済 ONLINE  子どもの貧困、内閣府「初の全国調査」で見えた悲痛な実態

社会の底が抜けている。

経済が回っているけど社会の格差が広がっているという言葉よりも、底が抜けた社会と表現する方が、より印象に残ると思う。弱者にしわ寄せがいくのは、どの時代においても同じだ。

自分がおっちゃんと呼ばれる大人になった今、街で見かけた見知らぬ子供に、見返りの無い愛情で「行動」を起こせるだろうか。おっちゃんみたいな行動はできないけど、最近、マンションのエントランスで出会う小学生たちに大きな声で「おはよう!」と挨拶するようにした。反応はいまいちだけど、続けていきたい。マンションに限らず、まずは地域に住む子供たちとナナメの関係を築けたらと考えている。

僕自身、子供の頃、おっちゃんから買ってもらった誕生日のケーキの思い出は今でも忘れられない。

おっちゃんはどんな気持ちで僕にケーキを買ってくれたのだろうか。

そんな思いを胸に、少しだけでもやさしい行動を起こせるように心がけている。

僕たち大人が、少しだけやさしい行動を起こすことで、人がやさしかった時代に戻れるかもしれない。そんな気持ちで、僕も続けていきたいと思っている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?