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(連載86)DTM:ミシンの音のサンプリングだけで、楽曲を作る:ロサンゼルス在住アーティストの回顧録:2016年


皆様。こんにちは。

今回は、私が住んでいるロサンゼルスのアップルストアのサービスを利用して、一大プロジェクトをぶちかましたというお話です。詳しくは前回を。

残念ながら、今は廃止になってしまいましたこの「カスタマーサービス」ですが、前回を読んでない方のために、簡単にご説明しますと、


まず、オンラインで、アポをとる。その際に何について知りたいのか?を伝える。そして、スケジュールを決め、その時間にお店に行く。

店についたら、アップルの兄ちゃんが、1時間つきっきりで、なんでも質問に答えてくれる。まあ、言って見れば、リラッ〜クスしたジーニアス・バーみたいなもんですね。笑

これが、年間100ドル払えば、一回1時間のセッションが、

何回でも、無限に受けられる!

アポの時に、人は指名できないのですが、私は「音楽ソフトに詳しい人」というリクエストを毎回していたので、結果、いつも同じ人が私の担当するようになりました。

これが、前回もご紹介しました、ショーンとレイというふたりの男性です。もちろん、いつもは、アップルのユニフォームを着てましたよ。

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私は、もともと自分の持ってる電気ミシンのノイズで何かやりたいとう、漠然としたアイデアがあったので、この長年の悩みをいきなりぶつけてみたら、

「だったら、まず、サンプリングというものをやってみたら?」

という事になったのでした。

しかし、この時点で私は、ガレージバンド(以下、ガレバン)は、ビギナーだったので、いきなり、このサンプリングというのも学んでも、このスキルを自分のものにして、使いこなせるかな?とも思った。 

使いこなすためには、他の作業も必要になってくる。


たとえば、

サンプリングに使うノイズ録音はどうやってするのか?

その録音機材は何を揃えたらいいのか?

録音の時のコツやどんな録音環境がいいのか?

こういうアップルにはぜんぜん関係ない問題も派生してくるわけで。


彼らに、それも、ついでに突っ込んで、質問してみたら、

なんでも、すべて答えてくれる!


それも親切に必要な機材のリストを作ってくれて、その買い物までネットでいっしょにオーダーしてくれたり。

まさに、手取り足取り。。。


それで、ただ、毎回、毎回、単発の質問をしてるだけでは、もったいないような気がして、もっと、どデカいゴールを先に設定して、自分の質問自体もそれに添って体系づけていけば、

なんでも実現できる!!

と思うようになり、

長年の念願のミシンのノイズを使って、サンプリングだけで、一つ楽曲を完成させてみよう!!と決心した。


そのプロジェクトとは?


それは、

モーリス・ラヴェルの

『ボレロ〜〜〜』 !!! 


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うふふ。僕を選んでくれて、有難う!


ミシンのノイズのだけで、ボレロを作る!

(もちろん、ミディでキーボードにはつなぎますが)

これを、アップルの二人に宣言し、以降は、このゴールを達成するための質問だけに集中するようにしました。

そして、


自分は、家でも、寝ても醒めても、ボレロ活動になった。


まず、なぜ「ボレロ」かと申しますと、私はクラッシック音楽はあまり聞いた事がないのですが、「ボレロ」は知ってます。

リズムはずっと同じ。

メロディも同じ。

なんかミニマル音楽みたいで、ずっと同じ繰り返しなので、ある意味、わかりやすいし、とっつきやすい。(あくまで、表面的にという意味ですが)

これがポイントだと思いました。

なぜか???

ミシンのノイズってガシャガシャガシャ。。。。なので、一つのツーーーっていう単音じゃないですよね? ノイズだし。なので、音階を作っても、複雑な楽曲だと、たとえば、ベートーベンとかモーツアルトとかやっても、何やってるのか?わからないと思ったんです。苦笑

かと言って、シンプルすぎるのも?どうなの?と。

昔、犬の鳴き声だけで、「ハッピーバースデー」をの曲をやってたの聞いたことありますが〜 苦笑

私は、そういうノベルティでもキッチュでもいいけど、どうせなら、誰もやらない「壮大な事」がいいなあ〜。と、

それで、クラッシック音楽だけど、わかりやすい。というので、

((( 深く考えないで、決定 )))



まず、最初に「ボレロ」のオーケストラの楽譜(以下、オケ譜)がいるよな〜。と思いました。

それで、ネットで楽譜を探したら、、、、、


たっか〜〜〜!!!(高額)

$200くらいするんですよ。

しかも

私のようなアマチュア

しかも

貧乏

しかも

将来、このプロジェクトがお金を産む可能性はゼロ



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楽譜ってせいぜい$10くらいかな〜?と思ってたので、中古でもなんでもいいから、もっとお安く。。。といろいろ漁ってみたものの、オケ譜自体がないんですよ。

ギター用、ピアノ用とかアレンジしたものは、たくさんありましたが、オーケストラ用の楽譜って、出回ってない、、、。

アマゾンとかに売ってない。E-BAYにもありませんでした。

セブン・イレブンにもない。(自虐ジョークは、もう、やめにしない?)


考えたら、まずそういうマーケット、、、ないわ〜。笑

世界中で、ボレロのオケ譜を必要としている人が何人いますか?って話ですよ。指揮者か指揮者志望の方?

そういう方は、すでにそれなりのコネクションがあって、ネット検索などでオケ譜を買ったりしない。

私の長年の夢の実現を目指して始めたプロジェクトに、はやくも現実の不条理がのしかかったのだった。涙 

さて、ここで、200ドルの出費をおしまず、払うか?

このプロジェクトの変更するか?やめるか?


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が。

ここで、夫のトッシュが現れた!


おまかせください


図書館にあるのでは??


大当たり!!!

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ロサンゼルスの大図書館にあって、しかも無料で借りれたのです。

しかもオリジナルバージョン!!!

これです。

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そして、これを片っ端からコピー!!


しかし、この長さが、ハンパない!! 全部で66ページ!!

繋げたら、こんな!!笑


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なので、管理しやすいように自分なりに、少しずつまとめました。表紙もカラフルな再生紙で、自分で作った。


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そして、この時点で気がついた事。

私は人生で、オケ譜など見たことがなかったのだった、

=なめてた。


小さい頃にヤマハ音楽教室に行ってたり、個人的にピアノを習ってた(いやいや通ってた)ので、楽譜はある程度は読めた。でも、オケ譜というのは、初めて見たし、オーケストラに関する知識、どんな楽器があるのか?などとというのも、全く知りませんでした。

オーケストラって何?

私の疑問はそこからはじまった。

ここで、例のアップルのショーンの登場ですよ。このなぞだらけの譜面問題をぶつけると、また譜面これも、アップルには全く関係のないレクチャーがえんえんとはじまった。苦笑 これ、ショーンが書いてくれた説明。

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え?楽器によって、譜面の書き方が変わるですと???

知らんかった、、、。とほほ。


そして、またこれに必要な演奏家が、第一バイオリンと第二バイオリンなどは「ふたり」と数えると なんと41人!!

使っている楽器の種類だけでも25種類!!

という事は、ミシンのノイズが、最低でもそんだけいるってこと!

きょえ〜〜〜!!



以降、オーケストラの事を学びながら、同時にミシンのノイズ集めが始まった。

もともと、音源として有料で売っているものもあり、それらは、何人かが、無料でくれた。音質もいいですしね。

自分でできる事も=素人っぽいですがやりました。

種類の違うミシンを録音したり、違うマイク(コンタクトマイク)などで録音したり。。。そして、録音するミシンの位置を変えてみたりとか。

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工業用ミシンの下についてるのモーターの部分を録音

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お風呂で録音(この辺りは、イギリスのジョン・ミークという人がやってたので、真似してみた)

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また、レアなビンテージのフィルターをもってる人を紹介してもらって、それを通して録音させてもらったり、、、現代音楽をやっている友人は、Mオーディオなるもので加工したものを送ってくれたり。

この、サムという女性は、たまたま知り合ったノイズのハードコア(研究者ともいう)で、土の中や、NASAの宇宙船のノイズなんかを集めてる人。

この人が作ったハンドメイドマイクで音を録音。

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説明してもらったけど、チンプンカンプンの図。

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だんだん、アイデアがなくなって、こんな絶望的な事もやった。

まさに、主婦ならではのアイデア!!

電池で動く小型のミシンを冷蔵庫の中に入れて録音したらどうなるか? 笑

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洗濯機の中だと、どんな音になるんだろ?

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いつも、何かやってるうちに気がついたら、お笑いになっている自分であった。

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そして、何事も始めるのは簡単ですが、

先はまだ、長い道のりなのでありました。


次回へ続く

L*


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