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(連載53)ロサンゼルス現代美術館の仕事:村上隆のオープニング他:ロサンゼルス在住アーティストの回顧録:2002年−2007年

今回は仕事のお話をしようと思います。

私は1990年代の始めにアメリカに引っ越して以来、仕事といえば、

お声がかかれば、なんでもやるフリーの便利屋

運転手、通訳、コマーシャルのスタイリスト、雑誌のコーディネーター、日系フリーペーパーのライター、ビンテージ古着屋の店番などなど。

で、連載46でも書いたのですが、2002年くらいからは、古着のリメイクの仕事がだんだん増えてくるようになったのですが、基本的には、ちょこちょこと、ずっと、いろいろな職種をやっておりました。

今回はそんな「何でも稼業」の中でも、興味深い経験をさせていただいたので、そのあたりを皆様とシェアさせてください。


と、申しますのは。

あの!天下のロサンゼルス現代美術館(通称MOCA=モカ)から

このアタクシが、何回か仕事をいただいた事があるのですよ!


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さて、 美術館からのお仕事とは ?


(((((  いったい、なんでしょう??  )))))


絵の修正?   

これは、無茶苦茶 特殊な技術が必要で、私では到底無理であります!

作品のラッピング?    

まさか!!$$$$$する他人様の作品に?この手で触るなんて!!!

美術館の経理とか、数字系?

高校時代、数学だけはいつも0点で、悪名を馳せてた(マジで)

チケット売り? 

世界中から集まる観光客のナマリ英語には、対応不可能!!

会場の清掃? 

(これならできるかも?)


全て ぶぶーーーーーーーーーー!!


それでは、正解を申し上げましょう〜。


この頃、(今でもかもしれませんが)MOCAは、新しい展覧会をやる時に、オープニング・パーティーなるものをやっていて、一般の人も参加できるものと、もうひとつ、もっとスペシャルな、その開催に寄付をしてくれた人、お世話になっている人やセレブをあつめて、VIPだけの、

いわゆる、

「ガラ」 と呼ばれているイベント


をやっておったのです。


で、2002年にアンディ・ウォーホルの展覧会があったのですが。

私が頂いた仕事というのは、このガラ・パーティーで、

ただ、ウロウロするだけの仕事!! 笑

もう、今から考えても、こんなんでお金もらっていいのかな?って思うような。(いくらもらったか、忘れましたが、どちらにしても、そんな大したお金じゃなかったです。汗)

ウロウロするといっても、カクテル・ウェイトレスではないですよ。(この頃、すでに40代後半ですし。苦笑)

だったら、警備員?セキュリティ?


あのね、、、、、、、

いくらなんでも、そう思った方!!!あなた!!!!

それはないでしょ〜〜〜よぉ? アタクシ、女性です。一応。苦笑


つまりですね。

ただ、衣装を着用しての、ウロウロです!!


これは、ウォーホル展覧会のガラ・オープニングの特別プロジェクトで、彼がまだ生きている頃の、ファクトリー(制作スタジオ)には、いろいろな人が出入りしていたので、そんな派手でエッジな人々の雰囲気を、このガラのパーティでも再現しようという、野心的な企画だったんです。

それでハリウッド系のモデルや女優の卵みたいな人たちと共に、ドラァグ・クィーン(女装系)や、コスプレ専門系、見るからに不思議なルックスの人たちが呼ばれ、「ウォーホル風なパーティの雰囲気を盛り上げてください。」というミッションでした。

私もそのスジの友達から「やらない?」と誘われました。

仕事として。。。。笑


で、当日会場に行ってみると、もう異様っていうか。笑

当たり前ですが。爆笑

控室、バックステージのようなテントが用意されていて、五十人以上の人がそこに集まっておりました。

面白かったのは、もうバケモノ系の人とハリウッド系の人にきっぱり二つにわかれてて。

もちろん私はバケモノ系ですよ。爆笑

別にそういうふうに指示されてたわけでもないのに、控室のテントの右側はモデルとか女優志望?将来のハリウッドのセレブ、いわゆる美人ばっかりで、ヘアメイクさんもちゃんと連れてきてて、スタイリストさんが、彼女達の着る衣装をハンガーラックに綺麗にかけてあって、アイロンをかけたりしている。。。

一方、ウチら、バケモノ系は、ほとんどの人が自分でメイク。どうらんっていうかあのシアターのメイクみたいな厚化粧の人ばかり。衣装ももちろん持参で、ハンガーとかも持ってきてなくて、そのへんにコスチュームがとっちらかってて。ごちゃごちゃ。。。話し声も大きくて うるさい。

注目すべきは、このふたつは絶対に交わりませんでしたー。笑

お互いにまったく興味なし! 

反対側の人々は、いない事になってた!!爆笑


ちなみにLAタイムスに載った、このイベントの当時の記事です。

ハリウッドのセクシー系と、(上の方の写真) バケモノ系の人たち(下の方)

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上の写真の左はバケモノ系ですが、右は昔モデルで60年代に一斉を風靡した、ペーギー・モフィットさんです。


あ、ちなみに、

これ、アタイですよーーーーー!!!笑

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この時のドレスはこれです。

じゃーーーーん!!

マリー・アントワネット の カモフラージュ・ドレス!


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このドレスはもう大評判でした!

これを着てですね、ウオーホールのカモフラの絵の前で、ウロウロしてました。

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今だったら、もうSNSにのりまくったでしょうが、その頃なので、写真もありません。あ〜〜〜残念!!

せめてこのくらい。しか、残ってない。。。


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どちらにしても、いつの時代もエッジなものは、記録が残りづらいものですねー。涙


さて、話は戻り、MOCAの仕事ですが、その次の年の2003年にもお呼びがかかりました。

これは、ルシアン・フロイトの展覧会。あの精神分析医 フロイトの孫です。ポートレイトで有名な。。。

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この時のお仕事は、前述のようなガラではなくて、一般公開のオープニングパーティーで、中庭にバーがあり、ステージもあって、そこでバンドのライブ演奏、、、、みたいなので、当時私が参加していた音楽のバンド、セックスロバにお声がかかりました。

なぜ、フロイトにセックスロバ?なのか?わかりませんが、おそらく深い意味はないと思います。苦笑

テルミンのライブ演奏なので、ちょっとアーティーで、かといって、重くなく、ポップなノリ。 ガラ・パーティと違って、大衆向けのエンタメ!!

一般の人たち向けの、ガーデン・パーティには、ピッタリだと思われたのでしょう。

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これは、あっさりとこなして終わりました。。。。。


そして、その次に頂いたお仕事は、2007年ですが、、、、、

これが今回の話の目玉であります!!!!


村上隆(さん)の展覧会のオープニングのガラ・パーティー!!

もうこれは、最初から話がデカかったですねー。

天下のルイ・ヴィトンとのコラボ!!ですからね。


村上隆は名前は知っていましたが、直接はもちろん知りませんでした。

っていうか、今も。笑


なぜ、お声がかかったのかと言うと、当時、私のファッションショーのモデルをやってくれてたこの女性、バネッサ・ゴンザレスがこのイベントを仕切っていたのです。

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これを見てもわかるように、彼女自身、キャラがかなり濃いっス!!笑


彼女のアイデアは、村上隆のこの作品!!ミス・ココちゃん。。ですが。

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ガラ・パーティーの時に、モデル達にこの作品のコスプレをしてもらって、定期的にこのポーズをやってもらうという、クレイジーな企画!

で、バネッサ曰く、このアイデアは村上さんご本人も、大変気に入っていると、いう事でした。

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で、頼まれたらなんでも稼業の私は、はいはい。やりますよ。と。

だったら、コスプレの衣装は色違いにして、カラーパレットみたいに12色セットっていうのはどう?って、言ってみたら、それはグッドアイデア!!と即決定!

ココちゃん人形衣装、色違いで12人分、注文はいりました〜

となり、

頭のてっぺんから靴までだったので、時間はかかりましたが、こういう仕事に関してはスタイリスト時代にかなり経験を積んでいたので、特に大きな問題もなく、できました。


こんなかんじです。

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ちなみに、私はすでにこの頃、服のリメイクを始めていたので、ほとんどがユーズドの服をリサイクルして作りました。新しい素材は、直接肌にくっつく部分だけです。


さてさて、 ガラ・パーティの本番です!! 


彼女らがパーティーの入口にズラーっと並んで、お客様をお出迎え。

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はい!!ポーズ!!


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村上さん、ご本人とも!


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まあーこのガラのイベントの派手さっていうのが、パンパなかったです。

セレブがすごかったことは確か。(でも、ほとんど知らん。。。涙)

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そして、この入り口の壁、わかります? 全部ルイ・ヴィトン柄!

もちろん本物ですよ。笑


当日のディナーの前のライブはあの、カニエちゃんでした。

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この頃は今みたいに、大統領に立候補するとか言い出す、エスタブリッシュされた存在じゃなくて、まだアップカミング(これからの人)な頃で。こんなサングラスをかけてた頃です。当日はこれの赤でしたけど。

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そして、ライブが終わって、まずこのイベントを主催した女性(美術館の人だと思いますが)のご挨拶があり、見るからにお金持ちの白人の女性でした。

そして、蟹江ウエストのライブを「今までで聞いた音楽の中で一番素晴らしかった」と、べた褒めしてて、それがなんかすごい不自然で、このおばさんに、いったい何がわかるんだろうと思った。

あ、自分だって、わかってないけど、、、、。苦笑


そして、また、ここでもココちゃんコスプレ・モデルが活躍!

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で、いよいよのディナーとなりました。

会場はこんな感じでした。イメージ画像ですが、ほとんど同じ。

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私と夫のトッシュも一応招待されてて、でも、さすがに席は末席もええとこで、壁の近くの角っこ。笑

それでも、金持ちのコレクターや美術館を経済的に支えてる人は、どんなものを、こういうところでふるまわれてるのか?が、よく見渡せた。

〜まあ、よくある高級なやつですよ。そんな、たいしたことないス。笑


日本からはウラハラ代表の?二号さんがきてたみたいです。

私はもちろん彼の顔は知らないけど、誰かが、ヘイ 二ゴー!って言ってたから、わかりました。笑

あ?この人???かな??(未だに知らん)

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あと、ファレルとか。

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食事はともあれ、テーブル・セッティングに、タカシ・ムラカミのプラスティックのお盆みたいなのが、ひとりひとりに敷いてあって、

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ディナーが終わったら、このプレートを持って帰ってる人が、結構いたので、私も、、、、一応、、、、、持って帰った。笑

そしたら、その夜すでにEbay で、これを売ってる人がいて、200ドルの値段がついていました〜。

ちなみに、今(2022年1月)検索してみたけど、もう、なかったです。笑


ともあれ、、、私は末席の壁側の、キッチンの出入り口近くで、このイベントの一部始終を見ていて、

このキラキラした世界が何を意味するのか、さっぱりわかりませんでした。

みんな自分も含めてですが、なにかアートに関わっているような気分を作り出す、このお祭り騒ぎ!!

で、お金ってあるとこにはあるなーーーーと。


ここにアートはあるのか???

このアメリカの美術界のビジネス業界。

または、寄付でなりたっているゼロの数がまったく違う世界。

アートと 

アートビジネスは まったく別モノ。


これが私の感想でした。

沈黙 


まあ、どちらにしても、いい経験をさせてもらったなあ。と思いましたね。


以上です!!!

現代美術の美術館の現場からのレポートをお送りして、スタジオにお返しします!!

ルンナ フロム モカ、2007でした!!

L*

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