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十九の春

 世は戦さ続き。
米の売買を手広くやる奈良屋の主人夫婦には息子と娘がいる。

 息子はいずれ米屋の跡を継がねばならず、嫁と一緒に遠国の米屋仲間の店に修行に行っている。

 娘の名は「春」、歳は十九。
家業の手伝いもすれば習い事もあって忙しい。
性格が良く愛嬌もあって周囲の評判もすこぶるいい。
なので毎日のように縁談がくる。

 だが春は来る縁談、聞く話し、みな断る。
先日には隣町の産婆が三度目の話を持ち込んできた。
「仲人口の千三つ」と言われるが、この産婆が世話して離縁した夫婦はほとんどおらず、組み合わせが上手いと評判だ。

今回の相手は小間物問屋の長男で互いに商人(あきんど)同士、父と母は気に入ったが、春はまた黙った。
嫁にいくのも旬がある。
縁談はあるうちが華だ。

以前は縁談に前向きだったが、昨年から急に縁談は断ってと言い出した。
父も母もその理由はわかっている。
春には好きな男がいるのだ。
名を佐吉といい、店で一年ほど働いたが、春が惚れてしまって父と母は佐吉に怒った。

佐吉はその日のうちに店をやめたが、そのとき佐吉は父と母に向かってこう言った。
「わたしにも望みがございます。お春殿を必ず迎えにまいります。二年ほど待ってください。そのときはなにとぞお許しを」
春も二年のことは佐吉と約束していた。

しかし何の音沙汰もなく一年が過ぎた。
春は傷つけられたわけでもないが、そのときの二年を信じている。
(父さまも母さまもごめんな、佐吉さんは必ずわたしを迎えに来てくれます。あれからまだ一年、あと一年私をここに置いてください)

佐吉が迎えになんかくるものか、と父も母も思っている。
だがそう言われれば言われるほど春は頑なになっていく。

 梅雨のある日、刀剣を扱う鍛冶屋がやってきた。
本職は刀鍛冶で父の昔からの友人だ。
「河内からの帰りでな、いやぁあっちは国中が戦さ続きでの、いくら作つても刀が足りん」
と早口でしゃべりながら意外なことを言った。

「ところで、以前こちらにおった佐吉のことじゃが」
鍛冶屋は春と佐吉のことも二年の約束のことも知っている。
父と母はおどろいた。
「佐吉と会ったのか」

「会ったというより見たと言うべきじゃな。摂津と河内の国境で戦さがあったんじゃが、その前の日に見た軍勢の中に佐吉がいた。背が高く左ほほに二寸ほどの刀傷。佐吉に間違いない。こんなところでと、おどろいたよ」

「奴は何をしていた」
「槍を持ち胴丸姿で大刀を差し髪は伸び放題じゃった」
「侍の一歩手前か」
「そんなところじゃな」

「それで」
「うん、佐吉のいた軍勢はみなで二百人くらいおったな、草むらに座って休んでいるところじゃった。声をかけようと思って近づこうとしたそのときじゃ、『佐吉ぃ佐吉ぃおるかァ』と奥から呼ぶ声があった。見ると呼んでいたのは家紋を記した旗を持った白髪の侍じゃった。

すると佐吉は『はい、すぐに』と叫んで立ち上がり、侍と何かしゃべると十人ばかりの足軽とともにどこかへ行きよった。近くにいた足軽に聞くと白髪の侍が佐吉の主じゃったらしい。声も体つきも間違いなく佐吉じゃった」

母が言う。
「それで戦さは、佐吉は」
「わしは鍛冶屋仲間と一緒に近くの山から弁当食いながら見ていたのじゃが、肝心の合戦は佐吉のほうが負けてしもうた。佐吉の主は家来とともに逃げるとき落人狩りに遭(あ)って主と何人かが殺され、生き残った者は連れていかれたらしい。佐吉が主のそばにいたことは間違いないと思うが、殺されたのか、連れていかれたのかはわからん」

「佐吉は生きておろうかの」
「どうかのう、負けても勝ち組に雇われて出世する者もおる。佐吉にその運と才覚があれば、じゃが」

 襖の向こうの廊下で足袋がすれる小さな音がした。
母が廊下に出て見ると春の着物の裾がちらっと見え、すぐ消えた。
父と鍛冶屋に言った。
「春が聞いておった」

父がこぼした。
「こりゃ困ったのう、生死すらわからぬでは春の頑なな態度も変わるまい。どうせなら佐吉には死んでほしかった」
「そうじゃ」
と母もうなづいた。

鍛冶屋が問うた。
「約束の二年はまだ一年先じゃろう。あんたたち、どうでもお春を嫁にいかせたいのか」

母が言う。
「二年の約束なんか当てにはなりません。春はもうじき二十歳です。また一年経って迎えにこんかったらわたしゃ泣いても泣ききれません。わたしが生んだ娘です。はよう良き相手と一緒になって幸せになってほしい」

父も言う。
「佐吉の正体は今もわからん。よく働き字を書かせても達筆じゃったが、百姓の次男という話しは嘘じゃったし、あれこれ嘘が多かった。事情があったとしても春の婿にはさせられん。おまけに生死すらもわからぬでは話しにはならん」

鍛冶屋は父と母の顔を交互に見ている。
「どうした」
と父が言うと鍛冶屋は小さな声で言った。

「お春について佐吉のことをあきらめさせる策がある。聞くか」
母は襖と障子を開け放って言った。
「これなら春も近づけぬ、その策、聞かせてください」
「うん、わしも聞きたい」

三人は膝がくっつくように三角になって向き合った。
鍛冶屋が言う。
「佐吉の生死がわからぬことをお春は聞いておった。なら佐吉をな、死んだことにすれば良いのじゃ」

父と母は顔を見合わせた。
「そんなこと出来るか」
「ああ、銭が少々かかるがな、出来る。勝ち組に連れていかれて首を取られたとなれば誰も疑わぬ。それを見たという証人をでっち上げるのよ。あとでばれても嫁にいっておればこっちのもんじゃろう」

「なるほどな」
父と母は顔を見合わせた。
「お前がそういうことを考えるとはの、そういえばお前は芝居が好きじゃったの」
「うん、伊達に小屋通いはしてはおらん」

父は少し不安な気もしたが、他に策はない。
「よし、任せる、当面の銭はすぐに出す」
と父は言った。
三人の話しはまとまった。
佐吉を仏にすることになった。

 一方の春はその日から様子がおかしい。
顔色が優れず、いつもの明るさもなく、ふさぎ込んでまともに飯も食べない。
母が見ると好きな組み紐を丸めては解き、丸めては解きを繰り返している。
生死のわからぬ佐吉のことを想って心が定まらないことは確かだ。

母は
「春は決めかねておる、いまのうちなら芝居をしても信じそうじゃ」
と父に言うと、父は事を急ぐように鍛冶屋に知らせを出した。

 梅雨が明けたころ、夏の日差しの中を鍛冶屋がやってきた。
今度は二人、連れは鎧などをつくる具足師だ。

鍛冶屋が父と母に具足師を紹介しながら言った。
「こいつはあの戦をこの目で見ておる。佐吉たちの軍の様子や落人狩りの様子もある程度は見聞きしておる。まるで知らぬでは何か問われても返事ができんからな」

「で話しの出来は大丈夫か」
と父が聞くと具足師は言った。
「佐吉とやらのことはまったく知りませんが、背は六尺近くで鼻筋が通り、左ほほに二寸ほどの刀傷があると聞きましたから大丈夫です。筋書きも決めて何度も何度も稽古しましたから」

「ああ稽古の、そうかァ」
と父は言ったが、不安そうにもある。
万が一春にバレたら親子の間も壊れかねない。

母が言う。
「早い方がええ、すぐに始めませんか」
客間に二人を座らせ酒と肴、食事も出した。
遅めの昼食が始まった。

父は女中に言った。
「春を呼んでくれ、鍛冶屋殿がお連れと来ておる。ご挨拶をとな」
春は佐吉のことが聞けるかもとすぐに居間に来た。

「おお、お春殿は見るたびにかわゆうなるの」
「お久しゅうございます」
と春は少し笑ったが、いつもの笑顔ではない。
佐吉の話しがあるかないか期待と不安が交差している。

具足師も姿勢をくずしながら言う。
「なるほど娘御は笑顔がええ、ええ相手が見つかるとええですなァ」

父が言った。
「お二人はこれからどちらへ」
父が誘うように言うと鍛冶屋は具足師をチラッと見て言った。
「こいつと大阪に行く途中じゃが、こいつが戦さのあと佐吉を見ておったと知ったので立ち寄ったのじゃ」

春の顔が変わった。
その春の横顔を見ながら具足師は言った。
「佐吉は確かに見ました、もうこの世にはおりません」
いきなりズバッと言った。
春の顔の血の気がスッと青くなったが、まだ半信半疑だ。

父が言う。
「佐吉は死んだのか」
春は具足師をにらむように見つめている。

具足師は春と目を合わせたが構わずトドメを刺すように言った。
「ああ、佐吉はもうこの世にはおりません。首も見ました」
春はうつむき、身体が震え始めた。
小さな声で「嘘」とつぶやいた。
具足師に聞こえたのだろう、
「わしが嘘をつく理由がない、佐吉はもう仏じゃ」

母は春をみつめている。
わが娘に自分がどれほど残酷なことをしているか、いま気づいた。
母は動揺し、どうするか必死で考えている。
父を見ると、我慢せよとばかりに首を横に振った。
この際だから一気にケリを、と思っているようだ。

具足師は続ける。
「佐吉のいた軍が負けたのはご存じでしょうが、佐吉はその主とともに逃げる途中で落人狩りに捕まりましての。その落人狩りをやっていた百姓の何人かは具足つくりの縁で昔からの知り合いです。戦さの日の前後はその百姓の家におりましたので」

母は話しを止めたいのか目を赤くしながら尋ねる。
「落人狩り、お百姓もやってるんですか」
「ご存じなかったか、やっておりますとも。褌の剥ぎ取りから首取りまでな、侍への日頃の恨みもあるし、銭や褒美も手に入るとなりゃ一家総出でもやりよります」

具足師が続ける。
「その百姓が背中に荷を背負い野良着に血をつけて帰ってきよった。聞くと落人狩りをやってきたと言う。そしてこう言うたのです。『明後日の朝、あいつらの斬首があるから見ていかんか』と言う。

わしゃ二晩泊まって見に行きました。
その朝、河原に引き出されている五人を見て腰が抜けるほどおどろきました。ありゃ佐吉じゃないか、まさかと思ったが左ほほの傷もはっきり見え、確かに佐吉でした。

後ろ手にくくられ、じっと目をつむって河原の石ころの上に座っておりました。
思わず「さきち」と声をかけると顔がピクッと動きましたが、目は開けませんでした。
覚悟していたのでしょうな。
 
春はまだ信じたくないようだ。
具足師は春の様子を見て黙った。
しばし沈黙が続くと父が具足師に向かってあごをしゃくった。
具足師は話しを続ける。

「佐吉は最後に斬られました。すでに辺りは血で真っ赤、佐吉はその血の上に座らされると足軽二人が佐吉の髪を引っ張って首を前に伸ばしました。
と同時に首斬り役が掛け声とともに一気に刀を振り下ろしました。

血しぶきとともに佐吉の長い黒髪が扇子のようにパーと広がってな、首は四五尺飛んで河原にコツンと落ち、コロコロッと転がって止まりました」
春の身体が震え、顔はくしゃくしゃだ。

父も母も鍛冶屋も「余計なことを言うな」とばかりに具足師を見たが、もう酒が回っている。
芝居の筋書きはこの辺りまでだったらしいが、酒の勢いで具足師は勝手に話しをつくり始めた。

春はうつむき、小さな声で「うそ、うそ」と言いながら泣き始めた。
鍛冶屋が目で合図するが具足師は止まらない。

「首は髪を縄がわりにして辺りの藪の枝にぶら下げられました。でかい干し柿のようじゃった」
それを聞くと春はとうとうウワーと大きな声で泣き出した。
母はうろたえ父は鍛冶屋の腕を引っ張り鍛冶屋は具足師の腕をつねった。
だが具足師は止まらない。

「いやあ見物人も多くての、えらい騒ぎでした。さらし首の髪には紙がはさまれての、佐吉には紙に『黒田佐吉』と書かれておりました」

鍛冶屋があわてるように父に問うた。
「黒田は佐吉の本名か」
父は言った。
「そりゃ知らん」

春の顔から涙がこぼれ、膝の上にある手の甲はびしゃ濡れだ。
母ももう後戻りできない、意を決したように言った。
「佐吉がのう、死んだか。南無阿弥陀仏・・」

具足師はまだ言葉を続ける。
「首から下も河原にそのまま転がされましてな、酷い有様でしたが、わしゃそれとなく遺骸を見にいくと・・・・」
と言ったところで父が
「もういい」
と怒鳴ってやめさせた。

春はだっと席を立って自分の部屋に戻った。

鍛冶屋が言った。
「お前、余計なことまで言うて。相手は十九の娘じゃぞ、かわいそうにな・・」

「ちと効き過ぎたかの、そう言われてもな。頃合いがわからんでの。わしも芝居は好きじゃが、観るのと演じるのとではやはり違うわい」
他人事だった。
具足師は刺身をつついている。

父と母と鍛冶屋は沈痛な雰囲気になったが、しかしいまさら引き帰せない。
父は(何よりもこれは春のためだ。わしの一生に一度の大嘘だ、許せ春)
と思っている。

母は春に本当のことを言おうとしたが、それではまた元通りになり、今よりも春は頑なになるだろう。
(これでええ、これでええ、春のためじゃ、辛抱せよ春よ)

父は
「今夜は春の部屋のそばに女中を二人おいて見張らせよう、万が一ということもある」
母は春の様子を見に行った。
「芯の強い子じゃが大泣きしておる」

鍛冶屋が言う。
「若いでの辛かろうが、泣くだけ泣いたら気も落ち着きますし、腹も減る。泣かせておきなされ」

その夜、春は夕餉もとらずに部屋に閉じこもったままだ。
明くる朝のこと、騒動が起きた。
いつの間にか春の姿が消えていた。
女中は廊下の両端にいたが春は縁側から草履もはかずに裸足で出たらしい。

宿でそれを聞いた鍛冶屋と具足師は顔色が変わった。
一緒になって探すが見つからない。
「えらいことになった、わしらはとんでもない罪を犯したんではないか」
具足師は二日酔いで何も言わない。

春は夕刻になっても見つからない。
番所の役人も動き始めた。
そして夜が明けた朝方のこと。
若い百姓が「お春さんが見つかりました」と大声で店に飛び込んできた。

店は騒然となった。
「どこへおる、どこにいた」

若い百姓は店の玄関で父と母の顔を見るとしばし黙った。
「どうした、どこにいる、なんで黙っておる」
父と母はそう言いながら最悪の事態を察した。
母は大声で泣きながら上がり框にへたり込んでしまった。

若い百姓は顔を少し上げ、父の胸元の辺りを見ながら言った。
「川の下の土手に流れついていたそうにございます。すでに息はなかったそうにございます」

あちらこちらですすり泣きが聞こえてきた。
母は奥へ走った。
父は泣きそうになるのをこらえながら言った。
「春を迎えにいく、人手がいるで頼むぞ」
戸板を二枚と蓆(むしろ)を数枚、縄も持って十人ばかりが川の下のほうに走って行った。

 春は土手の柳の陰に移されていた。
茣蓙(ござ)が敷かれ、蓆がかけられていた。
父が蓆を取ると長い黒髪が春の胸にまとわりついていた。
父は号泣し、春を抱き起こして春の顔を抱きしめていた。

役人も数人来ていた。
着物の裾は乱れないように飾り紐で縛られていた。
春は飾り紐が好きで折にふれては何本も集め、見ては楽しんでいた。
中でも一番好きな飾り紐をよく人に見せては喜んでいた。
その飾り紐を数本つないで足を縛っていた。

役人が言った。
「着物がはだけて乱れないように裾を自分で縛ったのであろう。町家の娘であるのに、覚悟の上とはいえの・・、さすが奈良屋の娘御じゃな、感服した」
役人は父を多少は慰めようとして言ったようだが、父がそう受け取ったかどうかはわからない。

 その日の夕刻、通夜の始まる前に役人が乞食を一人連れてきた。
「ちと話しがある。この乞食が娘御の最後を見ておる。このようなときじゃが聞いてやってくれんか。汚れて風呂にも入らず臭いのでな、庭の東屋を借りたいが」

父と母と役人二人と乞食が庭の東屋に移った。
女中が急いで茶瓶と湯呑みをもってきた。
「これはどうも、私のようなものに、ありがとうございます」
「見たことを話してみよ」

乞食は茶をひと口飲むと話し始めた。
「あのとき、橋の上に置いてある蕎麦屋の屋台の庇の陰におりました。月も星も無い夜で暗く、こちらの娘さんはすぐ横にこられましたが、わたしには気づかれませんでした。泣かれておりましたしな」
役人が応える。
「うん、それで」
父と母は、身じろぎもせずに聞いている。

「橋で泣く者は女でも男でもよくおります。家では泣けぬのでしょうな。またかと思いながら見ておりました」
「うんそれで」

「するとあの方は欄干に身体を預けて闇の空を見上げながらこう言われました。
『あなたがすでにそこへおられるとは春は思いもしませんでした。春をいますぐそこへ呼んでくだされ・・・呼んでいただけぬなら今すぐ春がそこへまいります』と言われました。すぐに袖から紐を出すと一気に裾を縛り、声も上げずに欄干から転がるようにしてあっという間に川に落ちました。おどろいて下を見ると川は闇の中で何も見えませんでした」

役人が言う。
「すぐに番所に行ったが番人がおらん。真夜中で乞食ではあるし、どうしょうもなくて番人を待っていたそうじゃ。そのうち夜が明けて娘殿が見つかったのが先じゃったらしい」

乞食は銭と酒をもらい、何度も頭を下げながら帰っていった。

その後、父も母も一気に歳をとったように見える。
一人娘を死なせた罪も背負っている。
「わしが殺したようなものじゃ」
と父のひとり言。
父は息子を呼び戻して店を任せた。

春を騙したことは役人に言った。
夫婦で咎め(とがめ)を受けることは覚悟していたが、役人は言った。
「左様か、聞かんかったことにする。その話し、鍛冶屋具足師ともども冥途までもってゆけ。わしらも忙しいのじゃ」

 父と母は檀寺の墓に春の卒塔婆を立て、近くに小さな家を手に入れて住み始めた。

年が替わり、春の月命日に父と母が寺にやってきた。
住職と三人で墓に向かっていると、寺の小僧が追いかけてきた。
住職に会いたいと客が来ていると言う。

住職は小僧に聞いた。
「どなたか」
「馬に乗ってこられました。側に供の方がお二人。背の高い方で左ほほに二寸くらいの刀らしき傷があるお侍です」
父は母の肩を抱きよせた。

約束の二年まであとわずか残っていた。


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