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チョコと女

九月八日  

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義母が来てチョコレートをたくさん貰う。勢いよく食べる。胸焼けするまで食べる。それでもなお半分近く残っていた。全部食べて死ぬ程苦しくなるのは明らかだ。
怖くなったので夫に私の目の届かないところにしまってくれと懇願する。チョコは無事にどこかに消えた。



雨なのか曇りなのかはっきりしない天気で嫌になる。体が重い。
こういう日は松田龍平のことを考えるしかない。最近は「大豆田とわ子と三人の元夫」を見ている

チョコレートを食べて松田龍平ばかり見るわけにもいかないので外に出る。大須商店街へ買い出しへ出た。
大須商店街には地下鉄上前津駅から大須観音駅を繋ぐアーケードがあり雨でもほぼ濡れないで過ごせる。
肉が安いスーパー。野菜や魚が安い八百屋。流行りものが売っている食べ物屋。きれいな古着屋。
若者。老人。酔っ払い。地元の人間。県外や海外から来る人間。お洒落さん。パジャマ姿のおばあさん。野良猫。鳩。などなどが程良く混ざり合っている。
古着屋や中古カメラ屋をうろつき、喫茶店で休憩し、スーパーと八百屋で食料を買って帰るというコースが多い。
デートや友人と遊ぶときは「とりあえず大須集合で」が名古屋の定番だろう。

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十九歳から二五歳まで大須に住んでいた。1Kのマンションで猫と暮らした。
十九歳にもなると手首は切っていなかったが、何故か動けず、数日間寝たきりになることが多かった。
食事がめちゃくちゃだった。
気が向いた時に鶏肉を焼いたり野菜を炒めたりする程度で、お菓子とジャンクフードと煙草と酒が大好きだった。
ちゃんとした食べ物を買うお金が無かったのに、煙草は買っていた自分を殴り飛ばしたい。そして働いているのに真っ当な賃金をくれない所などさっさと辞めれば良かった。
しっかりと三食食べて、煙草もお酒もほどほどにしていれば、二十代前半をほぼ寝て過ごすことにはならなかったのだろうか。
しかし当時の私に出来ただろうか。出来る環境だったとしてもやらなかっただろう。いつもそうなのだ。
あの時真面目に取り組んでいれば今は違っただろうか、と後悔ばかりである。

九月九日

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先月から膝を痛めている。
整形外科に行ったら骨盤が歪み、腰が歪み、膝が痛んでいるのだと言われる。
重たいものを持ったか?と聞かれたので、七十キロのものを少々・・・と答える。筋トレを休むよう言われていた。
今日行ったところ良くなっていると言われる。まだしばらくは筋トレは禁止らしい。
つまらんな、と思うが我慢する。膝を交換するわけにもいかないし。
植物性の脂を意識して摂るようにも言われる。精神が安定しやすいらしい。水もたくさん飲むように、とも。

九月十日

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歯医者に行く。
十年以上通っている歯医者だ。前の日記に書いた通り真面目に通っている。
先生のことが好きだ。優しくて丁寧でたまに面白い。麻酔や切開で痛くした後はめちゃくちゃに優しくしてくれる。帰るときは更に褒めてくれる。これは私だけではなく他の患者さんに対しても同じ。信用出来る人でよかった。治療をしているという達成感もある。
次回行くときに歯が入るらしい。

今日はジェーン・スーさんと堀井美香さんのPodcast 「over the sun」配信日だ。
お二人が「自分をパンに例えると?」という話題で盛り上がっていた。私はなにパンだろう、と考えながら眠った。

九月十一日

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まっ茶さんと撮影。
念願のピクニックをする。我が家は自然光がきれいに入るのでヌードも撮らせてもらう。

女性を撮ることが好きだ。でも女性なら誰でも良いわけではない。
好きじゃないと可愛く撮れない。
好きじゃない人、よく知らない人を撮ると実際の本人の造形がかなり美しくても微妙な写りになる。

「好きだ!」と思いながら(あるいは口に出しながら)撮るのと、思っていないのとではどう違うのか説明するのは難しい。他人から見たら何も違わないのかもしれない。

まっ茶さんは大好きだし尊敬している。心の持ち様も強い。その見た目だけでなく内面も好きだ。たくさん撮りたい。

午後は東京クロッキー会主催のオンラインクロッキー会でモデルをする。
自宅は太陽が出ている時間帯はどの部屋も明かりが入る。きれいな光だった。

九月十二日
コバキヨの次元大介引退をやっと受け止める。供養と称してアニメ鑑賞。

九月十三日

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モーニングに行く。
朝の女子大(※)は楽しい。糞溜まりの街も朝ならきれいに見える。
※女子大小路。名古屋の繁華街である栄エリアの南東一帯を指す地名。ガラが悪いことで有名。

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午後はバッティングセンター。
バットに当たったのは十二ゲーム中五回だった。ばかすか打ってみたい。

「over the sun」リスナーの友人に私はなにパンだと思うか聞いてみた。
自分ではウエハースサンドだと思う。
好きな人は好き。ほんのり甘くて美味しい。朝ごはんかおやつに出てくると嬉しい。けれど食事の主食にはなれない。口の中の水分を奪っていかれる。
友人は「あなたもクロワッサンだ」と言う。ラジオで堀井さんもスーさんにそう言われていた。随分良いものに例えてくれて嬉しくなる。友人はパン占い師になった方が良い。

九月十四日
先週から始まった裸婦デッサンの固定ポーズの二回目。
皆の絵が完成してこのポーズが終わる頃には季節は変わっている。
いつもは半年近く一つのポーズが続く。正月を跨ぐだろうか。大好きな教室なのでいつまでも呼んでもらいたい。

ポーズ中、絵を描く人たちを目の端で見ながら「この人はなにパンだろうか」と考える。
あとメットガラに行きたい。ツ・カーダシアンとして招待されたい。
頭の中がパンとゴージャスな衣装でいっぱいになり、良い具合に収集がつかなくなってきたあたりでタイマーが鳴る。
散り散りになった空想は二度と形成出来ない。

九月十五日

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さつまいもにバターを乗せたものを食べる。温かいカフェオレも付ける。素朴な味で好きだ。こんなに美味しい組み合わせは無い。
美味しくて嬉しくなったのでシメに醤油バターご飯も食べる。お腹いっぱいで小一時間動けなくなった。
ぽんぽんになったお腹と猫を撫でながら寝転がっている。幸せ。

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