ハク。の「自由のショート」のさりげない衝撃について。
まずタイトル。「自由」という言葉も「ショート」もありふれた言葉です。でも組み合わせると突然独創的になります。深みが増します。インパクトが生まれます。
タイトルからして衝撃的ですがこの4分弱の一見シンプルで少しノスタルジックなメロディーと詩的な表現が散りばめられた名曲の中には革新的とも言える仕掛けがこれでもかと詰め込まれてます。
一行目からすごいです。「満月が速い日」です。そして「走ってるんじゃないかな」と続きます。日本語の歴史の中でこんな表現がされたことはかつてあったでしょうか。あったかもしれませんがロックバンドの歌詞の一行目からなんですよ。いきなりこの曲に新鮮な風が吹きます。
そして「マスカルポーネ」、「メガのお酒」、「女3人」というキラーワードという言い方すらも浅はかに思える強烈な言葉が連射されます。それもさりげなく詩的に。
更には「夏熱と秋風」。なんという風情。風情という言葉が正しいのか否かわかりませんがこれだけで主人公の心情まで浮かんできます。そして繰り返す事でその情景が強くなり、そして、ここです、私が最も衝撃を受けたのは「夏熱と秋風がかきまぜる」この意味合いもさる事ながら「秋」と「かき」と素早く韻を踏み譜割り、リズムを変えて歌う。ここにやられました。心にしっかり刻み込みこまれました。
そして間奏では意表をつく不穏なコードを加え、言い方を変えると苦味を足して、なんとなく聴いてる人にもただの「爽やかな良い曲」を超えたものと強引に感じさせます。
そして決定的なフレーズがやってきます。「僕は今を絶対、そう、絶対噛み締めて」です。始めて「絶対」という強い言葉がやってきます。詩的で素敵な言葉が連ねられたここまでの流れの中で「絶対」を繰り返す。衝撃的です。しかもさりげない衝撃。こんなの初めて聴きました。
「このまま虚しさをさらってくれないか」の後にも「くれないか」を繰り返す。「混ざる」という言葉も繰り返します。このそれぞれのフレーズに微妙な意味合いやニュアンスを変えてさりげなく繰り返すことで優しく歌ったままで強烈な印象、エモーション、歌の力を存分に発揮してる。さりげなく。
名曲だと思って聴いていたら衝撃的な歴史的名曲でした。一年前のリリースだったんですね。遅くなりましたが出会えて良かったです。
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