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IMF:緊縮財政はパンデミックの財政への影響の緩和に不可避ではない (2020年10月14日、Financial Times)

昨日はフィナンシャル・タイムズの報道を受けて、「あのIMFが緊縮財政は必要ないと発言した!」とTwitterが盛り上がっていました。私もクララが立ってI字開脚した並の衝撃を受けましたが、翌日の今日お昼現在、日本の報道では同じ情報が全く出てきてません。翻訳に時間がかかっているだけかと思いきや、IMFが出した「財政モニター」の内容自体は報道され始めています。しかし、どの記事を漁っても、あのネオリベヤクz…じゃなかったIMFが緊縮財政は必要ないと発言したとされる文言が見当たらないのです。これ、意図的に伝えないつもりかね?ということで、仕事しないカスゴm…じゃなくてマスコミに代わって英文記事の内容を下記の通り紹介します。
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『IMF:緊縮財政はパンデミックの財政への影響の緩和に不可避ではない』

(原文リンク: https://www.ft.com/content/722ef9c0-36f6-4119-a00b-06d33fced78f)

 自由に借入ができるほとんどの先進国は、新型コロナウイルスの大流行後、財政の健全性を回復するために緊縮財政を行う必要はないだろう、とIMFは10年前の助言を覆す形で述べた。
 借入の継続を選択できる国は、この10年半ばまでに公的債務を安定させることができる可能性が高いと、IMFの財政政策責任者であるVitor Gasperはフィナンシャル・タイムズに語った。つまり、増税や政府支出の削減は必要ないということである。
 しかし、金融市場へのアクセスが限られている国は、財政戦略にもっと注意を払う必要があると、Gasper氏はIMFの年次財政モニターの発行に伴うインタビューで警告した。
 世界の公的債務は2020年に世界の国内総生産のほぼ100%と過去最高の水準に達する可能性があり、今年のほとんどの先進国の国民所得に比例して政府債務が大幅に増加するとIMFは予測する。
 しかし、2025年までに、全体的な財政赤字は政府支出の削減や増税を必要とせずに、パンデミック前にIMFが予測したレベルと同等になるだろうと述べた。
 先進国経済へのこうした見通しを支える重要な要素は、借入コストである。 先進各国の政府債務の償還コストは、その国の予測される成長率をはるかに下回るとIMFは予測している。
 これにより、より安価な借入金が危機の結果として予測される成長の鈍化と税収の低下を大幅に相殺することを可能にする。
 Gasper氏は、2025年までに、ほとんどの先進国における「景気循環調整後の基礎的財政収支の赤字は増大する見込みだが、それは低金利の支払いによって大部分が補われる」と述べた。
 その結果、金融市場から自由に借入ができる国では予算を統合する必要はない、とGasper氏は付け加えた。 「IMFの予測における(公的債務)比率は安定し、最終的にはわずかな低下に至るだろう。これは、コロナ不況が債務の一時的な急増であり、低金利で債務の動態が安定することを示している。」
 IMFの発言は、過去10年間に起こったような財政の引き締めではなく、景気後退に投資で対応する各国に青信号を与えるものとして、米国およびヨーロッパ全体で取り上げられるだろう。
 IMFのアドバイスは、10年前の金融危機に際して発出した声明を覆すものとなる。当時は「多くの国が今後、大幅な歳出削減の必要性に直面している」と警告していた。
 その後、IMFの内部監査人は、2010-11年に緊縮財政を提唱するには早すぎたと評価し、現在に至ってはそのガイダンスを大幅に改訂している。今回は、各国の財政の健全性を検討する前に、力強い回復を促進するためにさらに多くのことを行う必要があるとIMFは強調した。
 「財政支援を時期尚早に撤回するにはリスクがあるとIMFは考えており、選択の余地のある政策立案者は、回復が健全な軌道に乗り、コロナによる長期的な傷跡の影響が制御されたと見なされるまでは非常に段階的な対応を行い、財政支援を維持することを強く勧める」とGasper氏は述べた。
 良好な債務状況が予測される背景には、パンデミック後の経済成長の力強い回復への見込みと、経済成長率よりはるかに低い金利がある。ただ、この二つの状況の組み合わせは保証されているわけではなく、財政予測の不確実性は依然として非常に高いとGasper氏は強調した。
 さらに、借入能力がそれほどない新興経済国は「拘束力のある財政的制約」に直面しており、コロナ危機の際の追加の財政支援の費用と便益を注意深く評価する必要があるとIMFは述べた。
 中国とアメリカについては、その大規模な公共支出の計画に対して増税の計画がほとんどないことを考えると、この10年半ばまでに公的債務負担を安定させる可能性は低いという見方を示した。(以上)

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