見出し画像

母の卒業アルバムに載っていた、名もなき詩の作者を探している

「情は春の如く温かく 思いは秋の如く清くありたい」

——70代の母の、高校の卒業アルバムに載っていた名もなき詩だ。

近年、母は物忘れがひどくなった。数分前に話したやりとりを1日に何度もする。それでも、特定の出来事はよく覚えている。毎日のように口にするのが、高校卒業後、大手デパートの呉服売り場に就職したことだ。

「●●さん(母の旧姓)はやればできるから」と担任教諭に勧められて面接を受けたところ、見事採用。祖母は鼻をふくらませてよろこんだと、うれしそうに話す。

そんな時、押入れから取り出すのが、高校時代の卒業アルバムだ。懐かしそうにページをめくっては、こうつぶやく。

「この詩、いいわね。誰が書いたのかしら」

ポケットからスマホを出して検索するも、それらしき情報は出てこない。恐らく、クラスメイトか担任の先生が書いたのだろう。それでも、もし、詩に詳しい人がいて心当たりがあれば、作者の情報がほしい。

何度も繰り返す、母の疑問に答えられればと思う。

「へえ、そうなの」

そんな一言で終わってしまうかもしれないけれど。「さあね、誰だろうね」と返した時の少しだけさびしそうな顔に、胸が痛むのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?