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【ゲームレビュー/私たちの記憶】迫害の歴史を駆け抜ける少年少女

レビューを簡潔にまとめ!
 これはとある男の子と女の子の友情の物語。そして、悲惨な史実に基づく物語。ポーランドで起きたナチスドイツによる迫害を描いたパズルアドベンチャーです。でも、子どもでもプレイできるくらい、カジュアルでSFチックなデザインなので多くの方にプレイしてほしい。兵士の目をくぐり抜け、多彩な謎を解き明かし、少年少女が向かうは自由か希望か。エンディングは思わずグッとくることでしょう。

基本情報
英題:My memory of US
シングルプレイ
言語:公式日本語対応
配信プラットフォーム:PC
価格:1,890円(2021/08/23時点)

【どんなゲーム?】

少しギョッとしてしまうかもしれませんが、このゲームはかつてのナチスにより迫害を受けたユダヤ人の悲惨な歴史を描いた作品です。実在した人物をモデルにしたキャラクターが何人も登場します。

史実に基づいた迫害、強制連行をわりとそのまま描いてました。ゲットーなんかもこの時代に登場した収容所ですね。ゲームの中では赤いペンキで塗られてしまっただけで迫害の対象にされてしまいます。

しかしご安心を。ゲームは全年齢向けにカジュアルな表現になっていて、少年少女が互いに協力し合って、祖国を支配するロボット王国から脱出するパズルアドベンチャーです。

2人にはそれぞれ特徴があり、例えば少女は走ることが得意で、一方、少年は隠密行動が得意です。二人の特徴を活かしながら見つからないように敵兵士の視線をかいくぐっていきましょう。

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【どんな人におすすめ?】

エンディングまでは4時間ほどでした。パズルはフードコートのようにバリエーションに富んでいてオーソドックスなドアロック解除からアクション要素を伴ったパズルまで様々な謎解き楽しめます。さらにはレースやシューティングのおまけ付き。

シリアスな印象を受けてしまうかもしれませんが、しっかりとパズルアドベンチャーしているのでゲームとして満足できるボリュームです。実際、ゲームを始めると重苦しさは全然感じないと思います。

そして各エリアにはおまけ要素の「思い出」が散りばめられています。あまり難解な場所にはないのでなるべく集めていってほしいですね。「思い出」には作者の想いが詰まっています。

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【ゲームを終えて、考えたこと】

すでに触れたとおり、このゲームは前情報なしでも昔のナチス支配下時代の惨劇を描いたものだということが分かる内容に仕上げられています。

少年少女が住む国を「ロボット王国」が支配するSFな物語ですが、その国王も歴史上の人物をモデルにしています。冷酷非道だからロボットにしたのかもしれませんね。「思い出」を読むと作者もあまり隠すつもりもないみたい。

繰り返すべきでない過ちや悲劇、届くことのなかった苦しみや怒りは、目を背けたくなるような事ばかりです。それをかみ砕いて没入感を生み出せるのはゲームならではなのかもしれません。

モノクロなビジュアルに映える赤色も特徴的。ゲームでは赤色に塗られただけで差別の対象となり、やがて強制連行されてしまいます。おそらくかつて「ユダヤ人は赤毛である」とされていたことに基づいているのでしょう。

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「「赤い民衆は良くない。」もう大声で言ってもよかった。その概念はいったいどこから来たのか。」

このゲームで最も印象に残ったセリフです。私たちは過去から学び未来に目を向けなければいけません。

重い話になってしまいましたが、本作は作者の想いがたくさん感じられる作品です。どんな気持ちでこのゲームを作ったのかなーって考えるとゲームをもっと楽しめると思います。

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