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人と地域を元気にする地産地消の給食改革!【第1弾=岡山県笠岡市①】

地産地消で病院食が美味しい!①

【この連載について】
この連載は、総務省地域力創造アドバイザー/食環境ジャーナリストの金丸弘美さんが、地産地消の給食に取り組む日本全国の画期的な事例を取材したルポルタージュです。
第1弾は、岡山県笠岡市の医療法人緑十字会笠岡中央病院で取り組む給食を
全4回でまとめていきます。
    第2回      第3回      第4回

▼毎月1度は地元の食材だけの料理を提供

 岡山県笠岡市笠岡・医療法人緑十字会笠岡中央病院  を訪ね「地産地消御膳」をいただいた。
 谷本牛と明治牛蒡の混ぜご飯(芳井町・佐藤さんの無農薬野菜と5つ星お米マイスター坂本清士さんの笠岡産米)、笠岡沖産のチヌの塩焼き、大根なます(道の駅「笠岡ベイファーム」の干拓産の金時ニンジンと大根を使用)、みそ汁(JA女性部の笠岡味噌、具は「せのお水産」の岩海苔「幻紫菜(げんしさい)」)、デザート(「ストロベリーファーム石田」のイチゴ)、お茶(白石島・桑茶)という、笠岡市周辺の食材を揃えたものだ。

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写真:地産地消御膳

 料理には笠岡諸島の風景の写真の入ったお品書きに生産地の地図までが添えられている。廊下の壁には生産者の顔写真も紹介されている。

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写真:壁に掲示された生産者の写真での紹介

 料理は病院内の厨房で作られる。ちなみに、この日の食事代は400円。
 毎月1回は笠岡市の地元の生産者と連携した「地産地消御膳」として提供している。
 お品書きは、生産者の紹介写真を入れて栄養士さんが手づくりしている。
 患者さんには地元の人が多いことから、「ああ、あの農家さんか」とか、「あそこの水産会社が作っているんだね」とか会話も広がる。

▼地元の生産農家を巡りコミュケーションを作った

 この日、笠岡中央病院での現地研修会参加メンバー30名あまりと食材を提供している三か所の現場にもうかがった。コーディネーターは笠岡市産業部農政水産課参事・守屋基範さん。あとでうかがったところ守屋さんほど現場に行っている人はいないという話しだった。
 一か所目は笠岡湾干拓地でイチゴを栽培する農家石田育生さんの「ストロベリーファーム石田」。10種類ものイチゴを栽培している。「じゃらん」が新たに創った農業体験サイトに登録をしていることで、県外から多くの人達がイチゴもぎに訪ねてくる。

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写真:管理栄養士・粟村三枝さんとイチゴ農家・石田育生さん

 二カ所目は海苔の生産をする妹尾孝之さん、妹尾祐輝さん親子の「せのお水産」。

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写真:海の現状を紹介する妹尾祐輝さん

 温暖化の影響で海苔がかつてのように養殖できない状況になっているという。そんななかで環境の変化のなかでも養殖ができる岩海苔に取り組み、それが病院の食事にもでてきた「幻紫菜」。磯の香りと太陽の光を存分に蓄えたようなうま味のある濃藍色の美しい海苔だ。

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写真:岩海苔「幻紫菜」

▼生鮮3品が揃う「道の駅・笠岡ベイファーム」の直売所

 三カ所目は池田博之駅長の「道の駅・笠岡ベイファーム」。
 野菜・果物・魚介類など生鮮品がずらり。とくに魚は海の傍だけに新鮮このうえない。これらの生産者のところに緑十字会グループの栄養士7名が、お昼後の空いた時間をうまく使い交替で訪ねている。

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写真:道の駅・笠岡ベイファームの店頭には新鮮な魚が並ぶ

 コミュニケーションも十分にできていることから「地産地消御膳」の給食のときには、生産者から直接食材が届けられる。

*関連リンク

 医療法人緑十字会笠岡中央病院  http://www.midorijujikai.or.jp/
 じゃらん(ストロベリーファーム石田紹介ページ) https://www.jalan.net/kankou/spt_guide000000192458/
 道の駅・笠岡ベイファーム https://k-bay.jp/

(参考資料には、『地産地消コーディネーター育成研修会(岡山会場)現地視察 研修資料』2019・12・19 制作・粟村三枝が使われています)

プロフィール
金丸 弘美   総務省地域力創造アドバイザー/内閣官房地域活性化応援隊地域活性化伝道師/食環境ジャーナリストとして、自治体の定住、新規起業支援、就農支援、観光支援、プロモーション事業などを手掛ける。著書に『ゆらしぃ島のスローライフ』(学研)、『田舎力 ヒト・物・カネが集まる5つの法則』(NHK生活人新書)、『里山産業論 「食の戦略」が六次産業を超える』(角川新書)、『田舎の力が 未来をつくる!:ヒト・カネ・コトが持続するローカルからの変革』(合同出版)など多数。
 最新刊に『食にまつわる55の不都合な真実 』(ディスカヴァー携書)、『地域の食をブランドにする!食のテキストを作ろう〈岩波ブックレット〉』(岩波書店)がある。
*ホームページ http://www.banraisya.co.jp/kanamaru/home/index.php 



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