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人と地域を元気にする地産地消の給食改革!【第1弾=岡山県笠岡市②】

地産地消で病院食が美味しい!②

【この連載について】
この連載は、総務省地域力創造アドバイザー/食環境ジャーナリストの金丸弘美さんが、地産地消の給食に取り組む日本全国の画期的な事例を取材したルポルタージュです。
第1弾は、岡山県笠岡市の医療法人緑十字会笠岡中央病院で取り組む給食を
全4回でまとめていきます。
  第1回    /    第3回    /    第4回

▼ノウハウを連携させる「地産地消コーディネーター育成研修会」

 笠岡中央病院の食事のことを知ったのは、神戸で開かれた農林水産省「地産地消コーディネーター育成研修会」で優良事例として紹介されたからだった。運営は一般財団法人 都市農山漁村交流活性化機構(まちむら交流きこう)が実施している。この事業は国が掲げる地産地消の取り組みを、学校給食・病院食で広げ推進をするというもの。
 実践で行う方々の発表を行うセミナーが開催され、そして実際の現場を訪ねるというものだ。年間2回開催されている。またこれまで多くの経験を持つ人たちが専門家として登録をされていて、希望をする地域には年間3回の派遣でアドバイスをする制度も設けられている。こうした取組をすることで現場のノウハウを連携させて広げていこうという活動だ。
 この研修会の発表で関心をもったのが笠岡中央病院栄養課管理栄養士・粟村三枝(あわむらみえ)さんの報告だった。業者委託で行われている病院の病院食の食材をすべて見直しほぼ国産に全面的に切り替えたという。当時は安価で在庫管理がしやすいという理由から外国産の冷凍カット野菜、加工食品、缶詰などが多く利用されていた。

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写真:研修会視察で取組を紹介する粟村三枝さん

▼医療と福祉を連携させて地域に密着でサポートが理念

 医療法人緑十字会は、1960年(昭和35年設立)。病床数は60床。診療科は、外科、内科、循環器内科、胃腸科、肛門科、整形外科、皮膚科、リハビリテーション科、小児科がある。
 笠岡中央病院を母体に、老人保健施設 、居宅介護支援事業所、訪問看護ステーション、デイサービス、北木島診療所などがあり、姉妹施設としてケアハウス 、小規模特別養護老人ホームなどを擁している。保育所もある。
 医療と福祉を連携させて、看護・介護も提供。入院から在宅のケアまで、トータルにサポートできる体制を作っている。
 給食の現状(昼食の場合)は、患者食40食、入所者食40食、デイサービス18食、デイケア10食、職員食40食、保育所10食。厨房は病院と老人保健施設の2か所あり、それぞれ7人の調理スタッフがいる。給食の運営状況は、日清医療食品株式会社に業務委託している。
 職員数は緑十字会が管理栄養士5名。日清医療食品が管理栄養士2名、栄養士1名、調理師2名、調理員9名だ。

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写真:緑十字会グループの栄養士たち(前列中央が粟村三枝さん)

▼それまでの給食食材は簡単・便利・安いが理由で輸入冷凍加工品だった

 地産地消の食事は、2013年4月岡山県が地産地消の推進 を掲げたことがきっかけ。当時の事務長で、現在、理事・相談役の池田美郎さんが「地産地消をやらんといかんらしい」と言ったのが始まりだ。
 粟村さんたち栄養士さんが「すぐやりましょう!」と実行に移した。
食事は、日清医療食品に業務委託がされている。その会社と徹底的な話あいをもって替えていった。
 取り組みの前から食品偽装や冷凍餃子の殺虫剤混入など、食の問題のニュースもよく報道され、安心安全の食材の関心が高まっていた。また病院備え付けの「意見箱」に患者さんから「美味しくない」という声も寄せられていたという。栄養士さんが積極的に動いた、もう一つの理由は、粟村さんを始め3名の栄養士さんの子供は姉妹施設の保育所に通っていて、美味しく安全なものを食べさせたいという思いも強かった。
「それまでは国産を使うという基準がなく、どうしても扱いやすくて安い食材ということでカット野菜のオンパレードの献立になっていたんです。中国の冷凍輸入品。ピーマンもキノコも、キャベツもカットしてあるものが届いていた。味のついた煮魚、焼き魚も中国産冷凍だった。
 カット冷凍野菜は結構高い。加工した分高くて、生鮮食材のカットしていない野菜のほうが安かった。日清医療食品にスーパーバイザーがいらっしゃって、その方に相談して『価格が抑えられれば、いいですよ』と、そのときはおっしゃってくださった。ところが、その後、異動があった。そうすると冷凍野菜の使用目標があるので、少しでも使ってほしいみたいな言われ方をした。それで調べてみるとカット野菜のなかでもカボチャとかほうれん草とか国産のものが何個かあったんです。そういうものを使うようにしました」(粟村さん)

▼月に一度の「地産地消御膳」は徹底的に国産にこだわる

 給食の献立は1年間の計画になっており、週間で実際に給食に出す献立を決める。日清医療食品の担当者とは、1日ずつの献立の見直しを話しあい要望を出して、1年間かけて国産主体の食材に切り替えた。やむなく揃わないトウモロコシ、いんげん(タイ)、サトイモ、キヌサヤ、グリンピース(中国)は諦めたが担当者も国産野菜の利用を理解してもらえた。
 そのかわり月1回の地産地消の御膳は、地元のものに徹底的にこだわった。
 粟村さんは次のように語る。
 「『地産地消御膳』で研修視察に来ていただいたときの食べてもらった魚、牛肉などはひとつずつ取り扱っている方に2、3か月前くらいから、こんな企画で、これくらいの価格お願いしたいと連絡します。近くになると発注量がこれくらいで確定しそうですといってまた連絡をします。そうすると生産者の方が直接届けてくださる。それをマニュアル化したんです。
  県の条例が出たとき、日清医療食品さんも岡山県産食材を提案してくださった。うちの病院だけでなく、ほかの高齢者施設からもたくさん地元産食材利用の要望があったようです。岡山県はサワラ、黄ニラなどが有名で、提案があり実際使ってはみたんですけど、食べた方からあんまり反応がなかった。黄ニラは笠岡ではぜんぜん食べない。それより笠岡には魚も肉もタマゴもあるから地元のものを使いたいってなった。結果、地元で直接買う方が安かった。仲卸を通さないから安くなるに決まっているんですけど(笑)」 
 ちなみに『地産地消御膳』の食材費用は295円。日清医療食品を通して岡山県産食材で揃えようとすると625円だった。

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写真:筆者も参加した研修会の試食会

*関連リンク

 医療法人緑十字会笠岡中央病院  http://www.midorijujikai.or.jp/
 一般財団法人 都市農山漁村交流活性化機構(まちむら交流きこう) https://www.kouryu.or.jp/
 岡山県・地産地消の推進 https://www.pref.okayama.jp/page/detail-27148.html

(参考資料には、『地産地消コーディネーター育成研修会(岡山会場)現地視察 研修資料』2019・12・19 制作・粟村三枝が使われています)

プロフィール
金丸 弘美   総務省地域力創造アドバイザー/内閣官房地域活性化応援隊地域活性化伝道師/食環境ジャーナリストとして、自治体の定住、新規起業支援、就農支援、観光支援、プロモーション事業などを手掛ける。著書に『ゆらしぃ島のスローライフ』(学研)、『田舎力 ヒト・物・カネが集まる5つの法則』(NHK生活人新書)、『里山産業論 「食の戦略」が六次産業を超える』(角川新書)、『田舎の力が 未来をつくる!:ヒト・カネ・コトが持続するローカルからの変革』(合同出版)など多数。
 最新刊に『食にまつわる55の不都合な真実 』(ディスカヴァー携書)、『地域の食をブランドにする!食のテキストを作ろう〈岩波ブックレット〉』(岩波書店)がある。
*ホームページ http://www.banraisya.co.jp/kanamaru/home/index.php 



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