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恋した年上女性との話

恋した女性が闇金まみれだった。
闇金から50万借りている。
ウシジマくんの漫画通りの金利だと、彼女は言っていた。
2回会った後、3回目会おうと連絡をしたところ、彼女は死にたがっていた。
彼女は本当に死ぬかもしれない。言葉選びに虚弱さが感じられた。
やけにひらがなが多かった。寝転がりながら、無表情で指だけ動かしているのだろうと思った。

僕にも金がなかった。
数ヶ月先の賞与分を彼女にやろうかとも思ったが、そんな心の余裕はなかった。

彼女を見捨てることに決めた。
こちらから金を渡しても、彼女はまた同じことを繰り返すだろうと思ったから。
金を渡す以外の方法を模索するほど、僕は元気じゃなかった。

彼女と2回目会う前の日。
給料が入って、すぐにその子へのプレゼントを買って、そのうえで会社の同僚と飲みに行った。終電は無くなり、夜の街を3人で彷徨って、その街の中に僕のお金は吸い込まれていった。

彼女から連絡が来た。
非店舗型風俗で働くそうだ。
客ウケのいい服を着ないといかんから、
そう言って彼女はゾゾタウンのリンクを僕に送ってきた。
開いて出てきたのは2万円の秋用ワンピースだった。
僕はその連絡に既読をつけたまま、今日まで放置している。

闇金にハマってしまった女性は風俗での勤務を迫られる。膨らみ続ける利子に追いつかず、彼女らは自ら命を絶つことも多いのだという。

職場では笑えている。
友人にも冗談を言えている。
そんな日々の中で、
やんわりひとりの女性を見殺しにした。

僕に初めて会った時、
すでに借金はあったらしい。
だったら、僕のせいじゃないのか。
彼女を通して、社会の闇を見た、
そう言ってしまえば簡単だ。
傍観者面するのは簡単だ。

金がないと言っても、なんだかんだ明日飯を食える僕は、傍観者面をすることができる。
でも彼女は僕を見返してきた。

金も性も夢も堕落も搾取も、
全部が合わさり肉体を得て、
薄くて空っぽな僕を見つめ返してきて、

最近の僕は、その見つめ返してくる彼女に怯えて、取引先との打ち合わせ中、辿々しく喋り、怒られた。

それだけだ。
最近の僕にあったことはそれだけ。

もう作品なんて書く資格ない。
それだけになっちゃったんだから。

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