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ゲーム業界のグローバリゼーションの今

おはようございます!
昨晩は『ドクター・ストレンジ  マルチバース・オブ・マッドネス』を観てきました。

昨日が公開日で、GWでもあったことから80%ほど埋まっていました。
内容については書きませんが、まだまだドクター・ストレンジのシリーズ作品は制作公開されるようですw

さて、ゲーム開発におけるグローバリゼーションについてnoteに書いたことがないなと気づいたのでエントリーすることに。
ビジネスパートナーとして仕事をしたのは16年前。
私がはじめて海外外注と仕事をしたのは今から12年前になります。

ビジネスパートナーとしての初の相手は中国企業で当時はPCオンラインゲームが隆盛している時代で、中国全土に数万のPC房と呼ばれるネットカフェが乱立し、1時間数元でゲームが遊べる場所として大学生を中心に人気を博していました。

出典:視覚中国

そんなPCオンラインゲームで大半のシェアを持っていた盛大網路という企業との包括的な提携話のために上海へ行ったのが初めてでした。
オリジナルのゲーム機やSTB(セットトップボックス)を彼らは計画しており、そこへnamcoがもつ人気ゲーム群の提供を求めていました。

一方、私たち側は家庭用ゲームは市場として難しいが隆盛しはじめていたPCオンラインゲーム市場での展開を模索していました。
当時もPlayStationは中国展開をしており、現地にあるオフィシャルショップなども視察しましたが、ほとんど人はいませんでした。

現在も当時よりは売れるようにはなっていますが、PlayStationもSwitchもTencentなど現地企業とアライアンスをして販売されていますが、市場として形成される程の販売には至っていません。

政府による様々な規制があり、日本と同じようなサービスや製品が遊べるわけではないというのもあり、ゲーマーたちは日本版を個人輸入しており規制がかかっている中国版のハードを買わないのです。
コロナが発生するまでは、日本へ観光やビジネスで訪れた際に家庭用ゲーム機を購入して帰国する人たちが多かったです。

盛大網路は社名を盛大遊戯と変更して現在も存続していますが、スマホゲームに市場変化した今ではPCオンラインゲームでの勢いは残念ながらありません。

次に私が海外企業との取引をしたのは、ActivisionやUBI Soft、EAなどとの受託開発プロジェクトを担当した時になります。
2010年当時ですが、Activisionなどはすでにその頃から世界20カ国以上の開発スタジオとゲームソフト開発を行っており、米国、欧州、東南アジアなどのスタジオと取引をしていました。
ハンガリーには数百人規模のスタジオがあり、Unreal Engineや今はもうないですがCrytek Engineなどを使いこなすスタジオでオープンワールドタイプのゲームを5億円もしないコストで作っていました。
また、Nintendo DSのソフトをフィリピンのスタジオで3,000〜5,000万円で開発していました。

ちなみに当時、私が在籍していた日本の開発スタジオではどちらも倍以上の見積もりになっていました。
彼らに当時言われて心に残っているのは

「世界中にゲーム開発スタジオがあり、価格は日本より安くジャンルやアートスタイルによるが君たちの半分以下のコストでクオリティーも変わらぬものを作れるんだ。君たちのコストに見合ったバリューがいったい何なのか、よくよく考えたほうが良い。そうでないと君たち日本の開発スタジオへ仕事を発注する理由がない。ただコストが高いだけでしかない」

というものでした。
他の例としてはゲームではないですが、当時ルーカスフィルムのHPの制作を行っていたのはチリにあるWEB制作会社で人月15万円でした。
NEWYORKにあるWEB制作会社へ依頼したら間違いなくその6〜7倍はします。
しかし、クオリティーに問題がないからこそチリの会社へ制作依頼しているわけです。
価格とクオリティー以外のいったい何での6〜7倍のバリューを出せるのかということを高コストの先進国で働く私たちは真剣に考えなくてはならないのだということを強く思い知らされました。

そして3Dモデル、モーション、3DCGカットシーンなどは海外のデザインスタジオへの発注をするという経験も同じく2010年に初めてしたのですが、当時、中国や台湾の企業へ依頼していましたが彼らの人月コストは40〜50万円ほどでした。
一方、自社の人月コストは90〜100万円でした。
半分のコストで変わらぬクオリティーのものが制作できたのです。

もちろん、発注資料、レギュレーション資料などそういった準備が万全で、テスト制作をして実力を確認した上での話にはなります。
私が発注していた企業は先程あげた欧米の大手ゲームメーカー、パブリッシャーのアートアセットの制作を私たちが依頼するずっと前から請け負っており、AAAタイトルにも関わっていましたから実績、クオリティーともに問題などありませんでした。

また、海外取引を円滑に進めるために言語に長けたアカウントマネージャーたちのチームを編成しており、発注資料やレギュレーション資料、テレカンファレンスなどでの通訳、翻訳もできる体制を持っていました。
私が取引した企業は日本語ができるアカウントマネージャーを配置していたのでCommunicationが問題となることは一切ありませんでした。

当時はまだ日本の大手企業は海外へのアートアセットの制作依頼をしていませんでしたが、現在では日本の大手企業はすべからず海外へ発注しています。
なので、みなさんがご存知のヒットタイトルのアートアセットの多くは海外のデザインスタジオで制作されています。

そして、中国も経済成長と国内のゲーム産業の隆盛により人材の取り合いが発生しているのもあり、人月単価は60〜70万円のところも沿岸部の都市にあるスタジオを中心に増えています。
ここまで来るとコストメリットはほとんどありませんから、現在ではタイ、インドネシア、マレーシア、カンボジアなど東南アジアへの発注へシフトしていっています。

また、インドにもAAAタイトルのアセットやハリウッド映画のCG制作に関わっているデザインスタジオがあり、40〜50万円ほどで制作を行っているところがあります。
フルプロダクションをそもそもできるスタジオもありますから、アートアセットに限らず、日本の開発会社もそろそろ世界中の開発スタジオとの戦いに引きずり込まれています。

言語の壁を変える体制づくり、良きパートナー探しの努力といったことは急務です。
そもそも海外のスタジオとの制作パイプラインの構築やそのためのノウハウの獲得も必要とされています。

私は、若い開発者にこういった話をするようにしています。
言われたことだけやっている作業者の未来を描けるのか?
私たち日本人が出せるバリューとは?
ゲームの部品を作る仕事はグローバリゼーションの中にある中で、どういったキャリア形成を考える必要があるのか?

今はまだ東南アジアだが、中国と同様にいずれ高コストになっていくので次の地域へと生産拠点が移っていくが、最後はアフリカだと思われるのでまだまだこのコスト低減先はあるし、続くという現実があるので会社の評価とか上司の評価とか会社からの指示とかで勉強したり、努力したりするようなことではマズイことになるので自身のクリエイター人生のためにも、真剣に将来の目標を考えて、そこへ至るマイルストーンを設定して日々、漫然と作業として仕事をすることからは脱却したほうが良いことを伝えています。

これはアートアセットが顕著ですが、プログラムではすでにマイクロソフトは数万人規模の雇用をインドで行っていますし、経理業務などバックオフィス業務なども海外へアウトソーシングする事業が広がりを見せています。

その上にAIによる自動化なども進んでいます。
私自身もそうですが、子どもたちにも自分のバリューを何で出せるのか、そのためには何が必要なのか話していますし、常に考えています。

ちなみに私が取引したことがある国と地域は
 ・中国
 ・香港
 ・台湾
 ・韓国
 ・マレーシア
 ・インドネシア
 ・タイ
 ・アメリカ
 ・カナダ
 ・フランス
 ・イタリア
 ・イギリス
 ・フィリピン

日本人にしか出せないバリューとはいったいなんなのか、一定の解を私は持っています。
なので、それを磨いていますし業務で関わっているメンバーには伝えています。
また、この解も時の流れとともに変わることでしょう。
なので日々、日本以外の国のゲーム産業、エンタメ産業の情報キャッチアップに努めています。
それはネットなどの一次情報だけではなく、リアルな人的ネットワークも使って^^;

脅威だけではなく、本来はチャンスでもありますから官製のクールジャパンみたいなダサい取り組みではなく、民間の力でしっかりと日本のバリューを世界へ示していきたいと思います!

賛同する方や国内外の事情に明るい方、国籍問わず交流できたら幸いです!
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