渡瀬裕也著『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』読書感想文
私はこれまでこういった政治情勢に関する本はほとんど読んでこなかったのですが、最近テレビの向こう側の話に限らず私自身の身近な人付き合いの中でも日頃から様々な分断を感じる事が多々あり、今回初めて読書会に参加させて頂きました。
この本を読み、生活の中で感じる身近な分断やニュースを通して知る様々な分断が実はこれほどまでに洗練されたものであり、そしてこれらは権力者によって意図的に行われ自分自身の生活にも影響を与えている事実に恐怖を感じました。しかし、それらの分断がどういった経緯で発生しどういった意図を持っているのかを知る事で、世界の分断を構造的に捉えることができ大変興味深くかつ、内容は深刻ではありますが楽しく読書をすることができました。
読書前は世の中で起こっている分断に対して感情的でネガティブなイメージしか持っていなかったのですが、これらの分断を一概に否定するのではなく分断を新たなアイデンティティの形成の為に活用する、という著者の知的で冷静な姿勢に今の時代に必要な知性を学ぶことができたと思います。
そして今もまさに急速に変化し続けているアメリカや中国を中心とした世界の政治や経済、権力者による様々な思惑が及ぼす影響に対して自分はどの様な態度をとり、これからどう人と接していけば良いのかを考えさせられました。
これからも様々な形で分断されていくであろうこの世界で今回のパンデミックの様な危機的状況を乗り越える為にも、日常的にシステムによって用意された画一的なアイデンティティに支配されるのではなく、本来人間が持つべき豊かなアイデンティティ、強靭でしなやかな精神を手に入れる事がこれからの時代において如何に大事であるのかを学ぶ事ができました。
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