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石垣島の食で「薬がいらない製薬会社」:やえやまファーム・中家勝則

「薬がいらない製薬会社を目指したい」

沖縄の石垣島を拠点にした「やえやまファーム」は、ロート製薬のそんな想いから生まれた子会社です。

農畜産物の生産から流通までできる限りのロスを減らしたサステナブルな「循環型6次産業」を通じて、沖縄から世界中の人々の健康を食で支えることを目指しています。

2023年4月から代表を務める中家勝則(なかいえ・かつのり)さんに、やえやまファームの取り組みや事業の先に描いている世界観を、メールインタビューで聞きました。

*中家さんは9月23日から、秋田、鹿児島、石垣島の3地域で開催する起業家向けプログラム「LOCAL START-UP・GATE」にも協力。秋田の起業家として、現地参加者との対話を予定しています。

LOCAL START-UP・GATEの詳細>
“非合理”な地方だからこそ埋もれた感性を事業で届ける——LOCAL START-UP・GATE初開催に寄せて

沖縄ならではの「かりゆしウェア」を着こなす中家さん

有限会社やえやまファーム
中家勝則(代表取締役社長)

1974年、三重県生まれ。大学を卒業後、医療機器メーカーにて研究開発及び生産技術に従事し、モノづくりの基本を学ぶ。ロート製薬に転職後は商品企画から営業まで流通の幅広い分野に携わる。その後、社内ベンチャーに異動し、グローバル向けに新しいビジネスモデルを推進したり、子会社の米メンソレータム社で化粧品ブランドのブランドマネージャーを務めたりと経験を積む。帰国後は経営企画室で子会社管理や人事戦略プロジェクトに参画したのち、アグリファーム事業部で沖縄事業担当(やえやまファーム副社長)に。2023年4月からアグリファーム事業部部長および、やえやまファームとケレス沖縄の2社の代表に就任。社員一丸となって、新たな価値作りと収益化の両軸を目指して奔走している。最近の趣味はSUPフィッシング。

——まずはやえやまファームの事業内容を教えてください

今は沖縄の石垣島で、必要な堆肥や飼料をできる限り自社の農場と牧場内で作り廃棄を出さない循環型6次産業化を実践した食事業に取り組んでいます。6次産業とは、生産(1次)、食品加工(2次)、流通や販売(3次)をすべて農業従事者が担う運営形態です。

農産事業としては、日本で唯一のオーガニックパイナップルを生産しています。また畜産では、パイナップルの搾りかすを飼料として与えたブランド豚(南ぬ豚/ぱいぬぶた)を育てています。

これらの農畜産物を自社工場で加工し、販売・マーケティングまで流通の一連の流れに携わり、生産者の声と共に届けることで、地方農業の活性化と食料自給率アップを目指しています。

——やえやまファームの創業のきっかけを教えてください

やえやまファームはロート製薬の子会社として2002年に設立されました。これはロート製薬の「薬がいらない製薬会社」を目指したいという想いから立ち上がった事業です。私は2023年4月から代表を務めています。

薬だけではなく、健康の基礎に欠かせない「食」に関する事業を運営しています。

現在はロート製薬が手がける食事業のうち、やえやまファームを含めたアグリファーム事業部全体の責任者も務めています。沖縄本島や奈良のグループ会社と共に、地域に土着化しながら事業を運営し、農畜産事業や起業家の育成などを通じて地方創生に取り組んでいます。

——やえやまファームの事業を通じて、これからの社会はどのように変わっていくでしょうか?

企業は、市場の大きな大都市圏や海外展開に注力しがちです。しかし、日本の食の原点となるそれぞれの生産地域にも目を向けることが大切だと考えています。

私自身、やえやまファームを通じて食や農業、地方創生事業に携わる中で、日本の食と農業は非常に厳しい局面にあることを実感しました。

食料自給率は絶望的なレベルにまで低下し、それを支える農家さんの平均年齢は約68歳と高齢化が進んでいます。収入の低さや後継者問題も相まって、農業従事者は減少傾向です。

子供たちの世代は、人が人らしく生きるために最も必要な食を安定的に手に入れられない「フードセキュリティ」の問題に直面する可能性もあります。

私たちとしては、ロート製薬のリソースを活かして、地域内外の食に関するプレイヤーと力を合わせながら、新しい食と農業のモデルを創り、こうした課題解決にも取り組んでいきたいです。

私たちの活動を通して、そんな企業がもっと増えてほしいですし、そうなれば日本中の食と農業が生き生きとする未来がやってくるのではないかと思います。

中家さんも協力する「LOCAL START-UP・GATE」は「世界観ファーストでビジネスをつくっていく」起業家向けのプログラムです(9月23日開始、秋田・鹿児島・石垣島の3地域で開催)。

やえやまファームのような、世界観ファーストの起業家との対話や各種プログラムを通じて、4ヶ月間で事業をつくり上げていきます。

プログラムについて詳しくは以下のインタビュー記事をご覧ください>