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3.11 あの日、私は 【後編】

生きていく上で、楽しいこともあれば悩ましいこともたくさん。そんな女性の悩みを、専門家に質問していくYoutubeチャンネル「GOAL IN TV」。番組を盛り上げてくれている出演者の一人、マルチタレント・わさびさんのコラムです!自分の人生を楽しく生きるためさまざまなことに挑戦する彼女の生き方についての連載。

東日本大震災から10年。

10年前の3月11日、私は幕張メッセのイベント会場でキャンペーンガールの仕事をしていました。

たまたまその日の現場だった幕張メッセ。道路は割れて水が吹き出し、電車は運行停止。家に帰ることができなくなった私は、ホテルの1人部屋に8人で詰め込まれ、街が回復するのを待ったのでした。

あの日あなたは、どこで何をしていましたか。

前回記事はこちら→3.11 あの日、私は 【前編】

8人がぎゅうぎゅうに詰め込まれたワンルームで、朝まで過ごすということが決まった頃、私の横に座っていた女の子が言いました。

「私、持病があって、家に薬を置いてきちゃったんだ。朝までに家に帰れないとまずいかもしれない」え、何それ嘘でしょ……?

「本当。さっきお母さんと電話つながったんだけど、薬、自宅の机の上にあるって……」

どうしよう。どうしよう。そう思いながら、私は自分の携帯を掴んで外に出ました。

頼れる人は、当時付き合っていたひとまわり年上の彼しかいませんでした。

埋立地で土壌が悪い幕張メッセと外部を繋ぐ道路はほとんどが地割れによって通行止めとなっていて、数少ない機能している道路は大渋滞のようです。あまつさえ、ガソリンも長時間並ばないと手に入らないといいます。

その日たまたま行った現場で、たまたま知り合った女の子の為に車を出して欲しいなんて父には頼めなかったので、私は彼に電話をしました。

電話はなかなか繋がらなかったけれど「1人の同年代の女の子が苦しい思いをするかもしれない。もしかしたら死んじゃったりするのかもしれない」と想像すると、いてもたってもいられませんでした。

彼には、電話ながら土下座をする勢いで頼み込みました。

すると、事情を聞いた彼は「それはまずいね。何時になるかわからないけど、行くよ」と言って、何時間もかけて車で迎えに来てくれました。

持病持ちの女の子は安堵の表情を浮かべて、同じ部屋にいた人たちも「よかったね」と私たちを見送ってくれました。

女の子を自宅に送り届けることができたのは翌朝のことです。仕事で疲れているのに、渋滞している道を夜通し運転してくれた彼には感謝しかありません。あの時の恩は一生忘れないでしょう。

女の子は、家の前で何度も私たちに感謝の言葉を言いました。「あなたは命の恩人。今度2人に何かお礼がしたいから、連絡先を教えて!」そう言ってくれた彼女と私は、メールアドレスと電話番号を交換しました。

だけど、その後、彼女から連絡が来ることはありませんでした。

持病が悪化して亡くなった? 「ま、別にお礼なんてしなくていいか」と思ったのかな。彼女の気持ちはわかりません。

その後、偶然に別現場で彼女を見かけたことがあったのですが、気まずかったのか、私には気づかないフリをしました。

私は別にお礼が欲しかったわけではありません。だけど、あの日急いで私たちのことを迎えに来てくれて、寝ないまま仕事に行った彼のことを考えると、とても悲しい気持ちになりました。

あれから10年。あの日、多くの人が、色んなことを感じたと思います。震災そのもののことも忘れたくない。だけど私は、その時学んだことも忘れたくない。

誰かが気持ちでやってくれたことには、しっかり気持ちで返したい。少なくとも私はそうしたい。

この10年間ずっと、それが私の中にあります。

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