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リモートワークで生産性どうなった?…私たちの考え

こんにちは。
ゴール・システム・コンサルティング&リ・デザイン研究所のたじたです。

前回ご紹介した11月の「TOCシンポジウム&TOCインダストリーフォーラム」で、私たちは『自律と協働がリモートワークの生産性を高める~チームマネジメント2.0~』というテーマについてお話しました。今回から3回ぐらいで、発表の内容を書いていこうと思います。

さて、新型コロナウイルスが世界中に広がり始めて、日本でも在宅勤務が増えていったのは2020年の2月頃でした。3月になると私たちの会社もお客様の会社も在宅勤務中心となり、緊急事態宣言が出された4月7日から5月25日の解除まで、1日も出社しなかった方も多くいらっしゃることでしょう。

リモートワークで生産性はどうなった?

コロナの影響で一気に広がったリモートワークですが、多様な働き方に対応するための施策として、そして、生産性向上の一手としても期待され、コロナ感染拡大前から制度化していた企業も多くありました。しんどい通勤ラッシュから解放されて、また、育児や介護などの家庭環境の中でも柔軟に働くことができ、上司に膝詰めで叱られるストレスからも解放されるのだから、生産性はきっと上がるはずですよね……実際はどうなったでしょう?

世に出ているリモートワークの生産性調査4つの平均値をとってみると、こんなグラフになりました。

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上記のグラフを作成した後、9月末にアドビ社が公表した「COVID-19禍における生産性と在宅勤務に関する調査(Productivity/Work from Home Survey)」をみても、在宅勤務での生産性は下がった(43%)が最多となっており、上記のグラフに近い結果となっております。

生産性ってなんだっけ?

ところで、生産性ってよく言われますがどういう意味でしたっけ?定義は複数ありますが、基本的にはこういうことですよね。

生産性=アウトプット(できたもの)/インプット(投入した資源)

つまり「生産性が低下した」という表現をかみくだくと「同じ時間働いても、出せるアウトプットが下がった」とか、「同じアウトプットのために、より長時間働くことが必要になった」ということを意味しています。

「働き」をどうとらえよう?

さて、生産性の意味はわかりました。じゃあ「短時間でいっぱいアウトプットが出せるような良い働き」って、私たちの日常ではどんな状態なのでしょう?

工場での生産とか、テレアポとか、データ入力とかだったら、アウトプットを定量で評価できます。けれども、何日も何週間もかかるような大きなタスクを進める業務や、非定型の業務では「今日よく働けたか」を自分で実感するのも案外難しいのではないでしょうか。

そこで、私たちは製造業で使われている「総合効率(総合効率=時間稼働率×性能稼働率×良品率)」という尺度で使われる、ロスの分類の考え方を転用して「働き」に当てはめてみることにしました。ここの詳しい考え方は、近々予定しているセミナーでお話することにしまして、まとめると…。

1 時間をちゃんと確保できて、
2 集中してテンポよく働けて、
3 手戻りがない仕事ができれば、 

生産性が高い状態だと簡易的に判断できると、私たちは仮説を立てています。この3つの分類を、私たちが日々接している大企業の課長クラスの方々からヒアリングした内容に当てはめてみました。

1 時間をちゃんと確保できているか?

(生産性プラス要因)通勤時間に加えて、業務時間のなかでも会議室等への移動の時間が減りました。
(生産性マイナス要因)社内共有されているスケジューラーに、リモート前にはなかった会議がどんどん差し込まれ、会議に業務時間を圧迫されているという話をよく聞きます。

2 集中してテンポよく働けているか?

(生産性プラス要因)オフィスに出社すると、しょっちゅう人から話しかけられたり割込タスクで業務中断していたのが減少しました。
(生産性マイナス要因)部下の働きぶりが見えないため、報告を増やしたり、1on1ミーティングを行ったりする時間が増えました。

3 手戻りがない仕事ができているか?

(生産性プラス要因)チーム仕事の手戻りが減ったという話は、周りのお客様からは聞いていません。
(生産性マイナス要因)対面でやっていた「あうんの呼吸」での仕事や、なんとなくすり合わせるということができなくなって、部下に依頼した仕事の手戻りは増えているようです。

なお、リモートワーク開始直後は、ネットワーク環境起因の働きづらさの話をよく聞きました。リモートワーク開始から半年以上が経って、多くの企業で環境整備が進んでいるようです。

1人作業はやりやすい、チーム仕事は難しい

今まで見てきた3つの分類を眺めてみると、マイナス要因はすべて、他の人と関係がある内容になっています。1人でコツコツ進める作業はやりやすくなった一方、チームで進める仕事について課題を感じている様子が、ヒアリングからも、各種調査からも見えてきます。

下のグラフは、カオナビHRテクノロジー総研さんの「リモートワーク実態調査レポート」からの引用です。部下ありの方と、部下なしの方で、生産性についての評価がくっきりと分かれています。
(出典:カオナビHRテクノロジー総研 https://ri.kaonavi.jp/20200610/ )

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このような状態が長期化するにつれて、リモートワークでのコミュニケーションに課題を感じる声は、各種調査にもあがっていますし、私たちの周りのお客様からも多く寄せられます。そして、リモートワークが長期化するにつれて、1人では完結できない、チームのアウトプットや、人材育成、組織の業績について、不安が出ているようです。

こちらも、カオナビHRテクノロジー総研さんの「リモートワーク実態調査レポート」から引用します。

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(出典:カオナビHRテクノロジー総研 https://ri.kaonavi.jp/20200624/ )

リモートワークは、多様な働き方を実現するためにも、アフターコロナ時代の働き方の選択肢としても不可欠です。けれども、リモートワークの増加がチームとしての働き方にマイナスの影響を及ぼし、目標達成のために協働するという、組織の「根幹部分」が心配ごとになっていることもまた、目を背けることのできない現実です。

次回では、リモートワークでチームの生産性をいかに高めるかという課題に対して、私たちがどのようなアプローチをとっているかをご紹介します。


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