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「思考プロセス」と子供の教育について ⑦「9歳の壁」を乗り超える

こんにちは、ゴール・システム・コンサルティング&リ・デザイン研究所です。ゴール・システム・コンサルティング代表取締役村上悟による、TOCの基本スキル「思考プロセス」と子供の教育に関するコラムの7回目をお届けします。TOC(制約理論)や、教育のためのTOC(TOCfE)、考える力の育て方に興味がある方、ぜひご覧ください!

※第1回~前回までのコラムは、以下のマガジン(村上のコラム一覧)からご覧いただけます。

今回は7歳以降から9歳過ぎの小学校高学年の時期の発達、いわゆる「9歳の壁」の克服と、その支援に最適なfEツールについて考えてゆきましょう。

これまで説明してきたように、子供が成長し発達する順序は、目の前にある物理的な具体物から順番に「認知」してゆきます。そして、次にその「具体物」を介して「自分」を認知し、さらに自分を介して「相手」を認知するというように、順番に空間と時間の認知を広げていくのです。

こうした発達を遂げながら、子供は幼児期を離れ学童期に入り、いよいよ「9歳の壁」に到達します。この壁では、今までのように具体物を認知するだけではなく、物事を抽象化して認識することが求められるようになってゆきます。

例えば学習課程では、時間の計算、分数や小数といった具体的に指を折っても答えを出せない、抽象的な考え方が入ってきます。作文などの文章には、夏休みの絵日記のような「きのうどこどこへ行って何々をしました」的なものから、平和や友情などという抽象的な題材が当たり前のように登場し、大きく変化してゆきます。

そして「自分」のことも客観的に俯瞰して捉えることが出来るようになり、いわゆる「もう一人の自分」が育ち始め、対話が始まります。

冷静に自分を分析してみると、私たち大人は本を読むときでも文章を書くときでも、もう一人の自分と無意識に対話をしている事に気がつくはずです。「これはどう考えたらいいのだろう?」「これって本当?」「私の本当の気持ちは?」、私たちは様々な局面で「もう一人の自分」に助けられています。こうしてみると「思考のプロセス」とはまさに「もう一人の自分」との対話、心理学でいうところの「メタ認知」であることが分かると思います。

しかし、「9歳の壁」の前の幼児期、学童期の子供は、まだ充分に抽象的な思考能力が育っておらず、自己を客観視したり物事を客観的にとらえたりすることが充分ではありません。

「9歳の壁越え」によって「イメージできる力」が育ってくると、「現実の具体物」をシンボルに置き換えることができるようになり、その結果「もう一人の誰か(もう一人の自分)」の存在が理解できるようになってゆきます。これが出来ると物事を抽象的に考えることが出来るようになり、自分を客観的に見つめることが出来ます。それがとりもなおさず「論理的に考えること」、すなわち「子供の学力」に直結するのです。

人間の思考における論理性とは、思考という目に見えない道筋(プロセス)を、心の中のもう一人の自分を相手に「ああでもない、こうでもない」と試行錯誤しながら辿ってゆくことにほかなりません。もしもこの時、心の中に誰もおらず、会話が成り立たなかったらどうでしょうか。試行錯誤はおろかどんなアイディアも浮かんでこないかもしれません。

そして、自分との対話が順調に進み抽象的な思考が育ってくると、自分との対話を通じて「将来の自分」がイメージできるようになります。いよいよ具体的なターゲットを設定して、目標達成までの自分を計画的にドライブするという能力を獲得するのです。

「テストで100点を取るぞ!」
「跳び箱の7段まで飛べるように、毎朝トレーニングを続けるぞ!」
というように、ゴールを達成するために「今」から何をするべきかを考えることが出来、継続的な努力が可能になるのです。

fEツールにおいては、設定したターゲット(ゴール)をステップに分解してゴールまでの具体的な道筋を設計できるATT(アンビシャス・ターゲット・ツリー)が、まさにこの頃の子供に最適なツールではないでしょうか。

これで3つのfEツールと子供の発達成長の段階がつながりました。fEツールは子供の発達段階に合致したツール体系を持っていることがご理解いただけたのではないでしょうか。
「ブランチ」→「クラウド」→「アンビシャス・ターゲット・ツリー」4歳と9歳の壁を境に、このような順番で発達段階に合わせて活用すれば、子供の健全な成長を支援できるように体系が設計されているのです。

TOCfEでは、子供に「ちゃんと考える能力を身につける」スキルを付与すると謳っており、具体的に子供が獲得すべきスキル細目として以下を設定しています。

・出来事、概念、情報を暗記するのではなく、分析するスキル
・効果的に質問し、情報を解釈するスキル
・ものごとのつながりを見いだす(行間を読む)スキル
・推論、仮説、意見の有効性を評価するスキル
・ロジックを使ってある立場を支持するスキル
・他の科目内容や実生活に習った知識を適用するスキル
・筋の通った、賢明な意思決定をするスキル

もちろんfEの役割はツール(道具)だけではなく、本質的に子供の成長を助ける、子どもの内なる欲求を認め、それを励まし、より楽しいやり方で、望ましい方向へ導くためのものであると思います。言い換えれば、このスキルとは「ことばの力」を身につけることであり、ツールを使って「聞く」「話す」「表現する」能力をしっかりと身につけ、自分との対話を通じて「考える」ことなのです。

次回はこのfEツールを、子供だけでなく大人も使いこなすためにはどうしたらよいかを考えてゆきたいと思います。 

ここまでお読みいただきありがとうございました。はやいもので、本コラムも残り1回を残すのみとなりました。最終回も、どうぞよろしくお願いいたします。

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