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「思考プロセス」と子供の教育について ⑥「4歳の壁」から6歳まで

こんにちは、ゴール・システム・コンサルティング&リ・デザイン研究所です。ゴール・システム・コンサルティング代表取締役村上悟による、TOCの基本スキル「思考プロセス」と子供の教育に関するコラムの6回目をお届けします。TOC(制約理論)や、教育のためのTOC(TOCfE)、考える力の育て方に興味がある方、ぜひご覧ください!

※これまでのコラムは、以下のマガジン(村上コラムの一覧)からご覧いただけます。

前回は「4歳の壁」以前のお話しをしましたが、今回はその後の幼稚園から小学校に入る頃、4歳から6歳程度の子供の発達について考えてゆきましょう。

子供の脳は、4歳で80%のレベルに成長、そして9歳ではほぼ発達完了とも言える90%のレベルに発達します。その発達は、大脳の中でも複雑な行動計画を組み立て実行の判断を行う前頭連合野が深く関わっているそうです。この前頭連合野の発達に伴って、時間と空間の認識が拡がり、だんだんと他者との関係や自分と他人の違いを意識するようになるといいます。

この事は、乳児期に自分を認識する事から始まった成長が、いよいよ内面へと変化していく大きな「転換期」と考えればよいと思います。つまり、自分で考え自分で行動するという活動を伴う発達が進んでゆき、自己を外界の中で客観的に認識する事によって、さらに意欲的に行動するというドライバーを手に入れているという事なのです。

4~6歳児に特徴的なのは、物事を客観的に見て順序性を認識する、すなわち、物語のストーリーが把握出来るようになり、自分の心の内容を伝達する「ことばの能力(コミュニケーション能力)」が成立してゆくことです。

この年齢になると、子供は「もし~なら、…かもしれない」(因果関係・仮説)、「どうして~か?」(理由付け)など、自分なりに考えて話せるようになるといいます。そして友達との会話が多くなり、経験だけではなく、物語の内容をその場面を想像して理解するなど、話を聞いて話の内容のイメージがもてる様になります。

それに伴って、言葉で自分の行動をコントロールできるようになり、計画的な表現ができてきます。例えば「遊んだらお片付けをしなくっちゃ」など、自分を少しずつコントロールできるようになります。少しずつ文字を認識できるようになり、文章の意味を理解できるようになるのもこの頃です。

説明してきたように、脳の発達に伴う時間空間認識の爆発的な拡がりが「4歳の壁」の正体なのですが、子供によってはこの壁を乗り越える事は決して簡単な事ではありません。

そういった子供に特徴的なのは、何か新しい事を始めることに対して「しりごみ」「はにかみ」といった心理状況に陥ることだといいます。「しりごみ」や「はにかみ」は、「見られている自分に気づいて、恥ずかしがる」ということです。言い換えれば、「行動している自分を眺めている自分」を意識しているために「はにかんで尻込みしている」のです。

このような「しりごみ」が子供の行動を妨げ、発達に影響し、結果的に「ことばの能力」がバラついたり、学習結果が芳しくないという事は十分想像できますが、こういった「自我の目覚め」状態を脱却するために有効なTOCfEツールがクラウドだと思うのです。

クラウドは、からB,C,D,D’という5つの箱と、それぞれを繋ぐ矢印から構成されています。は「共通目標」を表し、B,Cは共通目的を達成するために必要な「条件(TOCfEでは『要望』と訳しています)」そしてD,D’B,Cを達成するために取るべき「行動(手段)」です。

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クラウドは主に対立構造を明確にしたり、対立を解消したりするのに用いられます。そしてその対立とは自分の内部にあるジレンマであったり(内部対立)、自分と他者の間にある意見の不一致(外部対立)であったりします。

TOCfEツールとしてのクラウドは、組織の問題解決を体系的に行う「ジョナスキル」でのクラウドの役割とは若干違っていて、「対立」という一つの重要な事柄から、それぞれの立場や背景など様々な要因を多面的に理解(解析)するためのツールとして使われます。要するに「今」から始めてゆくということです。

TOCfEでのクラウドの作り方は、まず「対立(D’)」を明確にします。そして次に対立する行動を導く「という条件(要望)」を明確にし、さらにを達成する事によって実現できる共通目標(ゴール)を見つけます。またそれぞれの矢印を成り立たせている「理由(Assumption)」を明確にし、それを無効にするアイディアを抽出して対立を解いてゆきます。

一方、ジョナスキルで教えているクラウドの作り方は、まずUDE(好ましくない事実)を抽出し、それを生み出した「行動」を特定します。次に「本来なら取るべき行動D’」を見つけ対立を特定します。

この違いをどう考えれば良いのでしょうか。勿論どちらの使い方が正しいという事ではありません。「4歳の壁」を越えたとはいえ、この頃の子供はまだまだ目の前の事象に囚われがちです。だからこそ囚われている眼前の対立から始める、そこから「要望」「共通目的」「理由」と順々に視野を広げて事象を構造化するというトレーニングは、脳のこの時期の発達に非常に有効だと思うのです。

実際にクラウドを書くことでそれぞれのボックスのつながりが明確になり、対立の論点がはっきりします。また外部対立では、相手と一緒にクラウドを書くことでコミュニケーションを円滑にするなど、多くの効果が報告されています。

来週は7歳からの発達と時間空間の広がり、ATT(アンビシャス・ターゲット・ツリー)の関連を考えてゆきましょう。 

ここまでお読みいただきありがとうございました。本コラムに対するご感想のメッセージなどもいただき、大変励みになっております。
残り2回も、どうぞお楽しみに!

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