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全体最適①全体最適って言われると反論しにくい

こんにちは、ゴール・システム・コンサルティング&リ・デザイン研究所です。前回の「TOCは理論か」に引き続き、当社CCSO(チーフ・カスタマーサクセス・オフィサー)渡辺薫による連載をお届けします。TOC(制約理論)や、教育のためのTOC(TOCfE)を学んだり、活用している方や、「全体最適」という言葉をよく使う方の参考になれば幸いです!

渡辺薫のこれまでのコラムは、以下のマガジンからご覧いただけます。

全体最適って説明しにくい

TOCでは、良く「全体最適」という言葉を使います。「全体最適をめざしましょう」と言われると反論しにくい感じがします。でも「全体最適って何ですか?」と質問されて、的確に答えられる人は多くないのではないかと思われます。本稿では、TOCでは「全体最適」をどういう意味で使っているかを詳しく見ていきたいと思います。

残念ながらTOCを教えている人の中にも、説明が曖昧な人、もしかしたら本当は良く分かっていないかもしれない人もいるようです。ぜひご自身の今までの理解をふりかえりながら、本稿をお読みいただけたらと思います。

いつも通り、私は、本稿の主張が「正しい」もしくは「TOCとして正当である」という主張をするつもりはありません。また、あまり厳密に書いてしまうと、読みにくくなってしまいます。ここでは、TOCを実践する人にとって「読みやすく」「実践する上で役に立つ考え方」を提示するように努めたいと思います。

最適という言葉の使い方

まず、「全体最適」とは何かに入る前に、「最適」という言葉について丁寧に見ていきたいと思います。
一般に「最適」という言葉は、以下の2種類の使われ方をします。

A群: 最適な生産計画
    最適な運行管理
    最適な在庫

B群: 生産計画の最適化
    運行管理の最適化
    在庫の最適化

この二つの使い方は「在庫の最適化」を行った結果「最適化された在庫」=「最適な在庫」になる、という関係にあります。「最適」とは何かを考える際には区分する必要がないと思いますので、本稿では分かりやすさを優先して適宜使い分けることとします。

ここで重要なことは、私たちは最適という言葉を「最適な●●」というように必ず「●●」という対象と組み合わせて使っている、ということです。私たちは、●●という対象なしに「最適」とか「最適を実現しよう」とは言わない、ということです。

「最適な在庫」はTOCの中ではDE(Desirable Effect=望ましい姿)と位置付けられます。対応するUDE(Undesirable Effect=望ましくない姿)は「最適ではない在庫」ということになります。
TOCでは(TOCでなくとも常識的なことではありますが)その状態が「DEである」か「UDEである」かが、明瞭に判断できる必要があります。つまり「現在の在庫の状態」が、「最適な在庫」なのか、「最適ではない在庫」なのかが明瞭に判断できなければならない、ということです。
では、どうやって判断するのでしょうか。

最適な洋服のコーディネートを考える

まずシンプルな例から考えてみたいと思います。
イメージしやすいように(他意はありません)「独身女性が、日曜日の朝に、十分に意識している男性とのデートにでかけるために、最適な洋服のコーディネートを考えている」というケースを想定してみましょう。
さあ、どんなふうに考えるでしょうか?

まず、すでに最適化の領域を決めています。「洋服のコーディネート」です。出かける準備は洋服のコーディネートだけではなく、もっとたくさんあるはずですが、ここでは「洋服のコーディネート」に範囲を限定しているわけです。具体的には髪型、メイク、下着、洋服、アクセサリー、靴、カバン、その他小物の最適な組み合わせを考える、みたいなことです。当たり前ですが「最適な●●」の●●の範囲を決めなければ何も考えることができません。

次にデートの予定と、私にとっての目的を考えるのではないかと思います。
デートの予定というのは「高級フレンチレストランに行く」「カジュアルだけどちょっと高級な焼鳥屋さんに行く」「お花見に行く(Dean & Delucaで飲みものと食べ物を調達)」「大衆酒場で豪遊する」等のシチュエーション(環境)のことです。言うまでもないことですが食事の場所によって最適な洋服のコーディネートは異なります。

それから、私の目的です。十分に意識しているけれども、まだ正式にお付き合いしているわけではない、という状態です。であれば、洋服のコーディネートを考える際には、本日の目的というかゴールを意識する必要があるのではないでしょうか。「現状維持」「十分に意識していることを伝えたい」「ちょっと勝負に出る」みたいなことです。これらの目的(というかゴール)も洋服のコーディネートに影響を与えそうです。

ここまで考えたところで、さらに悩むことが出てきます。手持ちの範囲で最適なコーディネートをつくるか、新しい洋服とか靴とか口紅を買いに行くか、この際だから美容院にも行こうか、とかです。つまり最適なコーディネートを実現する上での選択肢(オプション)の範囲を考えて、決めなくてはならない、ということです。

最適を考えるポイント

既にお気づきだと思います。「最適な洋服のコーディネートを考える」で考えたシナリオというのは、「最適」か「最適でない」か、を判断するための4つの基準(材料)を示しています。

1,環境(シチュエーション)
例:十分に意識している男性と、カジュアルだけどちょっと高級な焼鳥屋さんで夕食デート
2,目的
例:十分に意識していることを伝えたい(言わないけど「スキ」を感じとって欲しい)
3,範囲
例:髪型、メイク、下着、洋服、アクセサリー、靴、カバン、その他小物の組み合わせ
4,選択肢(オプション)
例:全て手持ちの範囲

ここまでの説明でお判りいただけたと思います。「環境」「目的」「範囲」「選択肢」をセットにしないと、「最適」なのか「最適でない」のか判断することができない、ということです。

ここからは、この考え方をベースに、TOCにとっての「最適」「全体最適」について解説を進めていきたいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回は、今回の考え方をベースにして『ザ・ゴール』を構造的に整理していきます。どうぞお楽しみに!

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