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「思考プロセス」と子供の教育について③博士から教えられたこと

こんにちは、ゴール・システム・コンサルティング&リ・デザイン研究所です。ゴール・システム・コンサルティング代表取締役村上悟による、TOCの基本スキル「思考プロセス」と子供の教育に関する3回目のコラムをお届けします。TOC(制約理論)や、教育のためのTOCに興味がある方、ぜひご覧ください!

今回は、子供の発達を支援する道具としてのTOCfE(TOC for Education)の、そのスキル体系の「成り立ち」と「ツールの定義」を読み解いてゆきましょう。

今から15年と少し前、確か03年か04年だったと思います。来日したゴールドラット博士と食事をしていた時のことです。私はふとした弾みから「思考プロセスが素晴らしいことは分かりました。でも何でも解決できる万能の手法なら、何故パレスチナ問題に思考プロセスを使わないのですか?」という非常に失礼な質問をしてしまいました。

実は、私の質問より遙かに前の1995年に、ゴールドラット博士は人々が末永く平和に暮らしてゆくために、我々が実現しなければならないことは「教育の改革」だと信じ、教育のためのTOC(TOCfE)を立ち上げたのでした。

そうとは知らない私の質問は、とんでもなく非礼なものだったのです。しかし、博士は怒りもせず、しばらく黙ったままパイプの煙をくゆらせていました。…そして、「君は教育という手段を知っているか?今4歳の子供が20年経つと何歳になるか考えてみて欲しい。」と答えてくれたのでした。

現実のTOCfEのスキル体系は平和を実現するだけでなく、現実に教育が抱える様々なひずみや問題を解決し、子供の考える能力を飛躍的に高めるために役立たせる事を重要なミッションとしています。そのためにゴールドラット博士が考えたスキームは、直接子供に対して教育をする事ではなく、教師などの教育関係者や両親にTOCfEを教え普及することでした。

TOCfEが掲げるその理念と役割は以下の通りです。「教育」とは、生徒に対し、自分の人生を充実させ、自分の行いに責任をもてる大人になるための準備をさせることであり、この「教育の大目標」を達成するために「fEツール」を広める事を目的としています。
そしてその結果、ステークホルダーである「子供」「親」「教育者」の思考能力とコミュニケーション能力の向上を実現させ、教育の飛躍的な改善を実現するとしています。
(TOCfEwebサイトより引用したものを筆者が加筆修正)

これに対してもう一方の「TOC思考プロセス」の定義ですが、TOC-ICO(TOC国際認証機構)が発行するTOCディクショナリー第2版によれば、TOC思考プロセスは、組織の目的(ゴール)達成を妨げている「制約条件」を識別し、変えるべきポイント(何を変えるか)を明確にし、どのように変化させていくかをシミュレーション(何に変えるか)し、確実な実行計画をつくる(どのように変えるか)という一連のステップであると説明されています。

言い換えれば、TOC思考プロセスでは千差万別の個別の事象を取り扱い、様々なシステム(組織や仕組み)を分析し、根本問題(制約条件)を特定し、解決し、変化への抵抗を克服し、多くの利害関係者から合意を取り付け、目的を達成するという体系的な問題解決のためにツール(5つのツリー)が用意されているのです。

私見ですが、ゴールドラット博士はこの思考プロセスの体系(道筋)を「教育の問題」に当てはめて、fEの体系を作り上げたのではないかと思います。ですからTOCfEでは、「考える教育」に時間を割くか、それとも、結果(こたえ)の出し方に時間を割くかという「教育現場に共通する中核的な問題(ジレンマ)」が博士自身によって分析・抽出され、コアクラウドとして提起されています。そしてその問題を乗り越えた姿が、前項で説明したTOCfEとしての「ゴール」と「実現したい姿」(DE:DesirableEffect)なのです。

こう考えるとfEのスキル体系は、「何を、何に変えるか」が定義されたその次、つまり、「どうやって」の役割を果たす「具体的手段」である事が理解頂けると思います。このためTOCfEでは、「どうやって」に相当する実践的な「論理的な思考の道具」を「教員、親、子供」が使うことによって、子供の「健全な発達」を助ける、そして、子供が「発達」することによって「道具の使い方がさらに上手くなり人間的に成長する(問題解決能力がさらに向上する)」という流れを実現することに重点が置かれている、と考える事が妥当だと思うのです。

これに対して、TOC思考プロセスでは「問題」を解決するという目的を達成するために、5つのツリーという「道具」を使って「考える」のです。そして考えて「問題」を解決することによって「成長」するという、fEとは逆の流れになっています。皆さんは「ちょっと順番が違うだけで、殆ど同じでは…」と思われるかもしれませんが、私はこの違いが思考プロセスとfEを使いこなす上で理解すべき重要な違い、言い換えれば「大人と子供の違い」だと思います。

考えてみれば、ゴールドラット博士はセミナーなどで良く「Sequence is very important(物事の順番はものすごく重要だ)」と言っていましたが、こういう事だったのかと改めて納得しました。

説明したように、TOC思考プロセスを用いた問題解決の基本は「何を変えるか」「何に変えるか」「どうやって変えるか」という三つの質問に全て答えることです。TOC思考プロセス「ジョナ」の体系は、この全てに順番に答えてゆきます。この事は「現在」「過去」「未来」という時間軸や、自分や相手、組織といった物理的な空間を認識し、使い分けながら問題解決を行って行く事を意味します。

しかしfEはこれとは異なり、fEの全てのツールは「今この瞬間、目の前にある事象や思い」からスタートします。「えっ、そうなの?」と思われた方もいると思います。そこで次回は、何故fEの体系がこうなっているのかを読み解くために、子供の発達段階における幾つかの特徴とfEの3つのツールが果たす役割について順番に見てゆきたいと思います。 

ここまでお読みいただきありがとうございました。本コラムも、徐々に核心に入って来ました。次回は来週掲載予定ですのでお楽しみに!
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