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私とクラウド(対立解消図)の10年間:私を助けてくれた、クラウドあれこれ。


こんにちは。ゴール・システム・コンサルティングの但田(たじた)です。教育のためのTOC Advent Calendar 2024 12日目の記事です。最初にお伝え(言い訳)しておきます。今回は会社のnoteの場を借りていますが、私の個人的な経験や気持ちを書いていて、会社の公式な見解ではありません。また、過去に書いたクラウドが出てきますが、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。

今回はせっかくのアドベントカレンダーなので、TOC思考プロセスで人気のフレームワーク「クラウド(対立解消図)」に心惹かれた一人として、クラウドを巡る10年を振り返ってみます。いつものGSCのnote記事より、ゆるく書いていくつもりです。「TOC」や「教育のためのTOC(TOCfE)」が好きな人達とお喋りをしているような気持ちで共有できたら嬉しいです。

気付いたら、10年(もっと)

私が初めてクラウドに「ハマった」のは、2011年、日本で初開催された「教育のためのTOC国際認定プログラム」に参加した時でした。もう13年前になりますね。

その頃の私は、中小企業診断士の試験勉強で小説『ザ・ゴール』を読み、古本屋で見かけた『ザ・ゴール2』も読んで、クラウドって面白そうだなと思っていたぐらいのTOCへの関心度でした。さらに、診断士の勉強会でTOC(制約理論)のことを聞いて興味が高まり、見様見真似でクラウドは書いてみたけど、ちゃんと書けたのかよくわからない、という状態でした。

そんななかで「教育のためのTOC(以下、TOCfE)」が日本に上陸すると小耳に挟みました。もともとTOCfEは、子どもたちの教育のためのツールですが、正直「4日間でこのお値段!しかも私みたいな育ちきった大人でも参加できる!お得!」というヨコシマ?な気持ちで参加しました。

認定プログラムのなかで紹介された、子どもたちの事例(金魚を飼う飼わないとかの、アレです)に、私は惹き込まれてしまいました。もしも、TOCfEの3つのツール…クラウド、ブランチ(因果関係のツリー)、アンビシャスターゲットツリー(目標達成のための実行計画を考えるツリー)を、子供の頃から主体的に使えていたら、私の人生、どれほど豊かになっていただろう?という、ショックにも似た気持ちを抱きました。

その時、私は既に30過ぎの大人でしたが、せめてここからは、ちゃんと考えられるようになって、人生を豊かにしようと決意しました。

クラウド(私的)100本ノック

幸い、京都で開催された2011年の認定プログラムでは、関東在住の方々ともたくさん知り合うことができました。(今でもたくさんの方と関係が続いており、本当に幸せだなと思います)そのつながりのなかで、都内での自主勉強会が開催され、おかげで途切れずに3つのツールの実践を続けることができました。

私はあまり要領が良い方ではないので、とにかく数を打つことでツールと友達になろう、と思い、とにかくその頃は、ささやかなことでも対立を見付けるたびにクラウドを書いていました。

当時書いていたクラウドのネタ(現物はどこかに行ってしまいました)

我ながら恥ずかしいネタばかりですが、後になって、勉強会の仲間たちから「但田さんが日常のささやかなことでじゃんじゃんクラウドを書いてくれたから、ハードルが下がって自分たちもやりやすかった」という感謝の言葉をいただきました。

ちなみに、クラウドを書いた彼氏とは別れることにしました。冷静に意思決定し、考えをちゃんと伝えたせいか、こじれることもなくすんなり友達に移行できました。クラウドを書くことで、広い視野で落ち着いた意思決定ができたと思います。ただ、人間関係を「ちゃんと考えて判断」したいとは限らないので、人間関係にクラウドを使いたいかどうかはケースによるな、とも思っています。

翌春、初めての「TOCfEシンポジウム」が開催されました。自分は日常のささやかなクラウドばかりで、発表するような成果がない一方で、シンポジウムでは、他の方々の「すごい!」と思うような発表を聞いて刺激を受けました。

なかでも、お父さんと4歳の子どもで砂場に「クラウド」を書き、お父さんが子どもの考えに納得し、対立が解消したという事例に衝撃を受けました。というのも、私自身、子供の頃はずっと親との関係に問題を感じていたからです。

もしも、親子関係が絶対的な権力差による一方的な力関係ではなくて、「一緒に」考えてフラットに問題解決ができたなら。さらには、子どもと一緒に考えることで、親の方にも新たな気付きや学びがあったなら。もしそうだったら、この世界は子どもにとって、どれほど明るく希望あるものに見えるのだろうか、と痛切に思いました。

もっともっと、クラウドを活用していきたいな、仕事にも使いたいなと、シンポジウムで背筋が伸びる気持ちになりました。

便利なファシリテーションツールとして

そんなシンポジウムに刺激されたのか、それ以降、私も少しずつ仕事の場面でクラウドを使うことが増えました。「さあクラウドを書こう!」と言うと、周りの人が引いてしまうので、ホワイトボードやノートでファシリテーションする感じで、しれっと書くのが良いなと思うようになりました。

当時、私は中小企業支援の公的機関で働いていて、中小企業のお客様との相談や、事務局をしている団体での会議進行などの場面がありました。話し合いのなかで、社長さんと従業員さんが言い争いになったり、団体のメンバーの議論が過熱した時に、「えーと、ちょっと書いて整理させてくださいね」とか言いながら、クラウドを書いてみるとケンカモードが落ち着いてくることを実感しました。

お客様先で会議中に作ったクラウド

お客様先で、ケンカモードになっている社長と従業員さんに話しかけながらクラウドを書いていくと、「対立する行動(DとD’)」→「その行動を取りたい理由・ニーズ(BとC)」→「共通する目的(A)」へと、クラウドが進むにつれて皆さんの怒りが収まっていき、『「共通目的」を実現しようとしている同じ組織の人』として、一緒に問題解決に向かえるようになることを実感できました。

そして、クラウドの矢印の背後にある「仮定(なぜならば)」を、しっかり洗い出すことで、対立する行動を支持する双方の考え方をしっかり理解することができました。

お客様先で会議中に作ったクラウド(「仮定・なぜならば」の一部)

画像の例では、クラウドを書いたことで、10分前まで怒鳴り合いに近い状態だった方々が、一緒に意見を出し合い、現実的な解決策を見付けることができました。そして、その後実際に解決策を実行することで、BとCを両立する(経費を押さえつつ、受注を増やす)ことができました。

お客様先で会議中に作ったクラウド(解決策の一部)

短気な自分がどうにか人と働けるために

さて、そもそも私が「クラウド」に強く惹かれたのは、そもそも私が、怒りっぽく絶望しやすい・・・短気で社会性が低いタイプだったからでした。お客様に対してはクラウドを使えた一方で、依然として、組織内では価値観の違いで対立することもあり、そのたびに怒ったり嘆いたりしていました。

そんなある日、上司と私はいつもより激しい言い争いになってしまいました。上司も私も激高して声が大きくなり、職場のみんなが手を止めて見ているレベルです。話を続けようとしましたが、上司からは「これ以上話しても仕方ない、今日あなたとこの話を続けるつもりはない」と言われてしまいました。

帰宅後も、上司と分かり合えないことに絶望的な気分のまま過ごしていて、「もしも上司とクラウドが書けたらこんなことにはならないのにな。かといって、そもそも上司とクラウドを書くなんてこと実現できないし」と、行き詰まった気持ちでした。

その時にふと「相手とクラウドを書けなくても、相手の状況を想像してクラウドを書いてみる」ことはできるなと思い当たり、上司と私のクラウドを書いてみました。なんせ10年ぐらい前のことで詳細は忘れてしまいましたが、こんな感じです。

上司と私を想像したクラウド(再現)

クラウドを書いていくうちに「お客様の役に立ちたい私を妨害する邪魔者」みたいに見えていた上司には、上司なりの事情や考えがあることを想像できるようになり、絶望的だった気持ちも晴れてきました。

翌日、改めて上司が話をする時間を取ってくれました。上司は「昨日あのまま話をしても良いことにはならないので時間を置いた」と説明してくれました。そこで私も「昨日改めて自分なりに考えてみたのですが・・・」と、クラウドの構造を念頭に置いて会話をしたところ、いつものようにケンカになることもなく、穏やかに結論を出すことができました。

それまでに組織の中で何回も上司と対立していましたが、そんなケンカをしなくても、良い気分で希望が持てる結論まで行くこともできるんだ、というのは大きな気付きでした。

意思決定がはやくなる脳内クラウド

そんな風にして、クラウドに「ハマって」から数年が経ちました。ある程度「クラウドを書いて考える」ということは身近になり、良い結果が出る体験もしましたが、クラウドを書きたくなるような「対立」に直面した時に、紙とペンがあるとは限りません。

その頃、私は人材事業会社に転職&一人暮らしをしていて、客先訪問で帰宅がいつもより遅くなりました。吊革につかまって電車に揺られながら、帰宅後の自炊を考えると憂鬱でした。

「家の野菜を使って料理した方が良いよな、でも、家帰ってから料理したら寝る時間が足りなくなっちゃうよな」…同じようなことをしばらくグルグル考えているうちに、「そうだ、頭の中でクラウドを書いてみよう」と思い立ちました。

電車に乗って、頭の中で考えたクラウド(再現)

頭のなかに、こんなクラウドを思い浮かべると、解決策はすぐに思いつきました。私が両立したいのは、睡眠時間と栄養バランスだったのです。
「つまり、ちゃちゃっと栄養があるものを食べられたら良いんでしょ。じゃあ、○○屋に寄れば良いんだ!」

そこで私は電車の乗換駅で降りて、駅からすぐの定食屋さんに寄って、根菜や肉がバランス良く入った定食をいただき、いつも通りの睡眠時間を確保できました。

TOCのツールは、ちゃんと言葉を扱わないといけない。だから、ちゃんと紙に書いたり、PCを開いて書いて考えないといけない。・・・そんな肩肘張った気持ちがずっとありましたが、こうやって頭の中でクラウドの構造を思い浮かべるだけでも、落ち着いてより良い意思決定ができることがわかりました。

いま、私はジョナコースなどで、TOC思考プロセスを教える時もあります。研修の中では、基礎を押さえるために言葉の使い方などをしっかり練習していただいています。しかし、基本を押さえた後は、クラウドなどのTOCのツールを、頭の中で思い浮かべたり、工夫して単品遣いしたりすることも十分に有用だと思っています。

クラウドを山ほど書いていたら、転職がやってきた

中小企業支援機関の次に働いた人材事業会社では、就職準備中の研修生の方々とトレーニングをする機会がありました。そこでぜひ、クラウド等のTOCfEの考え方を役立てて欲しいと思い、研修生の方々にもたくさんのクラウドを作ってもらいました。

そして、そこでの取り組みを友人にお話したところ、2015年に日本TOC推進協議会の分科会で発表する機会をいただきました。そこから「TOCシンポジウム」と「TOCfEシンポジウム」でも発表させていただきました。発表をしたことからご縁がつながって、今の勤務先、ゴール・システム・コンサルティング(GSC)に転職することになりました。

結果、ずっと前から気になっていた「ジョナコース」を受講できることになりました。いよいよ、TOCfEのモトになっている「TOC思考プロセス」をちゃんと学ぶことができる!というのがとにかく嬉しかったです。

そして、UDEクラウドに出会う

TOC思考プロセスをがっつり学んだ8日間は忘れられないものになりましたが、その時のことは別の記事に書きました。

TOCfEにハマってから5年間を経てジョナコースに参加すると、いろいろな気付きや学びがありましたが、なかでも驚いたのが「クラウド」の書き方や位置付けでした。教育のために開発されたTOCfEと、大人がシステム(組織)の問題解決に使うTOC思考プロセスでは、クラウドの使い方に違いがありました。

TOCfEでは、クラウドは、自分自身の悩み(葛藤,内部対立)や、他の人との対立を解消するツールです。「対立する行動(DーD')」から書き始めます。しかし、5つのツリーを書いて「何を・何に・どうやって」の質問に答えることで、その組織の根本問題を見付け、解決していく「TOC思考プロセス」では、クラウドはUDE(Undesirable Effect,ウーディーと読む)から書き始めます。

※UDEについては、実は細かく表現のコツがあったりもしますが、まずは「思い込みや感覚的なものではなくて、現実に起きている悪いことを、事実実体として表現したもの」とざっくり説明しておきます。

UDEクラウドとは・・・を話し出すとキリがないので、ざっくりとまとめると、UDEクラウドは、TOCfEの対立から書くクラウドのように、対立解消のために書くというよりは、「何を・何に・どうやって変えるか?」の最初の問い「何を変えるか?」つまり、現在の問題構造をしっかり理解するために書くことから始まります。

3つのUDEクラウドをしっかり書き、さらにそこから、3つのUDEクラウドを「抽象化」して、ひとつの「コアクラウド」を作ることで、その組織で様々なUDEを生み出している「根本的な対立」を見付けることができます。

UDEクラウドの例(GSCジョナコーステキストより)

TOC思考プロセスを習う前の私は、TOCfEで山ほどクラウドを書いてきたので、正直、クラウドは得意な方だと思っていましたが、ジョナコースのなかでは、UDEを的確に言語化することや、クラウドのA-B-DやA-C-D’の良い塩梅をとらえたり、具体と抽象のほど良い表現にすることなどにとても苦労しました。

TOC思考プロセスに出てくる「抵抗の6階層」の1階層めは、「問題の存在に合意する」ことですが、合意を得るためにも、UDEを事実実体に即して言語化すること、そして、UDEを引き起こしている行動が何かを捉えて、クラウドで表現することが大切だということを新たに学びました。

どっちも好きで、どっちも便利

初めて「TOCfE」に出会ってから13年、ジョナコースで「TOC思考プロセス」をしっかり学んでからも、既に8年が過ぎたので、今ではそれなりにUDEクラウドも書けるようになりました(なっている、はず)。   

UDEクラウドは仕事において不可欠です。問題解決の最初の一歩として、事実実体に基づいてUDE(問題)を言葉にし、その背後にある問題構造をクラウドで理解することは、もともと構造化が苦手だった私にとってはとりわけ、無くてはならない使い方です。

ちなみに、UDEクラウドは、単体での対立解消のために書くとは限りません。簡単に解決策が見付かるようなことでは無くても、問題が発生する背景を理解し、解像度をあげてディスカッションするためにも、UDEクラウドを書くことは有用です。

一方で、対立から書くTOCfEのクラウドも、個人的には今でも頻繁に使っています。波立つ気持ちを落ち着けたい時、相手との話を整理したい時、ファシリテーションで話し合いの焦点を合わせたい時などに、シンプルな対立クラウドが私の役に立っています。

UDEクラウドも、対立クラウドも、どっちも好きで、どっちも良い。
ただし意識して使い分ける。そんな感じで、10年経った今でも、クラウドが好きだな、と思っています。

というわけで、ちょっとはやめですが、メリークリスマス!

終わりに

この記事は、TOCfEアドベントカレンダー2024に参加しています。TOCfEを巡る、たくさんの記事がクリスマスまで公開されていきますので、ぜひ他の記事もご覧ください!

この記事では「クラウド」について私なりの思い出を書きました。途中で出てくる「TOC思考プロセス」がどのようなものか知りたい人は、手前味噌ですが、こちらのYouTubeでご紹介しています。

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