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書けるときに日経日記 2021年8月4日

■全体感
日本の経常収支について考えさせられる。
海外直接投資と日本の空洞化、為替レートと金融政策について。今日はここら辺に絞って考えてみた。


■今日の数字
・1000億円→三菱ケミカルは1000億円を投じ自動車や塗料に使う樹脂原料工場を米国に建てる。

・4割増→日本企業の2021年1月から3月の対米投資の前年同期比伸び率。

・2兆4949億円→上記期間の対米投資額は2兆4949億円。東南アジアは1兆3000億円に倍増。中国は45%少ない1840億円。

・360円→戦後のドル円固定相場のレート。1ドル360円。ドルと金の兌換を停止した1971年のニクソンショックをきっかけに変動相場制に移る。

・75円32銭→ 2011年に付けたドル円の最高値。

・− 579億円→ JALの2021年4月から6月期の最終損益。米国の2社は黒字転換しているのに対して、国内の回復が遅い。


■所感
中年くらいまで生きてくると、昔の頭の中のイメージがなんとなくそのままスライドしてきているが、事実を改めて確認してみるとその頭のイメージが随分と異なるものになっていることがわかる。
経常収支の内訳については、まさにそんな感じで、日本が大幅な貿易黒字国であった事は遠い昔。
その他にも、自分の頭の中にある規制概念を事実確認によって修正していきたいと思う。


三菱ケミ、米で1000億円投資
日本企業「バイ・アメリカン」念頭 対米投資、1~3月4割増

コロナ後の社会を見据えて製造業の米国投資が加速している。個別の企業の投資判断としては、より強く成長が期待される経済基盤のある国に投資をする事は当然のこと。
なので、この米国投資によって相対的に日本が空洞化するという懸念もあるものの仕方ない流れなのだろう。

バイアメリカン法によって、米国政府は国産品を優遇する。そしてその国産品とみなすためには米国部材の使用比率を2029年までに75%へ段階的に高める。
日本で製造して、米国に輸出するのでは米国において国産品とみなすための米国部材としての認定が受けれない。一方で、現地生産をすればそこで製造されたプロダクトは米国部材となる。
米国連邦政府の調達額は、年間66兆円程度と言うことで無視できない規模と言えるだろう。

市場としての魅力、米国政府のバイアメリカン法、米中覇権争いの中における日本の位置づけ、を考えると米国直接投資は個別の企業行動としては中長期的にも適切なのだろうと思われる。

後の記事でも触れるが、日本の経常収支は対外直接投資の進行によって貿易収支から所得収支に稼ぎ頭が変わってきている。
今後は、その流れがさらに加速していくことになるだろう。
日本における産業の基盤を戦略的に考えていく必要がある。日本企業としては、魅力のある市場に対して積極的に投資をすると言う事は止められないので、日本国内における産業をどのように維持向上させていくのか。
日本における根本的な課題になりそうだ。

ニクソン・ショック50年(3)円安頼み「貧しい日本」生む
円の実力、48年前に逆戻り

昔は日本は貿易収支による経常黒字国であった。
それが、産業構造の変化によって中身が変わってきている。

具体的には海外拠点への進出により、輸出ではなく海外生産が増えた結果、貿易収支が黒字基調から赤字基調になっている。
一方で、海外拠点への投資が増えたため、海外拠点からの配当等による所得収支がプラスになる。

以下の令和2年上半期の国際収支状況を見ても、所得収支のプラスが明らかであり、貿易収支やサービス収支はマイナス基調となっている。

コロナ後も、日本に対して相対的な経済成長が見込める米国など市場的な観点と、米国政府のバイアメリカン条項等現地生産優遇策によって、米国等への直接投資が増え海外生産が加速する。

そもそも、国内企業の海外直接投資が進行した原因はリーマンショック後も日本の金融緩和が米国などに対して相対的に進まなかったことにより、円高を長期間許容したことにある。リーマンショック後にマネタリーベースを拡大させていった米国に対して、日本は金融政策の手を打たなかった。
この結果、リーマンショック前後から急激な円高が進み日銀の異次元緩和の発動までドル円が100円を下回る円高の期間が続いた。

この部分は、2013年以降日銀の異次元緩和によって解消されつつあり円安の方向に変わってはいるが。以下上記リンク中の図。

リーマンショック後の期間は、日米のマネタリーベースの差がそのまま為替レートに反映されていると言っても過言ではないくらいだ。

リーマンショック前後の円高の期間に東日本大震災による原発事故が重なり、原発による電源が確保できなくなったため代替の火力発電による電源を確保するため原油等の輸入の量が激増した。
また、そのような状況の中で円高が響き貿易収支は大幅に悪化した。
当たり前ではあるが、円高で輸出競争力が急激に落ちた製造業は、海外生産を加速させることによって円高の影響を緩和しようとする。そういったこともあり、リーマンショック後の海外進出は強化され貿易収支の減少とともに所得収支がプラスになる傾向となっている。

このまま、製造業の拠点が海外に移り所得収支による経常黒字国として日本が推移することが想定される。そう考えると、ドル円レートについては円安基調よりも円高基調に振れて行った方が日本にとっては都合が良いことになる。

記事によると、今後相対的にデジタル化が遅れている日本がIT機器などを輸入する量が増加することが見込まれるため、再生可能エネルギーによる電源構成の増加や自動車の必要量の減少によっても、輸入が輸出よりも多くなる貿易収支赤字の構造になっていきそうだ。

マネタリーベースと為替レートの関係は、ソースチャートと言ってその関連性が指摘されている。
インフレ気味に触れる米国の金融緩和の動向と、需要が弱くインフレには程遠い日本における日銀の金融緩和の状況を比較し為替がどのように推移していくかと言うことを考えていく必要がある。

物価だけ(インフレターゲット)を考えると、中長期的に米国がマネタリーベースを抑えて日銀はマネタリーベースをさらに増加させることが想定されるが、日本の財政問題を考えるとそうも言っていられない。
日本が米国に対して相対的にマネタリーベースを増やすのであれば円安方向に触れることが想定されるし、日銀が金融引き締めに入ればマネタリーベースが相対的に落ち円高の方向に向かっていく可能性がある。
ただ、需要が弱く物価の上昇が進んでいない日本において金融引き締めを行う事は自殺行為であり、とは言え金融緩和をするための手段もあまり残されていない。日銀はあまり身動きの取れない状況に陥っていると言える。

日銀が積極的にアクションを取れない今の状況では、米国の金融政策の状況によって相対的な日本の位置づけが決まりそれによって為替レートが変動していくと見るのが妥当なのかもしれない。


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